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どこまでも俺様主義 Episode.1:砂漠の国の紛争  作者: ホエール
第1章「ダートマス――Killing each other of south seas」
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3.

  3.

 超大型戦略級輸送機の編隊。『カーゴハイマスターズ』の編隊。

灰色の機体。

熱帯で多湿な環境ゆえか、ヴェイパーをまとって空を飛ぶそれ。

真っ暗闇の輸送機には、無数のセルで区切られた非常に狭い空間がいくつも広がっていた。

『――減圧開始』

その音声とともに、空気の循環設備が唸り声をあげ、さらにはその数秒後には、後部観音開きのハッチのロックが外れていく音が響き渡る――。

輸送機のハッチが開き、機内の安全灯に赤いランプが点灯したと思えば、次の瞬間青く光りだすと次々と固定されていたそれが投下された。超大型戦略輸送機の中で狭く縮こまっていたそれらが一気に空中に飛び出す。

まるで、多連装ロケットの様に勢いよくいくつものそれがセルから解放され、空中へと投げ出されていく。

あるものは、この状況を「まるで発情した猫だ」と、下品な表現で勢いを現したものだ。

銀色と茶色の塗装。約2~5メートルが基本のセグメンタタ。

太陽の光を受けて輝く、若干オレンジ色に光る装甲で覆われた人型、まるで翼か何かに見える飛翔装甲、その周囲に浮遊している大量の砲門を備えた武装。

ちょうど人の顔にあたる部分、頭部にはT字の緑色のスリットがついており、流線型の形をしている。人の手にあたる場所には親指に当たる機械の指は常に内側、つまり手のひらの上に存在し、また、全部で5本の指ではなく、4本の指となっている。

足は、まるで神話の怪物を見るように、そして恐竜のように爪を持った長い指が前に3本、後に2本とそれぞれついており、それが二足歩行というバランスの悪い歩行法を可能にしている。

だが、今、その足は使われていない。

なぜならば空中に足場なぞ存在しないからだ。

投下されたセグメンタタの数は、超大型戦略輸送機4機で30人ほどの数。すなわち増強1個小隊。

輸送機1機10人程度が収容され、残った1機は鎧には搭載できない武器・弾薬等を投下する。

スカイダイビングをするように鋼鉄の鎧、機械の人型が落下時の風にあおられる。だが、服のような布製品をつけているわけではないそれはあおられていることがまるでわからない。手や足の動きでかろうじてわかる程度だ。

そして、次の瞬間、大きなグライダーのような翼が開いた。そして、巨大なミサイルにも見えるロケットモーターや背中に取り付けられた翼とロケットエンジン状のものが火を噴いた。滑空するように大空を舞い上がるセグメンタタ1個小隊は、徐々に高度を下げながら大地へと近づいていく――――。

「ひゃっほぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」

空を翔る。大空をまるで鳥のように突き進む。

その気持ちよさからかもしれない。自然と森野・J・翔は大声で叫んでいた。

「SA8、うるさいッ!」  「そんなことを言うなよ、ひより!」

「名前で呼ばないでよ! コールサインで呼びなさい!」  

「めんどくさいし、盗聴されてねーから別によくね?」

翔がそう語る相手、彼女は、環 日和

「無線で叫ぶとがんがんこっちに響くの! それに傍受されてこの美少女の素性がばれたらどうするの!?」

次の瞬間、翔を含めた男連中が盛大に噴出した。

「じ、自分で、び、美少女って……クククッ……」

「おい、てめーら、後で無理にでも特級ランチおごらせるからな、覚悟しろよ?」

みんな若い声だった。そこに1人の女の子の声が響く。

「はいはい、遊びはおしまいですよー。皆さん。諸注意と作戦を忘れないように小隊長である私からの指示を出しますねー?」

小隊長、ジェニファーがやわらかい物腰の声で語りかけてきた。

「今から出す指示はかなり簡単です」

その次の瞬間、彼女の出す声の調子が変わった。文字通り、兵隊を率いるものの威厳と冷徹さを感じる声へと変化した。


「敵を撃滅せよ」

それが彼女の言ったかなり簡単な指示。

その指示が下った瞬間先ほどまでの笑い声は消える。そして、翔は眼下に見える1体の敵へと狙いを定め、撃ち抜いた。

FCSが機能し、微妙なずれを補正していく。1発。されども1発。重装大型用対物ライフルの17mm鉄鋼焼夷弾をぶっ放して――それは敵のセグメンタタを撃ちぬいた。


「――えっ?」

目の前で、悪魔たる敵のセグメンタタが膝をつくのを2人の少女と2人の軍人は見る。

思わず口から出た言葉は困惑。

天空より噴進の煙を吹き出しながら舞い降りるは、天使か悪魔か。

いずれにせよ、空より舞い降りるのは彼女らにとって『空の神兵』。

この青空も、敵の空。 この山河も、敵の陣。この山河も、敵の陣。

しかし、そこに降り立つ彼女たちの救い主は――――

「俺は俺様だァァア――――ッ!! 俺様の道をあけろぉぉおおおおおおおおおおおおおおおお、雑魚どもがァァア――――ッ!!」

叫ぶ人物。森野・J・翔。コールサイン『SA-8(シルバー・アナログ・エイト)』。

彼は自らのセグメンタタの指先の小さなキーボードを操る。基本、セグメンタタは軍用強化服だ。だから、全身の関節の動きや筋肉の動きを正確にトレースする。陸戦無双兵器などといわれ、現代の歩兵兵器の頂点となっているが、本来は2~5メートルほどの機械の鎧に過ぎない。

とはいっても、いくら相手の動きをトレースする鎧であっても複雑化した戦場に人間の動きを真似するだけでは対応できない。故にセグメンタタの機械の指先の操作はAI任せ、人間の指先は小さなキーボードと引き金とスイッチのついた横に伸びる操縦桿がついている。

彼は、キーボードを操る。

『――「出力増幅推進機構・切り離し(ブースター・セパレート)」』

戦況AIがそう表示した次の瞬間、彼の体に多大なGが降り注ぐ。小規模の爆破によって接続されていたブースターウィングの主力ロケットモーターが切り離された。

いきなりかかってきたGに叫んでいたバカは一瞬空気を詰まらせ――る。

G換算で加速度は15Gを超えている。それは――通常、耐え切れない! 人間が瞬間的に耐えられるGは訓練された人物で最大で40G、基本的には15G位が一般人が耐えられる境目であるとされている。

そして、純人による戦闘機パイロットは、最大持続9Gまで耐えられるとされている。だが、そのセグメンタタを操る少年が体感しているGはその上に位置する15Gの連続。

けれども、彼は歯を食いしばりこそするが、特に何も感じていないようだった。

まぁ、そういう『存在』だから、当たり前ではあるのだが。

ブースターが切り離され、敵のセグメンタタ――中国製第2世代、63式装歩鎧――へと……。


敵兵にとっては、一瞬のわずかな時間。

そう、次の瞬間、空より舞い降りてきた、いや、舞い降りるという表現は大いに間違っている。

あれは、まるで急降下爆撃とでも形容するべきだ。太陽光に照らされながら、それはやってきた。引き金を引きながらそれはやってきた。

――発砲。轟音と共に敵兵セグメンタタは大地へと倒れこむ。

倒れた敵セグメンタタは震えながら、もう一度立ち上がろうとしていた。どうやら鉄鋼焼夷弾1発では、致命打には至らなかったらしい。

そこに――急降下爆撃のように現れたセグメンタタが立ち上がる敵兵セグメンタタの背後から、一気に激突っ!

衝撃音を周囲にばら撒かせながら――激突し、それでもなお、空から来た別セグメンタタはいまだ大地に足をつけず、ブースターから出てくる轟炎の出力をどんどん上げて敵セグメンタタを宙より引きずっていく。

セグメンタタはもともとは対戦車兵器運用プラットフォームの『パワードスーツ(強化服)』として開発がはじまった経緯がある。むろんそれ以外にも理屈はあるが、基本、人が身に着ける鎧なのだ。だから人型なのだ。それゆえに敵セグメンタタを引きづる行為は中の人間を引きずるに等しい、いかに装甲版で守られて言おうと――――。

翔の右腕は何かを掴むように振るわれる。ブースターウィングの最終補助ロケットモーターが稼働、噴煙と熱量が周囲を支配する中、翔の右腕の動きを正確にトレースした機械の右大腕が敵のセンサー系統の詰まった頭よりした、つまり首根っこを掴んだ。

そして、そのまま、地面に何度となく叩き付ける。噴進の力で、そのまま、時速60キロを超えた速度で大地と天空ぎりぎりのエリアをセンチメートル単位で突き進む翔とそのセグメンタタ。

叩きつけられたセグメンタタの内部は今どうなっているのか――?

そして、そのまま走る先にはむき出しの鉄筋コンクリートの残骸とその残骸より飛び出る鋭利な鉄筋が――――


瞬間――轟音が鳴り響き、

                衝撃が、周囲を震わせ

                               ――鉄筋が鉄の塊を切り裂いた。

――――ぐしゃぐしゃに。


貫かれた鉄骨。どんなに仲の人間ががんばったとしても――即死は免れぬ。

およそ10メートル以上にわたって大地についた傷跡。引きずった後に、翔の操る鎧――セグメンタタ――は威風堂々と立ち上がる。解除されるのは、ブースターウィングと本来は減速用に使われたはずのパラシュートボックス。

パージされたそれらの兵装とは別にその腕に新たに装備されていくのは『鎧用・突撃銃マルチ・アサルトライフル』。

17mm65口径の鉄鋼焼夷弾をぶっ放した『後付電子銃身』がこのマルチ・アサルトライフルには組み込まれていたが、すでにそれは取り外されている。

電気信号と共に、電熱方式で銃弾をぶっ放す機構を保持した、『電子銃身』は1本の金属棒であり、この金属棒そのものが弾倉となって、殆どの場合5発の銃弾を内蔵している。

だが、それはすでに不要とばかりに捨てられていた。まぁ、バレルがやたら長くなってしまうのだから取り扱いが非常にめんどくさくなってしまう事もあるかもしれない。

そもそも今回の場合、内蔵されていた弾は2発だけであり、翔にはもう1発の17mmは使いどころがないと判断していた。

そして、彼はGN-11B砲兵型の能力たる兵装を動かし始める。

それは右肩の軽榴弾砲。

腰元の反動軽減用三脚が展開され、大地へとその3本足が突き刺さる。

翔のマニュピレート・セグメンタタ、GN-11B砲兵型の曲射用F.C.S.がオンライン表示に切り替わり、そのほか、ネットワークから流れてくる目視外標的に対するロックオン表示が出てくる。

翔のやることは決まっている。微妙な角度調整はF.C.S.(射撃管制システム)に任せ、まずはその方向に砲門を向けることと、そして引き金を引くことだ。

『――弾種、HE-AP! 目標物、敵鹵獲装甲車』


――――学院傭兵軍第3軍団に与えられた任務は、安全地帯の確保とその安全地帯に避難民を移動させること。

故に、その砲撃は安全地帯を得るための掃射の攻撃。

「うっし、規定10発ぶっ放した! 移動する!」

彼の言葉は――砲兵のいつも通りの動きだ。

撃ったら、場所を移動するのが、現代の砲兵。そう――彼が、翔が操るセグメンタタは、砲兵型だ。

正確には『分隊砲兵』という、セグメンタタ小隊において、通常の歩兵小隊のSAW(分隊支援火器)の役割であり、同時に軽迫撃砲の運用者のような存在だ。

通常の歩兵小隊における迫分隊(軽迫撃砲運用分隊)をそのままSAWとして利用するためにその時々によって拍分隊を結成する方式でもって軽迫撃砲運用者たちを分散するのはある種、間違っているようにも思える。

しかし、セグメンタタ砲兵は、一人だ。一人で砲火力を運用するのだ。である以上は、問題ないとされた。

いや、それ以上に何よりもセグメンタタという存在の戦いは――――機動戦であり、古来の運動戦そのものだ。

空を飛びかう、無数の無人兵器群ドローンズ

『――敵は、自立殺戮型ドローンを投入している模様。テロリスト一直線! テロリストは死すべしってね』

「条約禁止兵器……か」  「何が……?」

翔が降り立ったのは、2人の避難民の少女とその誘導をしていた2人の兵士。

その目の前。

SA-8というコールサインで活動する彼はともに行動する仲間が一人。

「しょ……SA-8、そいつらも連れて行くぞ」  「『避難民おきゃくさま』だからな」

呆然とする2人の少女と警戒する2人の兵士。そんな4人組の前で翔は――

「ども、傭兵です☆」

挨拶をした。


学院傭兵軍――そういう組織が存在する。

『世界的企業連合』という領土無き国家とまで言われる超巨大多国籍企業複合体。

その世界的企業連合が作った『企業軍隊』。

それが『利潤兵隊』と『学院傭兵軍』だ。

ただし、利潤兵隊は、企業のとはいえ、純粋な正規軍隊としての性質が強いのに対し、学院傭兵軍は、教育機関であり、傭兵軍隊という性質を持った集団。

すなわち――――

「上は、取引したのか、お前らみたいな、浅ましい劣化調整少年兵の傭兵どもに――!」  「本国やら、本隊やらの救援が到着するまでの時間稼ぎっすよ。数時間以内にまたいなくなります」

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