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転生王女は毒母に立ち向かう①  作者: ミルクランド
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転生王女は毒母に立ち向かう!⑦



前世の私が容姿に無頓着なのには様々な憶測がある。



まず一つ目は、私自身がオシャレに一切関心が無い。

着る服にも無関心なうえ他人に髪を触られる事を酷く嫌がるから本人の望むままの格好をさせていた説。


二つ目は、母による質素倹約という名の嫌がらせ。

裏では、メイドが生んだ子どもだから可愛いがりたくないという理由が付随している。


そして、三つ目は次兄ペイシガットによる性的な嫌がらせを回避する為に敢えて着飾らない。

自衛の為に女の子らしい格好を控え男の子みたいな格好をしている。


この三つの噂が前世では、ずっと飛び交っていた。


結論から申し上げよう。


一つ目は有り得ない。


私はとても綺麗好きだし、髪を触られる事が嫌だと言った事も嫌がった事もない。

むしろ、ふわふわと可愛らしいお姫様に憧れも興味も大いにあった。前世でも幼い頃は可愛いコートを着てリボンの髪飾りも付けていた時もあった。


けれど、誕生日を迎える度に母から髪を整える事や身だしなみを整える事はとても贅沢だと言われた。

そのせいか、年頃になるにつれてオシャレをするのが心苦しくなってきたのは事実だ。


だから、前世で飛び交っていた3つの内1つ目噂はデマだ。私自身が身だしなみを整える事を望んで無かったは間違いだ。



それ以外は……。


「最近、ずいぶんと調子に乗ってるな」


月日が流れ、私も王侯貴族たちが通う学校に通う年になりその学校の渡り廊下で次兄に後ろから声を掛けられた。


いくら家族とはいえ、背中を向けている相手に何の脈絡もなく声を掛けるのは不作法だと思わないのか?と腹を立てながら足を止め、息を整えて次兄に身体を向けた。


「いきなり声を掛けられたので誰か分からず驚きました。お兄様、いくら妹とは言え最低限のマナーは守るべきではないでしょうか? でないとお兄様が作法が身についていない粗野な者だと思われてしまいますよ。そして最近調子に乗ってるなと言う発言はどういう意味でしょうか?」


私は笑顔を貼り付けながら次兄に質問を投げた。



ペイシガットはこの数年間でかなり背が伸びた。王家の人間とは思えないくらいの高身長だ。

母も女性にしてはそれなりに背が高かった。母に似たと言われているが王家の人間は全員小柄なので違和感を覚える。



前世の私は自己肯定感がとても低かったから次兄の傲慢な態度にずっとビクビクしていた。


前世の私は何もなかった。知識も信頼できる味方も自信もなく馬鹿にされていた。



けど、今は違う。

まだまだ発展途上中だけど私には、知識も信頼できる味方がいる。その存在が私に自信を与えてくれる。


「調子に乗ってるな…と言われましても何の事かさっぱりです。強いて言うなら私の書いた作文が賞を取った事ですか? それとも全教科のテストで満点を取った事でしょうか? けれど、どれも私が周りの方々に助けて頂きながら努力の末に掴み取った結果です。

決して調子になど乗ってません。それをわざわざ言いに来るだなんてお兄様はずいぶんとお暇なんですね、お兄様も私に構うよりもご自分を磨く努力をなされたらいかがでしょうか? 時間は有限ですよ」


完璧な笑顔を浮かべながら次兄に『礼儀作法も身についていない暇人が。そんな時間あるなら少しは一般常識身に付けてこいや』と遠回しに言ってやった。


きっと前世の私だったらこんな好戦的な事言わなかったし言えなかった。下を向いて、ペイシガットと母に言われるまま生きていたから。

けれど、ペイシガットも母も何の努力もしないで権力と金と脅しで生きてきた軽蔑する人種だ。


こんなのに屈してはいけない。私はヴィルトゥスお兄様御一家を御守りする使命があるのだから。


決して怯まない。今度は間違えない。


私の発言に次兄はカッとし目を見開き、手を振り上げる。


妹の挑発にこんなすぐ手を上げるだなんてどんだけ導火線短いんだよ。と思いながら身体が硬直し目を瞑る。


鋭い痛みが来る。と身構えていたが一向に来ない。


恐る恐る目を開けると、次兄の手を一人の男性が掴んでいた。


「どういう経緯かは分かりませんが暴力は良くないですね。こういう振る舞いを正さないとペイシガット殿下の今後にも影響が出ます。どうかご留意頂けませんでしょうか?」


次兄の腕を掴んでいたの20代の若い男性教員だった。


私はその男性を見てハッとした。


彼の名前はシルト・シュテッヒパルメ。お祖父様の実弟の1番末の御子息で私達にとっては従兄弟叔父いとこおじにあたる。

彼は、ヴィルトゥスお兄様にとって心から信頼出来る人物でヴィルトゥスお兄様にとって唯一無二の親友であり、実の兄の様な存在だ。


前世では、彼がヴィルトゥスお兄様とアンジェリカ様の御縁を結んだ影の功労者でありこの国に無くてはならない人物だ。


「チッ」

次兄は舌打ちし、腕を乱暴に振り払い踵を返した。


ペイシガットは本当に何しに来たのだろう?首を傾げながら兄が見えなくなってから助けてくれたシルトに頭を下げた。


「兄妹のいざこざに巻き込んでしまい、大変失礼致しました。けれど、間に入って頂き感謝しています」


次兄は加減を知らない。その時の感情のまま動くからあのままだったら私は大怪我をしていたかもしれない。

下手したら流血事件になっていたはず。けど、王族が流血事件だなんてとんでもない。きっと隠蔽される。つまり私だけが損する事になる。


「オリナーシャ殿下、あまりペイシガット殿下を挑発するご発言はお控えください。仰ってる事は正論ですがご自身の身の安全を第一にしてください」


シルトはこの時、まだ二十代前半の精悍な顔つきの男性だ。けれど、優しくホッとする安心感のあるそんな男性だ。

とても真面目で良い意味で王家の人間らしくなくよく市井に出ては街の人と飲み交わしたり国が良くなるために尽力を尽くしていた。


王家の人間だからと言ってその地位にあぐらをかいてはいけないと理由で数年前に教員の免許を取ったと耳にした。

彼の真面目さがペイシガットにあればいや、シルトが二番目の兄だったらどれほど心強かっただろうか?

生前、従兄弟叔父であるシルトとはあまり関わっていない。やはりこれらも母が絡んでいる。私が他の王家の人間と関わる事を極端に嫌がった。


「シルト先生には本当に感謝致します。けれど、先生も間違っている方に対して容赦なく斬り込んでいらっしゃるから参考にしたまでです」


その発言にシルトはハッとした表情を浮かべた。以前、ペイシガットの態度に激しく叱ったのだ。


「あ、ペイシガット殿下には…そのお立場を真に理解して国民や王侯貴族たちが納得する人物になっていただきたいと思っているから…ヴィルトゥス殿下もオリナーシャ殿下も私にとって大切な従甥姪だからこそペイシガット殿下にはもう少し王家の人間という自覚を持って欲しいと思い……」


だんだん声が小さくなっていき、シルトはフッと笑った。


「確かに、私も人の事が言えないな。ありがとう、私も肝に銘じておくからオリナーシャ殿下もどうぞ御身を大切にしてください」


「ありがとうございます。はい、以後気をつけて参ります」



私は笑顔を浮かべてシルトの背中を見送った。


前世の彼は四十代半ばで不自然な死に方をする。

とても腑に落ちない謎の死に方だった。

なのに病死とすぐに診断され碌に検査もされずあっという間に火葬された。

確か、母が死亡解剖するのを認めなかったという噂が流れた。

シルトの妻や娘達は、悲痛な面持ちで父親の死を見送っていたのを覚えている。

あまりにも不自然な亡くなり方だったのに誰も口にしない。

まるで、口裏を合わせた様に新聞やマスコミもだんまりだった。


当時、彼がしていた事は王家の会計監査の導入だ。


王家の人間は税金を使っても何にいくら使ったかを明記しない。これではいくらでも不正が出来てしまう事に危機感を覚えたシルトは色々とその制度を整える準備をしていた。


ヴィルトゥスお兄様もシルトの考えに賛成的ですぐに導入されると思っていた矢先シルトが早世した。


スポーツをしている最中に突然膝をつき、そのまま還らぬ人となった。


不可解なのがその後どなたも会計監査について言及も導入もしない事だ。

ヴィルトゥスお兄様の性格なら亡き従兄弟叔父の悲願を何がなんでも達成したいと思うはずなのに。シルトの奥様もそうだ。メソメソ泣くタイプの人間じゃない。亡き夫の意志を引き継いで成し遂げるタイプの人間だ。


だからこそ、とてもジャリジャリとした違和感を感じる。全てがあやふやなままだった。


王家が歪んだのはお祖父様が亡くなってからだった。私が20歳になった時に身罷れた。その影響で私の成年の儀式が延期になったのだ。


今、私は10歳だ。今から10年後。



私がすべき事が見つかったかもしれない。


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