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剣と龍と神  作者: カナメ
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六話

ヒロインがカッコイイ~そこに痺れる憧れる~

ファラって着痩せするタイプか。



服の上からでは分からないことも裸であれば一目瞭然。



まるでこの光景だけを見ればどこぞの女神像だな……



って違うだろオレ!?



見惚れていた時間は数秒の事。

すぐさまどこかに身を隠せる所はと視界をさまよわせるが男一人が隠れられる丁度いい場所がない!

やべぇ!

この際、頭隠して尻隠さずという無様な格好になってもいいから少しでも己の姿を隠さなくては!!

この時のオレはよほど動転していたのか、その場から立ち去るという選択肢が全く頭に思い浮かばなかった。

そして勝手に一人テンパっている間にも気配に敏感なファラが



「ん?」



こちらを見てしまった。

時よ止まれ!



うむ、止まった。



オレだけの時間限定だが。

くそ、やはりこの世に神はいない!

まさかこんな所で死ぬなんて!?

覚悟を決めた心情とうってかわって未だ体の方は硬直したままだ。



どうすればいいのか全く分からない事態に下手に動けない。

すぐに謝るなり言い訳するなりしたかったが舌が乾いて筋肉も硬直。

ただアホみたいな顔をファラにさらしていた。



「何でそんな変な顔してんだカイン?」



「へうえ!?」



「?……変な声出してどうした?珍しく早起きしたかと思えば可笑しな行動ばかり……昨日頭を強打しすぎたか?」



「い、いやいやそんな事は…」



「ならいいが」



声が裏返っているオレを怪訝そうに眺めつつ、ファラは川から出てその全身をあらわにする。自身の裸身などさほどの価値もないと言わんばかりに、その裸を少しも隠そうとしない事に何故かオレの方が恥ずかしくなってきた。



当のファラは気にした風もなく、水浴びする前に洗っておいた服(服の方は属性剣技によって乾かす。慣れてない間は服を燃やしてしまうのが初心者。誰でも通る行程。無論、ファラはそんなミスをする事なく瞬時に乾かした。すでに感覚で覚えた証拠だ)を着ていく。

オレの存在など気にする素振りはその間一度もなく、だ。



「どうした?カインも水浴びと洗濯に来たんだろ?さっさと終わらせて小屋に戻ってこい。それまでには朝飯を用意しておく」



「り、了解」



「食ったらすぐに出発だぞ」



そう言い残して去っていくファラ。

その後ろ姿から恥ずかしくてもいつも通り振るまった……なんて様子は微塵もなかった。

いや戦場に身を置く兵隊稼業なら、一々男だ女だなんて気にしない奴等は多いが何かあそこまで堂々とされると……

生きてる事を喜ぶべきか、男として全く意識されてないのを悲しむべきか非常に微妙な心理だ。




悩みながらも水浴びと洗濯をしたせいか、いつも以上に時間がかかってしまい、小屋に戻った瞬間にファラに一発ぶん殴られたがそんな事は問題にもならない。

ぶん殴られて妙に落ち着いた脳みそがファラの裸を思い出す方がよっぽどの重大問題だったのだから。

いつもより遅くなった朝食のあと、ファラが口を開く。



「さて今日は歩きながら常に不意討ちされない様に緊張感をもって歩け」



どうやらそれが本日の課題らしい……が。



「不意討ち?誰の?」



「アタシのだ」



こいつとんでもない事口走ってるぞ!?



「いやいやいや、ファラの不意討ちなんかくらったら死ぬわ」



「それ位の危機感をもった方がカインには丁度いいだろ」



死ぬって言葉は否定しないのかよ!?



「カインの危機感のなさは異常だ。普通兵隊稼業を数年経験していれば殺気にも敏感になるはずだ。……それが身についてないって事はよほどの鈍感か、はたまた優秀な相棒のおかげで生き延びてきたかのどっちかだ」



うっ……否定できん。確かにフレイにはいつも助けてもらったなぁ。あの剣精の最初の奇襲を生き延びれたのもあいつのおかげだったわけだし。



「心配するな、多少手加減してやる」



「多少って……多かれ少なかれって意味じゃあ?」



「アタシのさじ加減一つだ」



何も変わらんわ!



「何だ?不満そうだな?」



「いや、別に……」



これ以上何か言っても逆効果になりそうだし従っておこう。引き際を見誤ると大ケガしそうだし。



「そうか」



予備動作なくファラがオレの側頭部めがけて蹴りを繰り出す。

強い衝撃。

防いだ両腕がビリビリと痺れる。

咄嗟だったので完璧にはその勢いを相殺できなかった為だな。

だが仕掛けたファラが感心したように「ほぅ」と面白ろそうに微笑む。

いや、微笑むタイミングが完全に戦闘狂のそれだぞファラ。



「今のを完全じゃないとはいえよく防げたな。思っていた以上よりは敏感って事かな?」



「ファラの性格も少しは分かってきたからな。小屋から出るまでに、まずは一発くるなとは予想出来たよ」



「成る程。カインに読まれるとはアタシもまだまだだな」



……しかしすげぇ威力の蹴りだった。まだ両腕の痺れがとれない。本当に多少の手加減だな。

直撃してたら今日一度目の失神だったぞ。



「ファラ」



「何だ?女心は一言では語れんぞ」



「ちげぇし!むしろ一言で語れたらすげぇよ」



「それはつまりアタシの女心に喧嘩を売っているという事で間違いないか」



「何でだよ!間違いまくりだよ!むしろオレの方が理不尽に喧嘩売られてるし!?」



「雑な突っ込みだな」



「ダメ出しかよ!むしろファラの方が雑なボケだよ!」



「師に対してまたも暴言を……許すまじ所業」



「いや落ち着け。むしろ落ち着いて下さい。お願いします」



「ふむ。で、何だ?」



めんどくせぇ絡み方すんなよ。

本題にいくまでにどんだけ雑談したいんだ。

……ともかく聞きたい事を聞いておこう。



「あれから…オレは強くなってるか?」



「全然」



即答かよ!?

ムカつくを通り越して逆に清々しいくらいだな。



「当初の予定では目的地まで二ヶ月の距離なわけだが…丁度今日で一ヶ月。半分だな。目的地には順調な旅だが、カインの修行内容はそれに反して遅れている。……隠しても仕方ないから言ってしまうが内容は予定していた内の七割ほどしか達成できてない」



「七割…」



寝る間を惜しんでもまだ足りないのか…どうすれば……



「どうすればもっと強くなれる?このままじゃ駄目なんだろ?」



「短期間では強くなれんよ。強さとは長く時間をかけてこそ得られるもの。仮にアタシが計画した修行全部をやりとげてもカインの地力の足しになるくらいだし。…最初に言っただろ、急激に人は強くなれない。なれたとしてもそれ相応の対価がいるよ」



「ならその対価を払えば」



「払うモノがアンタにはないよカイン……それにそれは自分自身の強さじゃない。道具の強さだ。そこら辺を勘違いするな」



ファラの言葉一つ一つがオレの心に突き刺さる。

こんなにも……こんなにも強さを求めているのに…………この手には有り余るって事なのか!?

ただの一般兵からしたら剣使である事こそがすでに強者なのだろう。

その点からしたらオレは恵まれている。

だが、オレは更にもっと上を目指している。力を欲している。何者にも負けない強大で強力な力を!



それこそ、ファラのようなたった一人でも城を落とせるA級剣使のような力を……


主人公も成長すると共に作者も成長したいです。

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