二十八話
ちょっと短いよん。
「ファラ、ルシス!」
駆け寄るオレに…
『ようやく…来たか……忘れ…去られた……かと…思った……ぞ』
軽口は健在のファラだが、先程に比べれば弱々しい生命力だ。
フレイの言葉通り、いずれ限界を迎えてしまう。
「時間はなさそうだ、手短に告げるぞ」
……オレはこの時、わずかではあるが躊躇していた。
人間に約束を反故にされた剣龍。
なのに同じ人間であるオレから契約を持ちかける……逆の立場を考えれば、寝言は寝て言え、だ。
だが、このままだとホトに所有される。ならまだオレの方がマシなはず。
自身を鼓舞して剣龍に宣告する。
「オレと契約してくれ、二人共。馬鹿をいうなって言いたいのは重々承知している。だがこのままだと二人はホトの所有権の元に…その存在そのものを改変させられるはずだ」
『だろう……な。…ガルドゥークの…………ように…記憶や……自我すら……なくす』
「だから頼む!オレだけじゃなく、自分達の為にも、契約してくれ!」
『……何故…そこまで……我々の…身を……案じる?』
今まで黙っていたルシスがオレに問う。
決まっている。
答えは一つだ。
「ファラは師匠だからな、師が危ない時は弟子が助ける。そしてルシスはそのファラと姉妹みたいなもんだろ?なら理由はそれで充分だ」
双頭の龍の視線がオレを突き刺す。
あれ?何かしくったかオレ?
『ファラ…こいつ……バカだな……』
『知ってる……馬鹿な…………弟子だ』
あれ?
盛大に呆れられてる?
……深くは考えないでおこう、うん。
「ファラ、命令を。」
ニヤリとファラが残虐に笑う。
『契約だ……カイン…剣神となり……あの屑を…………滅殺しろ』
「承知」
だからオレも冷徹な笑みを返した。
契約は成立だ。
「…さて、そろそろボクの出番は終わりみたいだ」
カインのいる方向から、魔素がどんどん膨れ上がっている。間違いなく契約は成された。
「どうやらその様だ。もう少し、八師と戦っていたかったが…」
ホトは実に残念な表情だがフレイの知った事ではない。
「このまま続けていてもアンタの勝ちですよ」
「確かにな」
フレイの言葉をホトは否定しない。
事実、ホトの方が何倍も強い。
「だが、全力を出せば…三回くらいはワタクシを殺せるだろ?」
「アンタが唯一剣技を使わないって条件なら確実に」
フレイも否定はしない。
「…また再会したいな、お前とは」
ホトという人物を知る者がいれば耳を疑っただろう。
何せホトがここまで人間に…………死体以外に興味をもつなど珍しいからだ。
フレイを気に入ったのは強いのも事実だが、その精神構造にも興味をそそられたのだろう。
「ボクはごめんだ。死体を再利用されるなんて、これから用意する墓に対して失礼だ」
フレイはにべもなく断る。
「ふむ、ならいずれ百年後にでもその墓を探しだし、暴くとしよう」
さすがに今のホトの発言にフレイが初めて表情をしかめた。
よほど不本意らしいのが伝わる。
「できればそれまでにカインに殺されてくれ」
「さて、百年であの若造がワタクシを殺し尽くせるか…賭けるか?」
「願うだけだ。殺されてろ」
フレイが閃光を伴い…………姿を消していた。
「まぁ、墓に入る前に、ワタクシが探し出すがな」
もはや立ち去ったフレイにホトは宣告する。
逃がしはしないと。
フレイくん、変な人に好かれたの巻きでした。




