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第3話ぴょんぴょん跳ねるものは1

ダンがご飯を食べている間、私は四男のヒースを抱っこしてあやした。ヒースも出会ってからずっと眠っている。種族によって性質は違うが大抵の赤ちゃんはよく寝る。ドラゴン族なんてこんなに近くで初めて見る。


「にいちゃん……だあれ?」


 そこへ頭をボリボリかきながら狼の獣人の子がやってきた。茶色の髪にピョコピョコ耳がついている。勇者は絶対に面食いだと断言できる。この子も将来が恐ろしい整った顔だ。


「新しいシッターさんだよ。 あ、ええと」


「チコっていうの。よろしくね」


「チコ。ふうん。オレ、ルーフ。おれもなんかたべたい」


「ああ。えっと、何が食べたいの?」


「にく……やいて」


「う、うん。分かった」


何の肉かは聞かなかったけれどよく食べられているホロホロ鳥の肉があったのでそれを焼いた。


「すげぇ! うまっ! うまいいい!」


ルーフは焼いただけの肉を美味しそうに食べた。基本、獣人に塩分はよくない。とても喜んでいるのかルーフの尻尾が激しく揺れていた。


パラパラ…


「ん?」


「なに?」


「え、いや、ルーフくんの尻尾になんか茶色い粒が……」


「外を走り回ったから何かの粉でもかぶったんじゃない?」


「うーん、そんなのかぶったかな」


茶色の粉は尻尾の奥にもついていた。庭の凸凹を思い出して、アレはルーフがやったのかと思った。


「お風呂にはいる?」


「オレ、ふろきらい」


「チコ、風呂の浴槽にはマルタがいるから使えないよ?」


「え。 じゃあ、ダンたちはどうしてるの?」


「清浄の魔法使うか、夏の間は湖で体洗ってる」


「……へえ」


私とダンが話している間もルーフはボリボリと体を掻いていた。シャツをまくってお腹を掻き出したのを見て私は驚いた。


「ちょっと! どうしたの、それ!」


「うん、かゆい」


「何かに刺されてるじゃない」


ぴょん


「え」


ぴょん……ぴょん……


「ルーフの身体からなんか飛んできた……」


「ぎゃああああああああっ!!」


よく見るとルーフの身体から何かがぴょんぴょん無数に跳ねている。なに、あれ! 


「そう言えば俺も足刺されてる」


その言葉でダンをみると足に赤い痕があった。まさか。これ、何かが大発生しているのでは!? そう思ってみるとなんだか足元も気持ち悪くなってきた。ああ、よく見るとなんか小さいのがいっぱいいる……。


「虫が湧いているんだと思う」


「……」


私の声に二人も黙った。どう考えてもなんかいる。


「チコ……どうしよう」


「た、退治しないと……ちょっと家に連絡して聞いてみる。」


私は鞄から魔道具を出して通信し始めた。通信機は初めて見るようでダンとルーフが物珍し気にその様子を見ていた。


『……あーそれ、ノノッコだわ。魔力の多い子が狙われやすい吸血虫でちいせえけど爆発的に増える。十匹見つけて放置したら七日で二千匹くらいに増えるぞ』


「……すでに十匹では済まない感じなんだけど」


『うへっ! すぐに煙焚いて追い出せ】


「煙焚けばいいの? どうやって?」


『ジジウの葉とコショの実をつぶして火であぶるんだ。そしたら煙が出てくるから家んなか密閉して外に出ろ。一時間くらいでやっつけられるから。』


「体についてんのはどうすんの?」


『そっちは丁寧で石鹸で洗って落とすしかねぇな。水中では息が出来なくてお陀仏するから風呂に入れろ』


「……わかった」


『で、チコ、そこでやっていけそうなのか?』


「やっていけるも何も、大人一人もいないし、大惨事だよ!」


『ええ!? ロード様はどうした?』


「新しい子どもたちのお母さんを探すって出て行ったみたい」


『うわあ……。チコ、申し訳ないけど、うちにノノッコを連れ帰るとえらいことになるから、退治するまで帰ってこないでくれ』


「え。ちょっと。それ、酷くない!?」


『手付金も使っちまったしなぁ。すまん』


「え」


『検討を祈る! いいか、煙でやっつけるんだ! 一週間くらい続けたら流石にいなくなるだろう! あと、枕元に酒とジジウの葉をつけたものを置いておくとそこにノノッコが飛び込むからトラップになるからな!』 


ブツッ


「え? あれ?   とうさん!? ちょ……」


「どうしたの? チコ」


「通信切られた。ノノッコ退治するまで帰ってくるなって…」


「ふとんはいっぱいあるからだいじょうぶだよ。チコ、いいにおいだからオレ、いっしょにねてもいいぞ」


ニコニコしてルーフが言った。いや、その布団もノノッコに侵されてんじゃん。


「……とりあえず、ダン、石鹸持って来て」


「わかった!」


ルーフの首根っこを掴んでダンの案内で湖に向かう。首根っこを掴まれると全身の力が抜けてしまうようで足をぶらぶらとさせてルーフは大人しくなった。


「くうん」


「鳴いたって駄目だからな」


ボリボリと足を掻くダンも我慢ならないらしい。


湖に着いた私たちは早速ルーフを洗い始めた。

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