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知らない、とは怖い事なのですね  作者: 福田雪乃


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00:婚約破棄




「お前との婚約を破棄する!」


 そのような物語の中のような台詞をぶつけられるとは、思ってもおりませんでした。

 相手は一つ年上の、アンドロシュ公爵家次男であり私の婚約者であるヴァッサー様。

 希少な水属性の魔法使いですわ。


 それにしても、元々私とは相性の悪い方でしたけど、このような公の場で婚約破棄を叫ぶほど愚かだとはさすがに思っておりませんでした。

 今日は公爵家嫡男であるエールデ様の誕生日パーティーなのに、なぜこのような愚行に及んだのでしょう。実の兄の祝いの場に、私利私欲でケチをつけるつもりなのでしょうか。


「お前のような可愛げの無い女ではなく、俺は純真無垢なブリーゼと結婚する!」

 そう宣言すると、ヴァッサー様は私の隣に居た異母妹のブリーゼへと手を差し伸べました。



 あぁ、なぜブリーゼがこの場に居るのかと思いましたら、そういう事でしたのね。

 もういつ結婚しても良い年齢なのに、いつまでも少女のようなヒラヒラフワフワしたドレスを着ているブリーゼは、その頭の中も少女のまま。

 差し出された手を、何も考えずに掴んでしまいました。


「ヴァッサー様。幸せになりましょうね」

 にっこりと笑った顔は、子供のように可愛いブリーゼ。

 その周りを妖精達が飛んでいるので、絵本の挿絵のようですわね。


「妖精達が祝福しているのだ。クリーマも我儘を言わずに諦めなさい」

 後ろから声を掛けられて振り向くと、父と継母が並んで立っておりました。

 どうやらこの婚約破棄宣言には、両親も絡んでいたみたいですわね。

 恥ずかしい。




 その後、私達はアンドロシュ公爵家の使用人により、別室へ連行されました。

 そう。連行である。

 え? さっきまでと口調が違う?

 婚約破棄されたし、もう猫を被る必要もなくなったので、素を出すよ、私は。

 今までは婚約者にうっかり素を出さないように、思考も貴族令嬢然としていたけれど、もう関係無いし。


 パーティーの控え室ですらない、一番格下の応接室に閉じ込められた私達。

 両親はプリプリ怒ってるし、ブリーゼは悲劇のヒロイン気取ってるし、ヴァッサーはそんなブリーゼにベッタリ。

 馬鹿らしい。


 うぅん。やはり、あまりにも素を出すといざという時に不敬な言葉を使ってしまいそうなので、ちょっと気を付けましょうか。




「あ、ヴァッサー様……いえ、アンドロシュ公爵子息。婚約破棄(うけたまわ)りました」

 ここでしっかり返事をしておかないと、婚約破棄を無かった事にされてしまいそうなので、両親とヴァッサーに聞こえるように大きな声で宣言をしておきましょうか。


 すると、私とヴァッサーの体が淡く光り、その光が弾けて消えました。

 精霊が婚約破棄を認めた証拠ですね。

 良かった。これで、相手が何を言っても大丈夫。



「良かったな、ブリーゼ」

 父が笑顔で異母妹に声を掛けます。

 え? 何が良いのが意味不明。

「ヴァッサー様と一緒になって、クロイツァー伯爵家を繁栄させてね」

 継母が更に意味不明な事を言いました。

「任せてください。必ずブリーゼを幸せにします。そして、伯爵領を立派に治めてみせます」

 いや、()()も何を言ってる? ヴァッサーよ。


「え? クロイツァー伯爵家を継ぐのは、私ですよ」

 なぜか()()藹々(あいあい)と幸せな空気を漂わせている家族に告げる。

「何を言っている! 伯爵家を継ぐのは、ブリーゼに決めたのだ!」

 父が偉そうに言うけれど、それ、無理ですから。


「水属性の俺がブリーゼと結婚するのだから、ブリーゼが継ぐに決まっているだろう!」

 ヴァッサーも偉そうに言うけれど、赤の他人の貴方に、なぜ決定権が有ると思ったの?

「妖精に愛されているブリーゼと、希少な水属性のヴァッサー様よ。精霊に認められるに決まっているじゃない」

 継母が勝ち誇ったように言うけれど……。


「希少な魔法属性は後継者に認められる一因ではありますが、そもそも一番重要なのは、血統ですよね?」

 私の質問に、四人が不思議そうな顔をします。

 ブリーゼはともかく、他の三人は知っている事のはずなのに、なぜそんな顔?



「ブリーゼだって、クロイツァー伯爵家の娘だろうが」

 鼻で笑ったヴァッサーの台詞に、私は首を傾げます。

 あれ? 私とブリーゼは異母姉妹だと知ってますよね?

「貴族籍としてはそうですが、この領地は母方の血統ですよ」

 そう。父は、入婿なのです。


 貴族としての父はクロイツァー伯爵ではあるけれど、この土地の精霊から見れば、赤の他人でしかないのです。

 母と血の繋がりが無いブリーゼが、後継者に認められる事は絶対に無いのに。

 今までヴァッサーがクロイツァー伯爵家の精霊に認められていたのは、正統な血筋の私の婚約者だったからであり、希少な水属性だからという理由ではありません。


「で、でも! ブリーゼは妖精に好かれている聖女だからな!」

 ヴァッサーはまだ諦められないようで、そんな事を言い出しました。

「土地を守ってるのは精霊ですよ」

 妖精と精霊は別物ですからね!


 もう、ヴァッサーではなく、馬鹿って呼んでも良いかしら。




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