好きな人と乗った観覧車が巨大ロボに変形したけど質問ある?
そのとき、俺は彼女に一世一代の告白をしようとしていた。
「蘭野さん! 俺ずっと、蘭野さんのことが――」
『緊急警報!! 災害級の脅威が発生!』
しかしそれは、突然鳴り響いたアラームと機械音声に遮られた。俺たち二人を乗せたカゴは、観覧車の天辺に差しかかっていた。
「な、何だ!?」
『パイロット二名の搭乗を確認――変形します』
「へ?」
ガクンと揺れを感じた直後、カゴは高さ五十メートルから自由落下した。
「「うわああぁぁっ!?」」
カゴは観覧車の中心辺りで止まった。
「なんだよ、これ……」
「すごい……」
展開に戸惑う俺に対して、蘭野さんは純粋に目を輝かせていた。
観覧車が変形していた。
ガコン、ガコンと音を立て、支柱が、フレームが、パズルのように複雑かつ整然と動く。やがて大きな鋼鉄の四肢が、観覧車の巨大な輪から浮かび上がるように分離する。
まるで、巨大な輪を背負った鋼鉄の巨人だ。
『聞こえるか、少年少女よ!』
「あ、あんたは――!」
乗りカゴの壁のモニターに老人の顔が映る。珍妙な発明品で有名な、この町の名物博士だ。
『君たちはロボットのパイロットに選ばれた! 脅威を取り除くまで脱出はできない!』
「なんだって!?」
俺はショックを受けたが、蘭野さんの立ち直りは早かった。
「――どうすればいいの?」
「蘭野さん!?」
モニターが切り替わり、テーマパークの地図に赤い光点が表れる。
『脅威はそこじゃ。急げ! 一般人に被害が出る前に!』
「脅威って……何なんだ、それは!」
俺が肝心な点を訊ねると、意外な答えが返ってきた。
『ワシが育てていた実験生物じゃが、脱走して巨大化してしまったんじゃ』
「そっちもあんたかよ!!」
その後、なぜかノリノリの蘭野さんに促され、俺たちは怪獣を退治することになった。ぶっちゃけ、俺も内心ではウキウキしていた。男の浪漫ってやつだな。
俺も蘭野さんも運転経験すらなかったから苦労はしたが、なんとか怪獣を倒すことができた。博士の指示で「メテオホイール」なる大技を使ったら、怪獣より深刻な環境破壊を起こしてしまったが……。
†
「いやあ、助かったよ」
怪獣を倒した俺たちは、諸悪の根源である博士と向かい合った。
「実は、ロボットの搭乗者が君たちの生体情報で固定されてしまってね。今後も協力してくれるかい?」
蘭野さんが、くいっと俺の腕を引く。
「勘君、やりましょう!」
「えぇ……?」
こうして俺にとって、嬉し恥ずかし受難の日々が幕を上げたのだった。
【書き切れなかった設定とか】
・主人公君……勘兵馬。男子高校生
・ヒロインちゃん……蘭野新波
・博士……櫓房建造。テーマパークのオーナーでもある。ロボット狂いの変態で超大金持ち。あえて都会から離れた交通の便の悪い土地にテーマパークを作り、それを隠れ蓑に色んな実験をやっている
・観覧車ロボ……名称候補を色々考えたが、結局作中で出なかった。「カンランシャリオン」とか「ヒュージ・オー」とか「輪・O」とか
・メテオホイール……背負った1000トンのホイール(観覧車の輪)を放り投げて、落としてぶつける。極めて殺意の高い必殺技。これの直撃を食らった怪獣はどうなってしまったのか……