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知らない、とは怖い事なのですね  作者: 猫卜雪乃


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15/16

14:想定内の想定外




 順調に育っていた作物に変化が出たのは、それから僅か一週間後でした。

 水は魔法を使わずに近くの水源から運んで撒いていたし、追い肥はどうしようか迷っているのでまだやっていない状態です。

 由緒正しい手作業での、昔ながらの(日本式)農作業しか(おこな)っていない、魔法無しの農法。

 それなのに。


「なぜこの(ひと)(うね)だけ枯れているのか」

 エールデ様は一番端の、例の少し幅の狭い畝を見ながら首を傾げました。

 肥料の素入りの農地では、全部元気に育っています。

 こちらの区域でも、あちら程ではなくてもそれなりに元気に育っていました。


「昨日までは他と変わりありませんでした」

 世話人として雇った農夫の代表者が、申し訳なさそうに言います。

 全部で六人の雇われ農夫全員がうんうんと激しく頷きました。

 大丈夫ですよ。貴方達を疑ってはいませんから。




 いつから居たのでしょう。

 元荒地の農地と、普通の土地の境目に緑色の髪の半透けの人が佇んでいました。

 幽霊?! と思ったのですが、悪い気配は感じません。

 悲しそうな表情で、地面を……荒地を眺めています。


「クリーマ嬢、どうしまし……」

 農夫と何やら話し合っていたエールデ様が私の側へ寄って来て、固まりました。

 言葉を途中で止めたエールデ様を不審に思い、幽霊? の半透明人から彼の顔へ視線を動かします。

 エールデ様は、目を見開いていました。

「緑の光……?」

 彼と私では、半透明人の見え方が違うようです。



「エールデ様は、光に見えるのですか?」

 まだ動かないエールデ様へ、声を掛けます。

「クリーマ嬢は、違うのですか?」

 視線を半透明人から外さないエールデ様に、質問を質問で返されました。

「私には、緑色の髪の半透明の女性に見えます」

 エールデ様の視線が、半透明人から私の方へ動きました。


「おそらく()()は、精霊です」


 うわぁお、ファンタジー。




 自分のスキルの事は他人に明かさないのが普通なので、農地は農夫達へ任せて私達はアンドロシュ公爵家へと向かいました。

 うっかり農夫達に聞かれたら困る事を口にしてしまいそうだから、ですね。

 勿論、農作業の指示は出しております。

 ここで「後はよろしく」等と適当に言ってしまったら、彼等の能力に頼った事になってしまいますからね。


 因みに、ブリーゼ達は相変わらず水撒きだけをして、作業員を雇っている様子もありません。

 エールデ様曰く、割り当てられた公費は全額引き出されていたそうです。

 何に使っているのでしょうか。不思議ですね。



「あの精霊は、アンドロシュ公爵領の精霊ではありません」

 アンドロシュ公爵邸の応接室へ落ち着いた私達は、とりあえず一杯の紅茶を飲んでから人払いをし、話を始めました。

「私は会った事はありませんが、うちの精霊では無いと感じました」

 後継者、いえ、当主だからか、確信があります。


「私も自領の精霊と会った事はないな」

 エールデ様に苦笑されてしまいました。

 あまりにも自信満々だったので、見た事があるのかと思いました。

 私と同じで、感覚で判ったのですね。



「多分ですが……あの精霊は、枯れた畝を見ていました」

 泣きそうは表情に見えたのは、私の気のせいでは無いと思います。

 畝はアンドロシュ公爵領とクロイツァー伯爵領に跨って作られています。

 だから領地に関わる精霊ならば、二体居ないとおかしいわけで……もしかして、植物自体の精霊? 緑だし。


「あの、植物の精霊って事はないですか?」

 エールデ様は、私の仮定にパチクリと目を瞬かせました。ちょっと可愛い。

「植物の精霊など、聞いた事無いな」

 いやいやいや。土に火に風に水ときて、なぜ植物が無い?!

 今まで疑問に思った事ないけど、前世日本人としては納得いかん!

 私が聞いた事ないだけで、いるもんだと思ってたよ!!




 緑の半透明人の謎は解けぬまま、数日が経過しました。

 畝は枯れ続け、隣の二つも枯れ始めています。こちらの謎もそのままです。

 二つの謎は繋がっていると思うのですけれど……。調べる方法が無いのでしょうがないですよね。


 ……ん?

 調べる方法あるやん。

 自分、【鑑定】持ちやろがい。


 十年も使っていなかったので、すっかり忘れていました。

 元荒地の農地も順調だったので、途中経過を鑑定するのを忘れていました。

 農地魔法だけの土地に問題が起こるのは、ある意味想定内だったのです。

 エールデ様も、そうだったのでしょう。



「え? 鑑定しても理由が判らないのかと」

 翌日。農地で会った時に【鑑定】の話をしたら、まだやってなかったの? みたいな反応をされてしまいました。

 すみません。


 気を取り直して【鑑定】です。

 [農地 栄養豊富な土 栄養を蓄えている 植物がよく育っている]

 これは、肥料の素を含んだ側の土地の鑑定結果。良い感じ。

 [農地 普通の土 栄養を含んでいる 植物が育っている]

 次にこれは、枯れていない農地魔法だけの土地の結果。


 問題の畝の【鑑定】です。

 [荒農地 枯れかけた土 栄養不足になったので植物は育たない]

 何これ。栄養不足って、この土地は魔法を使って無いのに!




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