13:お役立ち?
「おねえさま! また意地悪したでしょ!」
異母妹は、何度言ったら礼儀、いえ常識を覚えるのでしょうか。
ノックをして、返事があってから入室するってそれほど難しい事なのでしょうか。
動物に覚えさせる方が簡単な気がしてきました。
私は昨日の農作業の影響で筋肉痛なのです。
その状態で学校へ行って、正直クタクタなので貴女の相手はしたくないのですが。
チラリと視線を向けただけで無視し、手に持っていたカップに口をつけた私の目の前の席へ、ブリーゼはドスンと座りました。
埃がたつからやめてほしい。
いくら使用人達がきちんと掃除をして手入れもしていても、その勢いで座ればソファから埃がたつわよ!
私の側に控えていた侍女が、ローテーブルの上に置かれた菓子皿を持ち上げました。
手を伸ばし掛けていたブリーゼは、変な格好で止まります。
侍女は埃が入らないように避けただけですが、ブリーゼから取り上げたみたいになりました。
「ちょっと! 何すんのよ!」
ブリーゼが侍女を睨みます。
「お嬢様のお菓子を手に取りやすい位置に移動しようとしただけですが」
あら。本当に食べられないように取り上げたのだったようです。
同じ物がブリーゼの分も用意されているので、文句を言われる筋合いは無いのですけどね。
紅茶を飲み、お菓子をつまみながら聞いた話を要約すると、一所懸命世話をした『空白の地』が荒地から改善されず、むしろひび割れて状況が悪化したのは、私が何かしたからだろう、との事でした。
その証拠に私達側は植物が生えているではないか、と言いがかりを付けてきやがった。
お茶の木も、その他の植物も勝手に生えてきたのではなく、昨日頑張って植えたのよ。
そのお陰で今日は全身筋肉痛なのよ!?
本当は農地の様子を見に行きたかったのに、それを断念する程の筋肉痛よ。
いやぁ、マジで農家さん尊敬するわ。
カトラリーより重い物は持たない(本当は教科書とか学生鞄とかは持つ)高位貴族な私には、数時間の農作業が限界です。
日本と違って体育とかも無いし、貴族令嬢って本当に貧弱だわ。
「荒地の世話、と言っていたけれど、どのような事をしたのかしら?」
言い切った! と良い顔をしているブリーゼに質問します。
「ヴァッサー様がお水を撒きました!」
嬉々として言うブリーゼの顔を見つめ、続きの言葉を待ちます。
しかし、フンッと鼻息荒く得意気な顔をしているだけで、その先はありませんでした。
「撒いた水は、何か特別な水なのかしら?」
実はヴァッサーは栄養豊富な魔法水が出せる、とか?
「お水はお水です!」
そんなドヤ顔されても、困るがな。
なんでやねん! とツッコミを入れなかった私を褒めて欲しい。
「あなた達は『空白の地』の復活をどういう形にしようと計画しているのかしら?」
心配になって聞いてしまいました。
「えぇ? そんなの教えるわけないじゃない。邪魔されるのわかってるのにぃ」
この台詞が嫌味とかではなく、本気で思っているところがブリーゼですね。
お菓子を横取り出来ないと理解したのか、ブリーゼはこの後すぐに「お菓子食べに行こっと」と宣言して部屋を出て行きました。
私の返答を聞きたかった訳ではなく、ただ文句を言いたかっただけなのでしょう。
邪魔した云々の話は全然解決していないのに。
それにしても荒地の世話は、やはり水やりだけのようです。
しかし世話とは、ペットか何かと勘違いしているのでしょうか。
もっとも、ペットなら死んでますね。
あ、他の人に説明する時には、農地を動物に例えるのは有りかもしれません。
農地魔法を使った畑には、水しか撒かなくても作物が育ちます。
それが当たり前の人達にどうやって納得させようかと思っていましたが、良い例え話ができました。
水だけでなく、栄養もあげないと農地(動物)は死んでしまいますよ、とか?
動物を魔法だけで育てる事は出来ません。怪我をした時に治癒魔法を掛ける事はしますが、普通に水もご飯もあげます。
ペットや家畜を育てた事がある人ならば、半信半疑でも少しは心に響くかもしれません。
ブリーゼも役に立つ事があるのですね。
良い気付きをさせてくれました。
夜道を歩く事でもあればピカピカ妖精が役に立つのに、と常日頃思っていたのですが、貴族が夜道を歩く事などありません。
今更ですが……精霊は自然を司る存在ですが、妖精って何なのでしょう?




