07:仲間
私は、自分の鑑定結果を正直にエールデ様に伝えました。
聖女の異母妹に対抗して、嘘を言っていると思われたらどうしようかと不安に思ってましたが、意外な事にエールデ様はすんなりと信じてくれました。
「実は、クリーマ嬢は全体的には風の属性である白っぽい魔力なのだが、眼の辺りが金色に、右手が青、左手が緑、両足が茶色に見えている」
それは、火属性の赤以外を纏っているという事でしょうか。
その前に、緑とは? 何属性ですか?
「あぁ、申し訳ない。右足が茶色で左足が赤だ」
エールデ様が言い直します。
貴族女性は足を見せるのははしたないとされているので、ドレスの中に隠れています。しかもそのドレスは布が何枚も重なっています。
そのような布越しに、ぼんやりと見えているのかもしれません。
てか、クリスマスツリーかよ!
エールデ様から見たら私も妖精だらけのブリーゼも、大して差がなくない?
むしろ自分に色が付いてる私の方が派手だよね!?
そういえばこの前エスコートされた時、私の手をジッと見ていた気がする。
魔力の色を確認してたのか。
「称号の精霊の愛し子と【鑑定】は何か関係があるのだろうか」
場所を移した私達は、貴族御用達カフェの個室にいます。
当然二人きりではなく、私付きの侍女とエールデ様付きの侍従も一緒です。
ただし、会話は聞こえないように防音の魔法が私達のテーブル付近には掛けられています。
使用人用の席からは、姿は見えるけど、会話は聞こえないのです。
ファンタジーですね。
エールデ様の先程の疑問ですが、多分私が転生者だからでしょう。
転生漫画の王道設定で、加護やチートは付き物ですから。
でも、それは言えないので……とりあえず笑っとくか。
「私にはわかりませんわ」
うふふ、と令嬢らしく微笑んでおきました。
エールデ様は何か言いたそうな顔をしましたが、何も言わずに珈琲を一口飲みました。
私も自分のお茶を飲みます。薔薇茶という名前のローズヒップティー。
普通の紅茶も有るけれど、飲み物だけの時はこちらの方が好きなのです。
あ。荒地でお茶の木を育てられないかな?緑茶が飲みたい。
中学校の夏休みの宿題で、近所のお茶農家のお茶作り体験をしたのよね。
自由研究だって言ったら通常の体験よりも細かく教えて貰えたので、昔ながらのお茶の作り方を覚えている。
「薔薇茶に何か入っていたのか?」
私がカップを手に持ったまま見つめていたので、エールデ様に心配されてしまいました。
「いえ。荒地の事を考えておりました」
カップをソーサに戻しながら答えます。
「あぁ、試験自体はヴァッサーを納得させる為のものなので、私達は何もしなくても大丈夫だろう」
確かに、ヴァッサー達が再生に成功しなければ、エールデ様の後継者の座は揺るぎません。
とても貴族らしい無駄の無い考え方です。
それでも!
「だが、それではつまらないから、完膚なきまでに叩き潰してやろうではないか」
エールデ様がニヤリと笑いました。
なんて腹黒い笑顔でしょう。
「こちらには秘密兵器が有るからな」
今度は楽しそうな笑顔です。
……というか、秘密兵器?
「荒地がなぜ荒地なのか、完璧には解らなくても、何か解決の糸口くらいは判るのではないか?」
エールデ様がトントンと自分の目元を示しました。
視線は私の眼を見ています。
なるほど! 私の【鑑定】が秘密兵器なのですね。
私も【鑑定】は今回の試験に役立つと思っていたので、思わず笑顔になってしまいます。
秘密兵器と呼ぶほど、私のスキルを信頼してくれた事と、【鑑定】の使い道を考えていた事実が嬉しかったのです。
今すぐにでも荒地に戻り、作業を始めたい気分でしたが、そうはいかないのが貴族です。
この後エールデ様は後継者としての通常業務があるので、アンドロシュ公爵邸に戻らなければならないのです。
貴族女性が一人で荒地に行くのは、外聞が良くありません。
こういう時、日本は楽だったな~と実感します。
私もエールデ様程ではありませんが、後継者としての業務はあります。
領地や屋敷内からの報告書を読んだり、解決策を家令と話し合ったり、です。
父は当主としての決済に必要な実印を、家令に預けています。
これ、本当はやってはいけない事ですからね!
家令が『クロイツァー伯爵家当主を〇〇へ譲る』という書類を作って貴族院へ提出したら、認められてしまうのです。
精霊に認められていないので、勿論名前だけの当主になりますが……。
あれ? 今の父と同じですね。
父より家令の方が良い気がしてきました。
因みに、私へ家督を譲る、という書類は偽造しても意味がありません。
母の遺言書『結婚したら爵位を継がせる』の方が有効だからです。
あぁ、貴族院の人が【鑑定】持ちだったら、既に私が当主だと判るのに!
その前に、母の遺言書が本物か調べていたでしょう。
父の称号を鑑みて、母の遺言書は偽物です。もしも本物ならば、私の鑑定結果は伯爵家の後継者のはずですから。
すみません。ここ数日体調不良で、更新が一日抜けてしまいました。




