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路上の英雄

作者: ぺたにゃー
掲載日:2026/05/04

某事件に触発されて書きました。

この作品はフィクションです。

実際にある人や団体に関して一切批判していません。

横浜県野毛山市、橘和夫は母の橘梢と二人で飲食店を営んでいた。

和夫の父親が始めた洋食屋は地元民に愛される店であった。

店の経営は順調であったが、和夫と梢は悩みを抱えていた。


「うぇーい。今日もとことん騒ぐぞ。」

夜中、高校生たちが店のある商店街で騒ぎ始める。

近所にある帝片高校の生徒達だ。

素行が悪いことで有名な高校であるが、最近は歯止めが効かなくなっている。


「またあいつ等か。」

「嫌なことね。どうにかならないのかしら。」

「横浜県警には何度言っても対応してくれない。しかも、あいつ等は帝片高校OBの坂田さんが不良共を注意したら、恐喝で逮捕したんだぞ。」

和夫は坂田のことを不憫に思う。

坂田は商店街で肉屋を営む男で帝片高校OBであった。

同じ高校の縁で注意したら、横浜県警はあろうことか坂田を逮捕したのだ。

学生たちの親の中に警察や政治家でもいるのかという噂もでたが、そんなことは無く、横浜県警へ商店街で抗議文を出したが返事は無かった。


「母さん、大丈夫か。」

ある日、高校生たちが店の前で騒いでいたので梢が注意した所、高校生たちに梢が突き飛ばされた。

「邪魔すんなよ。ここは公道だ。なら、俺達が何をしても良いだろ。」

「なんだと。」

そこから和夫と高校生たちはもみ合いから喧嘩となった。

多勢に無勢、和夫は高校生たちに囲まれリンチにあい、何故か暴行罪で捕まることとなった。


「和夫、酷い目にあったな。」

「坂田さんじゃないですか。お久しぶりです。」

和夫は刑務所の中で坂田に再会した。

「和夫、お前に会わせたい人がいる。」

坂田は和夫をとある服役囚へ面会させる。

「あんたが橘和夫さん。高校生たちにリンチされたそうじゃない。」

「確か、総合格闘家の蛭倉可児さん。」

「知っていてくれたんだ。嬉しいね。」

坂田が和夫に会わせたのは、蛭倉可児という総合格闘家であった。

蛭倉可児は総合格闘家として、格闘技のイベントで何度も優勝するほどの猛者であったが、暴行事件を起こし服役中であった。

「僕が暴行事件で捕まったのは事実なんだけど、詳しい経緯とか知らないよね。」

「まぁ。」

当時、総合格闘家が暴行事件を起こしたということで話題になったが、経緯に関して詳しい記事は出なかった。

「僕の地元の元町市には春華天という暴走族がいてね。そいつ等に苦しめられていたんだ。」

元町市は野毛山市の南にある。

「僕もね少しはグレていた時期があったけど、春華天はグレているなんてレベルではなくて外道だった。」

春華天の暴れっぷりは凄まじく、野毛山市にあった根岸一家というヤクザが見かねて制圧に行った。

暴力で勝ったのは春華天で、春華天は更に増長した。

だが、春華天による恐怖に怯える日々はある日を境にぱったりと消えた。


「橘さん、悪に屈しない力が欲しくないか。」

「そりゃあ、勿論欲しいよ。」

「そうだよね。その為に、何でもするかい。」

「俺に出来ることなら何でもするよ。」

「言ったね。」

「言ったよ。」

「なら、君に力をあげるよ。」

蛭倉はニィッと笑う。



「うぇーい。今日もとことん騒ぐぞ。」

帝片高校の学生たちが騒ぎ始める。

彼らが騒ぎを始めると商店街から人気が無くなる。

学生たち以外が静まりかえった商店街の中を一人の男が歩いて来る。

その男は和夫であった。

「何だ、おっさん。俺達に何か用か。」

「公道は皆の共有スペースだ。無闇に騒ぐのは止めなさい。」

「五月蠅いんだよ。」

学生の一人が拳を振り上げる。

「効かん。これが本物の拳だ。」

和夫は学生の一撃を額で受けると、異常に膨張した右腕をハンマーの様に学生へ叩きつける。

学生は呻き声一つ立てず昏倒した。

「何しやがる。皆でやるぞ。」

学生たちは和夫を取り囲む。

「一人も逃がさんぞ。」

和夫はその場にいた学生たち全てを叩きのめした。


「署長、野毛山商店街で乱闘騒ぎです。」

「またか。それで誰と誰だ。」

横浜県警に通報が入り、規模の大きさから署長にまで連絡がいく。

「帝片高校の学生たちと商店街の関係者とのことです。」

「なにぃ。ということは大人が子供に暴力を振るったということか。」

「まぁ、見方によってはそうなります。」

報告した警察官は内心溜息を吐く。

物事の見方は様々なものがあるが、警察官という立場上、一方的な見方をするというのは好ましくない。

事件というのは双方の立場に立ち、公平に対応すべきであるが、警察官の中にも偏った思想の者は一定数いた。

「商店街の関係者は、帝片高校の学生たちを制圧した後、自身の自宅と思われる建物に入っていたとのことです。」

「早急に確保しなさい。」

「かしこまりました。」

警察官は署長室から出ていく。


「橘和夫、あなたは包囲されている。出て来なさい。」

警察官数十人は和夫と梢の住む洋食屋兼自宅を包囲する。

十数人の高校生を一人で制圧した状況を鑑みて、直接的な接触を避け、和夫から自首して貰う流れにしたかったのだ。

だが、目論見は外れ、外から呼び出して数時間経っているが、一向に出てくる気配はない。

「大変です。」

「どうした。」

「どうやら、和夫は家にはおらず、川崎国へ逃亡を図った様です。」

「何だと。あそこは治外法権、北九州国に続く修羅の国へと渡ったということか。」

警察官は冷や汗を流す。

数時間、無人の家を取り囲んでいたということが知られれば大失態となるからである。

「仕方がない。橘和夫を国際指名手配にかけるぞ。」

「えっ。でも、馬鹿な学生たちをぶっ飛ばしただけですよね。」

国際指名手配は重大な犯罪を行った者が国外へ逃亡した可能性を鑑み発令する国際間条約である。

その発令には国家の威信にも関わることで、軽々にできるものではない。

「構わない。これは横浜県警の信頼に関わることだ。」

「かしこまりました。」

こうして、橘和夫は国際指名手配されることとなった。


川崎国。

それは東西で明確に治安が異なる。

西域は中流から上流階級が住むハイソな地域であり、東域はギャングが支配する魔境であった。

そこに三人の男が立つ。

昼倉、坂田、橘の三人だ。

その他にも、三人と志を共にする同士が集まり、その数は十人を超えていた。

それから、川崎国東域では戦乱とも呼ぶべき事態が起こり、すったもんだの末、川崎国は日本国に併合されることとなった。

後年、彼らは路上の英雄と呼ばれ、人々に親しまれた。

ついでに、横浜県警は滅びた。


~完~

ギャグテイストで書いていますが、警察や学校の責任分解は難しいですね。

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