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知らない、とは怖い事なのですね  作者: 猫卜雪乃


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12/16

11:空白の地




 荒地再生勝負が始まり、早くも十日が経ちました。

 今まではエールデ様と学校帰りにお会いして、荒地開拓の為の会議を開いておりました。

 街で評判のカフェで食べるケーキセットはとても美味しかったです。


 実は意外と甘党のエールデ様は、今まで婚約者がいなかったので、カフェに来る事が出来なかったのだと、ケーキを前に嬉しそうに笑っていました。

 引く手数多(あまた)のはずなのに、なぜ今まで婚約者がいなかったのでしょうか?

 不思議です。


 ほぼ毎日、楽しくカフェでお茶です。

 色々な案を話し合い、お互いに高めあっている実感があります。

 婚約者との交流って、本来こういうものですよね。

 ヴァッサーは、伯爵邸に勝手に来て、ブリーゼとお茶して食事して、帰り際に私の勉強室へ来て、罵倒して帰って行ってました。

 一応顔を合わせれば、交流したと主張出来ると思っていたのでしょう。



「このお茶の木というのは、紅茶を作るための木では無いのか?」

 荒地再生の為の下見で一緒に植物園に行った時、エールデ様は私の購入希望のお茶の木を見て質問してきました。


「はい。紅茶も作れますが、私が作りたい緑茶も同じ木なのです」

 緑茶も紅茶も烏龍茶も、同じお茶の葉から作られるのです。

 今現在、この国には紅茶しかありませんが。


 今までに無いお茶、緑茶を荒地で栽培から加工まで出来れば、荒地再生だけでなく領地への貢献にもなりますよね?

 そう提案した私にエールデ様は、とても良い笑顔をくださいました。

 因みに黒くはない、本当の良い笑顔でした。

 爽やか王子様スマイルです!


 実は、自分が飲みたいだけなのです、とは言えませんでした。




 今日は学校の帰りに、エールデ様と荒地で待ち合わせをしております。

 思ったよりも早く着いたようで、まだエールデ様は居ませんでした。

 目の前には雑草一本生えていない荒地。

 下を見ると、結界でも有るかのようにくっきりと分かれた草地と荒地。


 持って来た木箱を従者に持ってもらい、一緒に荒地へと歩みを進めます。

 荒地の土は乾燥も激しく固そうで、見るからにカチカチの栄養不足。

 水を撒くだけでは改善しそうもないですね。



 そのような事を考えていた私の視界の隅に、激しい水が落ちてくる光景が映りました。

 半分に分けられた土地の、境界杭より向こう側。ヴァッサーとブリーゼ側の荒地に、集中豪雨が起きていました。

 というか、滝? 滝だよね?


「わはははは! 水だ! 水を降らせれば、荒地など復活するに決まっている!」

 馬鹿……いえ、ヴァッサーの高笑いが聞こえてきました。

 その程度で復活するのならば、今頃この国から荒地は無くなっているわよ!



「土壌から水分を奪って、上から水を降らせているだけだな」

 いつの間に来たのでしょうか。私の頭上からエールデ様の声が聞こえてきました。

 魔力の色が見えるエールデ様は、ヴァッサーの水魔法の動きが見えるようです。


 カラカラの土に水を撒いたからといって、土壌が復活するはずないのに。

 それに水を撒いた後は?

 種も苗も用意してないようだけど、荒地を濡らして何がしたいの?

 前世知識が無くても、それくらいは解るものではないの?




 ぬかるんだ泥沼を作ったヴァッサーとブリーゼは、満足そうに帰って行きました。

 これ、このまま乾燥したら、ひび割れた土地が出来上がるだけだと思うのだけど……。

 境界は杭と網しかないのに、ヴァッサーの水は一滴もこちらには入って来ていません。何か特殊な魔法がかけられているのでしょう。


 [泥濘(ぬかるみ) 枯れた土 過剰な水に浸かっている 栄養不足]


 思わず隣の土地を【鑑定】してしまったよ。

 あらら、こりゃ酷い。



 何もしていないこちら側も、似た結果ではあるのですけれどね。

 [荒地 枯れた土 乾燥が激しい 栄養不足]

 水の前に、栄養不足が問題なのかもしれません。

 予想通りですね。




 待ち合わせをしていたエールデ様は、隣の惨状から私の足元へと視線を移しました。

 少しだけ怪訝な表情をした後、にこやかに挨拶をしてきます。

「お待たせしてしまい、すみません」

「いえ、私も今来たところですわ」

 お決まりの挨拶の後、私は足元の木箱を開けました。


 木箱の中身は枯れ葉や灰、野菜クズなどです。本当は腐葉土や肥料を用意したかったのですが、それを作っている時間はさすがにありません。詳しい知識も。

 だから土魔法で、土に栄養を蓄えるのです!通称、農地魔法です。

 しかし何も無い所を栄養豊富な土にする普通の農地魔法ではなく、栄養の(もと)になりそうなものを混ぜてからの魔法です!


「エールデ様、これを土に混ぜて栄養の素にしてから、土魔法で農地に出来ますか?」

 私の問いに、エールデ様はキョトンとした表情をしていました。




 普通の農地魔法は「土に栄養を」と唱えるだけで、土壌が栄養豊かになります。

 その栄養はどこから来るのでしょうか?

 この世界の人は、誰もそれを疑問に思いません。そういうものだから。

 魔法で楽に何でも出来てしまうので、肥料という概念が無いのかもしれません。


 魔法は精霊により使えるとされています。

 おそらく精霊は、必要な栄養を他から持って来るのでしょう。

 水もそうです。有る所から、持ってくる。


 精霊達は苦肉の策で、それぞれの領地の一部に捨て地を決め、そこから必要なものを調達するのでしょう。

 だから、色々と足りない土地が発生してしまう。それが荒地……『空白の地』と呼ばれる土地になると考えれば、納得です。




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