三十三話
ここまで読み続けてくれた方々に感謝してます。まだ終わらんけどね。当分お付き合い下さい。
瞬時に四人の男を叩きのめしたオッサンに、周囲からは歓声が響く!
何者だ?
あんなにあっさり片付けるなんて、ただの正義感溢れるオッサンじゃないのか?
「君たち大丈夫かね?」
オッサンは人の良さそうな笑顔で、オレたちの無事を確認している。
「えぇ、おかげさまで……その、ありがとうございます」
やや歯切れが悪いのは勘弁してほしい……だが助けてもらったのだから礼は言わねば。
「それはよかった。この街は治安が悪いから、用事を終えたらすぐに離れた方がいいぞ、では失礼する」
忠告を置き土産に、オッサンは颯爽と去っていく。
うーん…やっぱりあんま強く見えないんだが……
「ファラ、ルシス。二人にはあのオッサンに気になる点はあったか?」
オレでは気付けない事も、違う視点からならばあるかも。
ファラの方は特に何もないのか、肩をすくめるだけ。
だがルシスの方は何か気になってる事があるみたいだ。
「あの人間…魔素を一切使用してませんでした」
指摘されてそういえばと思い返す。
強化剣技を使えばあの強さも納得できるが、手には普通の槍だけだった。
つまりは素であの強さ。
人間ばなれした肉体能力に何か引っかかる。
「カイン、考えるのは後だ、街の警備兵がきたぞ」
治安が悪いからと言って別に警備兵がサボっているわけではない。
それが追いつかないほど、事件が起きているだけ。
そしてファラが視線で促す先には、仕事に追われる五人の警備兵らしき人影。
「ここから立ち去るが吉だ。着いたばかりで面倒事は避けたい」
同意するようにファラが頷く。
ならさっさと行動に移ろう。
「ルシス?」
何か気になる事でもあるのか、ルシスはその場に立ち止まっている。
「あの人間達はファラの知り合いじゃないの?あのまま放っておいて大丈夫?」
オレとファラは顔を見合わせた。
オレは視線で『どうすんだ?』とファラにアイコンタクト。
やっぱり危惧したとおり、ルシスはファラの悪ノリを真にうけている。
「大丈夫、あとは警備兵が面倒みるから気にしないでいい」
ファラめ、面倒くさくなって丸投げしやがったな。
「そうなのか?ならいいが」
……あっさりファラの言い分を信じるルシスに、オレは聞きたい。
疑うって言葉は知ってる?
素直なのは長所だが、素直すぎるのは短所だ。
騙されやすい性格になる。
あとでその事に関して話し合わなければ!
未だ喧騒が止まない場を後にし、オレたちは衆人に紛れ込み姿を消す。
やれやれ、到着早々これだと先が思いやられる。
場所は移り酒場に。
あの騒ぎの後は宿屋で部屋をとり、貴重品以外の荷物を置いて、近場の酒場に入店した。
資金稼ぎの会議が名目の飲みだ。
店内は中々に広く、カウンターを合わせれば五十人は飲み食いできそうな店だ。
店内はすでに、日が沈んでいるとあって七割方は席が埋まっている。
オレたち三人は適当に空いていたテーブル席に座る。
座るのをすぐ確認してから動いたのか、あまり間を置かずに女店員が「ご注文はお決まりですか?」と聞いてきた。
とりあえず適当な食い物を数品注文。
飲み物は、オレはハーブ茶を。
ファラとルシスがそれぞれ違う酒を注文した。
注文を確認後、女店員が笑顔で「少々お待ちくださいね」と去っていく。
うむ、明るいイイ笑顔だ。接客態度もいいし、何より可愛い!可愛いよ!!
……大事な事なので二回言った。
「カイン、鼻の下がのびてる」
「マスターは見境がありませんね。やはり男はみんなケダモノです」
美女二人の冷たい視線が刺さりゾクゾクした。
やべっ~…やっぱりクセになりそう。
この状況に少しばかり惜しむ気持ちもあるが…仕方ないな。本題に移そう。
「悪いな、悲しい男の性だ。それで明日からこの街で稼ぐんだよな、ファラ?」
「あぁ、この街自慢の舞台、コロシアムでな。ちなみにカインは実戦担当、アタシ達は賭け担当で稼ぐ」
「オレだけ?ファラやルシスも出ればもっと稼げるだろ?」
なんせ二人はオレより強いし。
「アタシとルシスは、コロシアムの運営側に顔と名前が知られていて出場できないんだよ。高位剣使が出ると賭けにならないってな」
「それもありますが、ワタシ達はここで荒稼ぎした経緯もあって特別な大会でもない限り、出場を禁止されているんです」
どんだけ稼いだんだ、出場が禁止されるって!?
…ただ運営側の考えも理解できる。
勝ちが決まっている勝負にオッズも何もあったもんじゃないわな。
…ん?有名になりすぎて?
「ファラとルシスってそんなに巷で有名なのか?」
「カインは傭兵ギルドに属してなかったな…アタシとルシスは共にA級剣使として名前がそこそこ売れていてな、一応高位剣使だから二つ名がついてる。それもコロシアムに出場できない要因だな」
「旅路で、色々とファラが人間に詳しいのは色んな依頼を受けたからって知ってるがルシスは?確か討伐専門だって聞いたような…」
「そう剣精狩りで有名だ。《銀髪姫》って言えばすぐに分かる。」
「ちなみにファラは《炎舞姫》です、マスター」
「ちょっとその二つ名は恥ずかしいけどな」
二人共、何気に二つ名に姫って付いてるんだな。
まぁ姫様扱いできる容姿だし事実、龍神の娘だから姫様でもあるわけだ。
ギルドにいる二つ名を考えた奴は、センスがあるようだな。
「カインも登録だけしといたら、傭兵ギルドに」
「…そうだな。どこかの国に仕官する気もないし、そっちの方が自由に動き回れそうだ」
「あ、でも一稼ぎしてからな。名前が売れたら出場できない!」
「そんなにすぐ有名にならんだろ?」
実績など何一つないのだから。
むしろオレならこの先無名の傭兵Aで終わりそうだ。
カインは下戸設定。ゲコゲコッ。




