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転生王女は毒母に立ち向かう①  作者: ミルクランド
6/9

転生王女は毒母に立ち向かう!⑥

転生してから、9年の月日が流れた。


私オリナーシャ・コミノア・クプ・カムイ・エテルネルは10歳になり、母との確執を感じながらも一流の指導者や専門知識を持った方と勉学に明け暮れていた。



そして、前世ではさせてもらえなかったオシャレにも力を入れた。


鏡に映る自分の顔をマジマジと見つめた。

私は彫りの深い華やかな顔立ちではないが王家特有の涼しげな目と綺麗な鼻筋。卵のようなすっきりした輪郭。果実の様に赤く形の良い唇。サラサラの髪。

身体は小柄で華奢。だが素材は悪くない。磨けば光るそんな可能性がある容姿だ。


前世の私は全てがダサかった。髪型もダサければ服装もダサかった。何の手入れもしてないボサボサの髪に眉毛も口元のうぶ毛さえも整えずただ石鹸で洗っただけの素顔。


そこに母の着古したフリルとレースたっぷりの少女趣味全開のドレス。牛乳瓶の底みたいな厚ぼったいレンズのメガネ、一切手入れされてないボサボサの髪。


そんな自分が嫌いで自信がなくて誰にも見られたくなくて下ばかり向く陰気な女の子だった。


けど、それでは駄目だ!あの結末を知ったから分かる。

人は見た目も大切。


まずは問題点を見つけ、改良し似合う髪型、似合う色、似合うデザインをしっかり学べば私は生まれ変われる!

人見知りの性格も変えないと! 明るくにこやかに。

けど、媚びず見下さず上品に。



前髪は作らず横に流し、後ろ髪は丁寧に編み込んでもらい一つに結い上げた。服装も時代を問わないシンプルなデザインにした。眉は自然な形に整え、スキンケアを怠らない様に努めた。何もよりも清潔感と表情と姿勢が大切。


このたゆまぬ努力のおかげか最近、私の評判はすこぶる良い。


『とても大人っぽく流麗な王女様。まだ10歳なのに所作が美しい。さらに、気品と風格がある。選ぶ服装のセンスが良い』と周りの方から言われた。


当たり前よ。たくさんの方が協力してくれたんだから。


さらに最近は、王弟陛下とその奥方のフローラ妃と打ち解ける為にたくさん関わってきた。

今では、王弟夫婦をお父様、お母様と呼びたいくらい仲良くなれた。

フローラ妃はとてもセンスが良くて何より所作が美しく洗練されていた。

フローラ妃は名門貴族の御令嬢であり商人の娘の母とは全く違う。


本物が放つまばゆい輝き。偽物には絶対に放てない美しい光だ。格の違いと言うのを身をもって理解した。


教わる事や関心がある物、全てを吸収しようとフローラ妃からも様々な事を教わった。


さらに、つい最近に私専用の教育係りも決まった。


不思議なご縁だがヴィルトゥス兄様の未来の結婚相手アンジェリカ様のご生家ラクスオン・デクラ家出身の女性が私の教育係りになったのだ。


ラクスオン・デクラ家はとても優秀で名門貴族だ。家系を辿ると王家の血筋である。家格にも申し分ない。

そんな優秀な方が私の先生だなんて信じられない。


前世では、こんな事起きなかった。女の私に教育係が付く事すらあり得なかった。

先の読めない未来が目の前にある。

私は自分の意思で見知らぬ道を歩める事が本当に嬉しかった。


思い返せば、こんなに自由に伸び伸びと振る舞えるのは祖父が私を守ってくれているからだ。


祖父サヴァン陛下は若くして王になった方だ。

歴史が動く度に様々な事を見てきた祖父に王后であるペェスカ陛下がそっと寄り添う様に支えている。


この御二人はこの高すぎる地位に胡座ををかいて威張る散らすことなくその立場に相応しい人間で居ようと必死で踏ん張っているのだ。さらに共に支え合い、周りの者達への感謝や気遣いも忘れない。


そんな賢王である祖父母を見てヴィルトゥスお兄様が国王になるまで祖父が国王であって欲しい。そう心から強く願った。



『美しく洗練された王女オリナーシャ・コミノア!その影には母、ピアット王太子妃の細やかな気配りと配慮のおかげ!』


こんな記事の新聞が世間に流れている事を私は人づてに聞いた。


怒りで腸が煮え繰り返りそうになるが何とか平常心を保つ。この冷静な自分を褒めたい。


けど、相変わらず新聞の記事は酷い。


『メイドの子どもに高度な教育を受けさせ、様々な教養を与えているのは全て母のピアット妃が裏でそっと手を回しているからである。王太子妃とは言え立場がまだまだ弱いピアット妃は様々な支援を裏でしている。ゆくゆくは王家を立ち去る立場のオリナーシャ様に様々な選択肢を用意してあげようと見えない所で動いてるピアット王太子妃。けど、いつか降嫁する立場である身の娘一人に多額の税金を使う事に心を痛めている様子も見受けられた。そんな心優しい母の気持ちをオリナーシャ様は知らない。相変わらず生意気な態度でピアット妃の優しさを踏みにじっている』と書いてあった。


さらに、悪意に満ちたペンはまだ止まない。

『まだ10歳なのにメイクやファッションばかりに夢中。着飾る事が大好きな王女様、これらは全部税金だと理解していただきたい』とも書いてある。



おかげで私は悪者だ。優しい健気な母を冷たくあしらい、国民の税金で着飾る事ばかりしているマセた王女だと流布された。


ふざけるな!!!この結果は全て周りの方の支援と国民の税金と自分の努力の結果だ。


母は一切何もしてない。


祖父から私の教育に関する全ての権限を取られたから。つまり、私はヴィルトゥス兄様と同じ扱いなのだ。けど、記者達はそれに関しては報じない。


父である王太子シュバイアンは事なかれ主義であるがやはり実父であるサヴァン陛下に対しては何も言えないらしく母を軽く宥めるだけであった。


この対応に母はかなり不満だったらしく最近はお気に入りの新聞記者にありとあらゆるゴシップ記事を書かせていた。


そして、次兄であるペイシガットと常に一緒に行動していた。


ペイシガットはもうすぐで15歳になる。

けれども、教育係りは未だ居ない。というか前世でもずっと居なかった。 今世でも教育係りがつくことはないだろう。


そして、ペイシガットの暴君ぶりは日に日に酷くなっていた。この間、小動物を池に放り投げて死なせてしまったのだ。さすがに父であるシュバイアンが激怒したが全く反省せずにまた新しい生き物や物珍しい生き物を次から次へと購入していた。そして、すぐに死なせてしまう。

または、逃がしてしまう。そんな無責任な事を繰り返していた。


さらに成年になってからは希少な動物を剥製にしたり食したりと動物の生命をもてあそぶ事をこっそりとしていた。



それなのに、ペイシガットの問題わだいは何故か記事にならなかった。


私やヴィルトゥス兄様や父、祖父母の嘘と悪意に満ちたゴシップはたくさん流れるのに不思議な事にペイシガットと母ピアットの記事だけは称賛する内容ばかりだった。



真実を知る術のない国民は王家から流れるゴシップをたくさんの国民が信じた。

この地味なやり方は意外と影響力があって厄介だ。母の手駒である新聞記者が書く記事に国民が洗脳されてるのだ。


何かいい方法はないのだろうか?




「オリナーシャ様、大丈夫でしょうか?」


教育係りのジョアに呼び掛けられ私はハッとする。いけない。授業中だったのに他の事を考えていた。


「ご、ごめんなさい」


私はジョアに頭を下げた。ジョアは真っ直ぐな眼差しで私の様子を見ていた。心配そうというより分析している感じだ。


ジョアはヴィルトゥス兄様の未来の妃であるアンジェリカ妃の父方の親族だ。20代半ばの若く聡明な女性だ。

長い髪を後ろで纏め、笑うと笑くぼのある魅力的な女性だ。

語学が堪能でとても優秀だ。けれど、それだけではなく身体を動かす事も得意なようでよく乗馬やアーチェリーなどを一緒にした。



前世では、ジョアだなんて教育係りの女性は存在しなかった。ジョアには感謝してもしきれない。

本当に嫌な顔をせずたくさんの事を教えてくれた。そして、とても教え上手で彼女と過ごす時間は飽きる事がなかった。


そんな私が上の空だった事に疑問を持ったのか、躊躇いがちに言葉を紡ぐ。


「もしかして、新聞でしょうか? 確かに最近、オリナーシャ様の事を悪く書く記事が多いですね…」


一発で言い当てられてしまった。


「申し訳ありません。けど、その通りです。私には反論する術がないので新聞の記事を国民全ては鵜呑みにするかと思うと…怖くて…」


私は俯いて答えた。


しっかりしていてもまだ10歳の女の子。悪意ある記事にとても傷ついている。


ジョアの目にはそう映ったに違いない。


私はどうやって毒母であるピアットをの力を削ぐ事が出来るかアドバイスが欲しくて敢えてそう怯えた様に振る舞った。


けど、事が事なだけに安易に相談ができない。下手に打ち明ければ彼女や周りの人間まで巻き込んでしまう。


「オリナーシャ様は何一つ間違っていません。堂々と御自身の為すべき事を取り組めば良いと思います」



意外にもジョアからはあっさりとした返事が返ってきた。けれど、その言葉は私の心を軽くした。

確かに今は下手な事をするより地道に自分の出来る事をやる方が懸命だ。


私は晴れやかな笑顔でジョアにお礼を言った。

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