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知らない、とは怖い事なのですね  作者: 猫卜雪乃


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13/16

12:循環する




 私は【鑑定】で荒地が栄養不足と出た事をエールデ様に話しました。

 だから栄養になりそうなものを選んで持って来たのだ、と説明します。

 実際には先に養分を用意していたのですが、言わぬが花です。


 あとは、前世の腐葉土の簡単な知識も。

 なぜ簡単になのかと言うと、専門家ほど詳しくないのと、【鑑定】のお陰で知った知識だと誤魔化す為です。



「土にゴミを混ぜて栄養を与える、ですか?」

 エールデ様の戸惑った表情と、嫌悪を含んだ視線に心が折れそうです!

 私を見ているのではなく、木箱の中を見ているのですが。

 これでも鶏糞とかは忌避(きひ)感が高いだろうと()めたのに!


 発酵という概念が無ければ、腐敗してゴミになって終わりですよね。

 前世の私、納豆は好きだけど、ブルーチーズは嫌いでした。

 もっと言うなら、ピータンも嫌いでした。

 食べた事ないけど、シュールストレミングもホンオフェも多分嫌いです。


 要は、子供の頃から慣れ親しんだものでないと、発酵でも受け入れられないよねって事で……気持ちは解ります、と言いたいだけです。

 ちょっと焦って、思考が明後日の方向へ行ってしまいました。



「そうか……今までと違う事をしないと、荒地の再生など出来るはずがない。やってみよう」

 私が変な事を考えている間に、エールデ様は真面目に熟考してくださっていたようです。

 申し訳ない。




 私の風魔法で細かくした肥料の(もと)を、担当地の半分の範囲の土に満遍なく撒き混ぜ込みます。

 そして農地魔法を掛けていただきました。

 残り半分には、何も撒かずに普通の農地魔法を掛けます。

 出来上がった農地は、一見同じふかふかの土です。


 [農地 栄養豊富な土 栄養を蓄えている 植物がよく育つ]

 こちらは、肥料の素を入れた農地の鑑定結果です。

 [農地 普通の土 栄養を含んでいる 植物が育ちやすい]

 そしてこちらは、魔法だけの農地を鑑定したもの。

 これだけでも大分結果が違って吃驚です。

「やはり意味があったみたい」

 嬉しくなり、こっそりと呟いてしまいました。




 比較検証する為に、種と苗を両方の土地に同数植えようとして、気が付きました。同じ数で同じ幅の畝を作ったはずなのに、ただの農地魔法の方は、最後の一畝の幅が狭いのです。

 先程肥料の素有りの農地を確認した時は、全て同じ幅でした。


 何も入れていない方の農地が少しだけふかふかな土地が少ないという事です。

 よく見ると、農地と草原の境界に数センチ、荒地が残っていました。


「エールデ様、こちら側の畝が狭いのはわざとですか?」

「え? 同じ範囲に魔法を掛けたはずだが」

 エールデ様がこちらへ確認しに来ました。



「ここまで、魔法の残滓(ざんし)があるな」

 エールデ様の指が、畝より数センチ外に線を引きました。

 『空白の地』と草原との境界まで、魔法自体はちゃんと掛かっているのです。


「たかが数センチだが、この農地を領地だと仮定すると……」

 エールデ様がブツブツと何やら呟いて考え込んでしまいました。

「あちら側は端まで農地になってましたわ」

 私は肥料の素を撒いた農地を指し示しました。



「そうか。土地の栄養を一ヶ所に集めるだけで栄養の総量は変わらないから、こちら側は枯れる場所が出来て当然なのか」

 おそらくエールデ様も私と同じ『空白の地』の仮説にたどり着いたのでしょう。

 肥料の有用性にも。


 私は異世界での基礎知識があるので当然ですが、それも無いのに実験結果と【鑑定】の内容として出したヒントだけで、そこへたどり着けるエールデ様の頭脳には驚きました。

 最初は肥料の素をゴミだと言っていたのに、柔軟な思考回路です。


 これだけ優秀なのに、今の私の二つ上の二十歳なのです。

 私はまだ誕生日前なので十七ですけどね。




 種と苗を植え終え、エールデ様と手伝ってくれた従者達と皆で身体を伸ばします。

 農業って、本当に大変です。

 伸びをしたついでに、隣の土地へと視線を動かしました。

 ヴァッサーとブリーゼの土地です。


「え? もう乾いている……?」

 あれだけぬかるんでいた土が、乾燥してひび割れています。

 私達が作業していた時間は決して短くはありませんが、数時間です。

 隣の土地は、何日も放置したかのようにカラカラです。



 この世界の懸念事項が隣の土地では証明されていました。


 実はこの国は、圧倒的に森や林などの木々が少ないのです。おそらく世界的にも。

 温暖化が進んでいた地球を思い出してしまい、不安になるのは私だけ……でしょうね。


 森が呼吸をして、二酸化炭素を吸い酸素を出す。

 雨水が森林でろ過されて地下水になり、やがて地表に出てきて、そのうち雲になりまた雨になる、という循環も無いわけです。


 落ち葉で腐葉土が出来て、それが土の栄養に、なども、勿論無いわけです。

 その為、魔法で栄養を蓄える……他から持って来て。

 悪循環!!


 その集大成が『空白の地』。

 栄養も無く、水を蓄える事すら厳しい荒地。

 そこで無理に水魔法など使えば……うん、悪化するよね!




説明ばかりの世界観のお話は、ここまでです!

次からはもっと分かりやすいお話になる……はず。

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