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知らない、とは怖い事なのですね  作者: 猫卜雪乃


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08:個人維持費




「おねえさまぁ。この公費の使い方教えてください」

 ブリーゼが甘えた声で話しながら、私の部屋へ入って来ました。

 そう。話しながら、です。

「ブリーゼ。まずはノックをして、返事を待ってから扉を開けなさい」

 当たり前の事を注意したのに、ブリーゼは頬を膨らませます。

 幼児かな?


「家族なんだから、そんなの良いでしょ」

 文句を言いながら勝手にソファへ座って、テーブルの上に置いてあった菓子器を開けて食べ始めます。

 それは、私が自分に与えられた貴族としての個人維持費で買った高級チョコレートです。

 ブリーゼの半額しか与えられていない、所謂(いわゆる)私費で買ったものです。



「ブリーゼ。勝手に人の物を食べないで」

 次のを手に取ろうとしたので、菓子器をブリーゼの手の届かない私の(そば)へ移動しました。

「えぇ、こんなのまた買えば良いだけでしょ」

 ブリーゼが腰を浮かせて、更に手を伸ばしてきます。


「そうね。それならば、自分で買いなさい」

 菓子器を持って立ち上がり、文机まで移動させました。

「えぇ?! おねえさま、ケチくさいのぉ」

 さすがにテーブルを回って文机まで取りには来ないようです。

 ブリーゼは(わざ)と必要以上の音を立てて、浮かせた腰を戻しました。

 本当に幼児のような行動です。



 それに、ケチくさいと言われてもかまいません。許せない事は、あるのです。

 許可も得ずいっぺんに二個も掴んで食べて、更に当たり前のように三個目に手を伸ばしたのは、絶対に許せない。

 親しき仲にも礼儀あり。

 食い物の恨みは恐ろしいのよ!


 それから、日本と違ってチョコレートは本当に高級品なのです。

 貴女(ブリーゼ)は伯爵家の食費を使って自分用のお菓子を買っているけれど、私は違うのよ。

 何度でも言うわ。

 これは、私の私費から買っているの。

 円換算すると、十個で二十万円以上するのよ。

 後継者教育で頑張った自分へのご褒美で、日々の密かな楽しみだったのに。



 私費で高い宝飾品を買うと、何かと理由を付けてブリーゼに取られてしまうので、必要最低限しか買わなくなりました。

 パーティーで使うものは養育費に含まれるのが貴族の常識なので、さすがのブリーゼもそれには手を出しませんでした。

 いえ。事細かな購入記録が残っているので、継母が止めたのかもしれません。


 だから帳簿に金額は残っていても、詳細は記入されない私費で購入した宝飾品が狙われたのでしょう。

 私がブリーゼへの贈り物として購入した、とでも言っておけば、周りから責められる事はありませんからね。




 ブリーゼの蛮行で忘れていましたが、公費の使い方がどうとか言ってしました。

 ソファの上に放り出してある書類がそうなのでしょうか。

「ブリーゼ、その紙は?」

 ブリーゼの横にある、クシャクシャになった紙を示します。

 最初にソファに座った時に横に置いて、座り直した時に手を突いたせいで皺になった紙です。


「あ、これ。荒地の整備に使う公費だって、ヴァッサーが持って来たの」

 私の方へ見せてくるけれど、これはアンドロシュ公爵家の物なので、私には何も権限がありません。

 現に書類の最後には、アンドロシュ公爵の貴族印……日本で言うところの角印が押してあります。



「それはアンドロシュ公爵子息がご自分で手続きをするものです」

「えぇー。それがわかんないからおねえさまに聞いてるのに」

 いや、むしろ何で知らないの?

 当主命令で家令が全て(しり)(ぬぐ)いしているブリーゼはともかく、ヴァッサーはアンドロシュ公爵家から自身の維持費を貰ってやりくりしているはずよね?


「馬……アンドロシュ公爵子息は、今まで個人維持費の手続きはどうしてたのかしら?」

 遊びに行くお金や、普段着なども貴族の個人維持費から出すはずなので、手続きした事無いなど有り得ません。

 今回の荒地の公費は、その応用で手続き出来ます。


「ヴァッサーはうちのお婿さんだもん。うちがお金出すに決まってるでしょ」

 ブリーゼがとんでも爆弾を落としました。

 決まってませんけど?!




 この後はとりあえずブリーゼを追い出し、家令に話を聞きに行きました。

「アンドロシュ公爵子息の分は、ご本人が持参金で払うとおっしゃってましたので、結婚式の日程が決まったら請求出来るようにこちらへ」

 そう言いながら家令が差し出してきたのは、ヴァッサー個人の帳簿でした。


 おぉい! こいつ、私よりもうちの金使ってますけど!?

 何で馬鹿がブリーゼと観劇に行く時に着る服をうちで買うんだ?

 戻って来るにしても、おかしいだろうが!


「これは……うちの家計を圧迫しないのかしら?」

 あ、衝撃が大き過ぎて家計とか言っちゃったよ。正しくは家政だ。

 家令は私の言い間違いを気にした様子もなく、私が見ていた最近のページから何枚か(めく)って前に戻る。

 そこには仮決済済み印が押してあった。


「毎月、婚約者との交流費として計上しております」

 要は婚約者(ヴァッサー)に対する貸付けという事にして、厳密にはうちの支出では無いと国には報告しているわけですね。

 交流費というには大き過ぎますが。家令がとても良い笑顔でそう言いました。間違い無く、家計……いや家政を圧迫しているようです。

 当主命令で仕方無いとはいえ、これは、かなり怒っているわね。




花粉症のせいか、免疫力が下がっているようです……(T^T)

すみません。毎日更新は難しそうです。

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