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地上の翼

作者: 柳 大知

 「あーもう、とっとと落ちろってーの」

 白い雲の合間に天使アイリの声が響く。

 「はーなーれーろー!」 

 彼女はカラダにしがみ付くそれを振り落とそうと、雲を突き破り翔る。


 「やめろって、このヤロー!急に暴れやがって、落ちたら死んじまうだろうが!」

 彼女の腰に手を回し、顔を見上げ必死に叫んでいるのは剣を背負っている若い男。

 並外れた腕力でなんとか離れずにいるが、彼の両足は宙に浮いており時折予期せぬ動きをしている。

 「おい、天界に連れて行ってくれるんじゃなかったのかよ!」

 数分前、地上で天使を見つけた男は天界という言葉に誘われ彼女にしがみ付いたのだ。


 「あー面倒くさい、いいから死ね」

 天使は翼を器用に使い、さらにスピードを上げる。

 「死ねって、お前天使だろ!人間に向かってそんなこと!」


 「しょうがないの、人間に姿見られるなんて、ばれたらすっごくまずいんだから」


 「殺すのはどーなんだよ?そっちのほうが問題だろうが!」


 「あんたみたいなの死んだってなんの影響もないの!だからいいの!」


 「なんだそれ!とりあえず暴れんな、何か他に解決方法ねーのかよ!」


 風を切る音に乗せ二人がこんな言葉を行き来させていると、二人に気付く間も与えないという様に、一瞬にして辺りを黒雲が覆っていた。

 

 「え、まずい」

 天使アイリがそう思った刹那、轟音と共に稲妻が二人の体を貫いた。



 

 月明かりに照らされた薄暗い森の中、アイリは倒れていた。

 やがてゆっくりと意識が戻るのにつれ、生い茂る草の臭いがはっきり感じられるようになってきた。


 「ん…あれ…ここは地上?」

 草むらから顔を上げ、呟く。その声に答える者がいた。


 「あ、動いた。生きてまっせ」


 (また人間に見つかるなんて、もー、ついてない)

 アイリは身を起こし構えた。

 

 「へへ兄貴、女でっせ」

 「いっしっし、これはこれは」


 男達の声がどんどん迫っていた。


 飛んでしまえばいい。アイリは翼に力を入れた。


 だが本来ならとっくに空中にいるはずのアイリは地に足をつけたまま。気づけば三人組の男に囲まれていた。

 

 「うそー、なんでー」

 アイリは思わず叫ぶ。

 

 「いっしっし、どうしたお嬢ちゃん」

 一際でかい大男が擦れた声を上げながらアイリの顎に手を伸ばした。

 

 「ちょっと、なにするのよ!」

 抵抗しようと男の腕を掴むが、アイリの細い腕ではどうしようもなかった。

 

 「いっしっし、こいつは上玉だねー」

 大男はにやけながら、アイリの顔を嘗め回すように見ている。


 「へへ、兄貴こりゃあサルフェンのところに持っていけば良い値になりまっせ」

 気味の悪い高い声で話すのは鼠のような顔をした長身の男だ。


 「んなことは分かってる、それよりまずは俺らが楽しもうじゃねえか、なあ」

 「へへそうですね」

 と松明を持った小太りな男が答えると、男達の視線がアイリの体へと向けられた。


 (まっずい…なんでこんなことに…飛べさえすれば…、もーどうして翼がないのよー)

 男達から逃げようと翼に力を入れた瞬間にアイリは異変を感じた。背中にあるはずの白い翼が消えていたのだ。


 男達の目は血走り、アイリの体に手が伸びる。

 残された抵抗手段は叫ぶことくらいだった。


 「キャーーーーーーーーーー」


 (あれ、案外かわいいじゃない)


 アイリが叫ぶと同時に白光が一帯から白以外の色を奪った。

  

 「くそ女、いきなりなんだってんだ」

 大男の目がようやく緑樹を捕らえたと同時に、剣を構えた男の姿が映りこんだ。

 「な…なんだてめえ、女はどこいった…」

 せわしく瞬きをしながら大男が叫ぶ。

 「女?一番安全なとこ」 

 剣士はそう言って、剣を振りかざす。

 その巨体故の鈍さなど関係無かった。ただ剣士の動きが速すぎた。

 「ぐはっ…ばかな…」

 鋭い剣が巨体に突き刺さる。

 剣士が後ろに飛び上がると、急所を抉られた巨体は崩れ落ちた。

 

 「ひぃ…」

 その様子を見ていた長身の男が逃げようと剣士に背を向ける。だが刹那、その背にも鋭い刃が突き刺さる。

 「うぐぁあああああ」

 

 「さあて、あとは…」

 と剣士が目を向けた先には腰を抜かし、哀願の目でこちらを見る小太り男がいた。

 

 「お、お助けくだせえ…」

 

 「聞きたいことがある。場合によっては助けてやらないこともない」

 と言いながら、剣士は男に近づきその体に剣を向ける。

 

 「ひ…ひい…」

 あまりの恐怖からか、男の足元から湯気が立ち昇った。

 

 「ったく、だらしねえな。汚れちまった剣を拭かせてもらおうと思っただけだよ」

 剣士はそう言って、男の上着で剣を拭った。

   

 「で、さっき言ってたサルフェンって野郎だ。そいつの事詳しく聞かせてもらおうか」

 

 「はぁ…サルフェンですか?えっと、この辺り一帯の領主なんですが、それはもう女好きでしてねえ、俺らみたいなのから女を買っては屋敷に監禁して楽しんでるとか…それと…」

 

 剣士は男から一通り情報を聞き出すと、男を殺してしまった。


 「さてと…」

 剣士はサルフェンの屋敷に向かい歩き出す。

 (ちょっと、ちょっと、どういうことなのー)

 「ん?気づいたか?」

 (なんで私とあんたが一緒になってんのよー)

 「さぁ?雷に撃たれたしな、そのせいじゃねえの、まあ主導権は俺にあるし俺は別にかまわないけど」

 (どういうことよ)

 「ほれ!」

 剣士がそう言った瞬間、彼の体は白光し、女の姿へと変わる。

 「なーにこれー」

 と言ったものの、体は自由に動かせるし、意識だけの時よりはずっと開放感があった。

 (んじゃ、作戦説明なー、俺らはこれからサルフェンの屋敷に行く。んで、お前の色じがけで寝室に潜入、そこで交代。悪党退治っと)

 「なんで私が!」

 (嫌なら別にいいけど、もう一生外に出してやんないよ)

 「それはいやー!もー神様ー、助けてくださいよー、天使アイリはここにいまーす」

 



 - 一方その頃、天界では -


 「神様、仰るとおりに致しましたが、よろしいのですか?」 

 「なーに、人間を殺そうとした天使への罰じゃ、あの剣士は悪を憎む正義感の強い男じゃ、きっと地上の為になろう、ふぉっふぉっふぉ」



なんか久々に書いてみました。

出来は…ですw

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