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転生王女は毒母に立ち向かう①  作者: ミルクランド
4/9

転生王女は毒母に立ち向かう④

祖父と母の小競り合いから数日後の昼下り。


国民の間で、とある新聞記事が世間を騒がせているらしい。



『賢王が王太子妃虐め!? 幼い愛娘と引き裂かれた母の涙』

そんな見出しが紙面を飾っている。

さらに書面では、母の気持ちを代弁する様な自称王家関係者が事細かにペラペラと語る。まるで、その場にいて全てのやり取りを見ていたかの様にリアルに書いてあった。


『王家に決死の覚悟で嫁がれたピアット王太子妃。すぐに御懐妊し、立派な王子2人もお産みになり、昨年には愛らしい姫もお産みになられた。

これらの背景の裏にピアット王太子妃の真面目なお人柄と努力する姿勢が伺い知れる』


『王家に嫁がれたピアット王太子妃は王家での生活にかなり戸惑われた。一番戸惑われたのは子育てだ。

我が子は自身の手で育てたいと強く望んでいたピアット王太子妃。長兄ヴィルトゥス殿下の時は、1歳3ヶ月で親元から引き離されてしまった。

その頃から、教育係り制度には良い印象をお持ちではなかった為に次男のペイシガット殿下には敢えて教育係りを付けず伸び伸びと育てている。

そのおかげかペイシガット殿下は屈託なく子どもらしい笑顔を見せる。ピアット王太子妃が求めていた普通の子育て。それはペイシガット殿下のお姿が答えかと思う。殿下の笑顔にピアット王太子妃の心も癒されたはず。

しかし、昨年お生まれになった第一王女であるオリナーシャ様に教育係りをつけることがこの度、確定した。通常では女児には教育係りはつけない為、この決定は異例中の異例である。教育係りがつくとなると我が子とは言えなかなか簡単には会えなくなる。

この決定は母としてのピアット王太子妃のその想いを打ち砕くものだった……そんなピアット王太子妃を賢王は突然呼び出し、鋭い眼差しで一瞥し無言の圧力を掛けた。慣れない環境で折れそうな心を懸命に奮い立たせていた王太子妃にとってこの振る舞いはあまりにも無慈悲。王太子妃は一言も発する事なく静かに瞳を閉じその場を立ち去りました。』


祖父の臣下である男性が新聞を声に出しながら読み上げた。あまりにも腹立たしい内容だった為に読み上げる声が震えていた。


「何なんでしょうか! このふざけた記事! ピアット王太子妃は御自分の立場を全く理解されてない! 何が敢えてだ! あまりの粗悪さに教育係りから匙を投げられただけのくせに! おかげで、躾してないから手がつけれない駄犬に成り下がっていると言うのに!」


男性は怒りのあまり、新聞を机に叩きつける様に投げ捨てた。彼の名前は、パッセロ・メラタ・テンピオ。

彼は9歳の頃から王家に仕えている。祖父の父の御学友であり長きに渡って王家を見守っている。

祖父にとっては、父の様な存在でとても頼りになる側近だった。


普段はとてもきちんとされた方なのたが今は祖父と祖母と長兄ヴィルトゥスお兄様とその教育係りの男性と私しか居ないのでかなりくだけた様子だった。


彼の事はよく覚えている。前世では、母の行いに色々と正論をつきつけていた。そんな彼を母はとても憎く思っていた。


だから、母がよく使う手段がーーー


「まぁ、懇意にしている新聞記者を使って、陛下を悪者に仕立てあげる印象操作でしような。前回は、初歩的なマナーが身についていないピアット王太子妃に王后陛下が初級者向けのマナーの本を差し上げたのをどういう解釈をしたのか謎ですが王后陛下に虐められたという記事が紙面一面を飾りましたからね」



そう、母は自分の手を汚す事は一切せず、新聞記者を使って相手の印象を悪くする記事をたくさん書かせる。


そのせいで彼は王宮から立ち去る事になった。


ヴィルトゥスお兄様の教育係りである男性がその新聞を拾い、ため息混じりに呟いた。左目に掛けたモノクルで新聞を隅々まで読んでいる。


彼の名前はリュミエール・デスポワール

祖父が名指しで長兄ヴィルトゥスの教育係りに任命したものである。リュミエールの父親が祖父の教育係りだった。だから、とてもお互い信頼している空気が流れている。


リュミエールはとても頭が良い上に武にも長けているまさに文武両道の方で人柄も良く、とても気さくで真面目で誠実な人物である。


ヴィルトゥスお兄様は教育係りのリュミエールと祖父母によって育て上げられたと言っても過言じゃない。


そのお陰で権力や富名声に惑わされる事なく国と国民の事を心から案じる名君であった。

けれど、そのせいで母と次兄のペイシガット達の標的になってしまった。



思えば、前世ではヴィルトゥスお兄様は次期王太子という立場がゆえに思うに意見さえ言えなかった。

お兄様一家ばかり悪く書かれた記事が市井に出回り、国民の印象を悪くさせていた。

全ては母の悪巧みだった事。

けれど、国民は何も知らずただ、母を慈愛の聖女だと崇めていた。裏で王太子妃を苛めている事も莫大な税金を浪費している事など知らずに。



「ピアットが狂っているのは分かっておる。

だからこそオリナーシャも早いうちに母親から引き離す事。ではないとこの娘の人生は最悪なものになる」


祖父であるサヴァン国王陛下が静かにけれど力強く言い放つ。



ええ、本当に最悪でした。

首がもげる程頷きたい。



前世の私の人生は本っっっ当に最悪でした!

母の召し使いでした。

野暮ったい格好のせいで友達一人も居ないし、配偶者はペイシガットの友人で家格がかなり格下の男性。

さらに晩婚で子を産む事も出来ない年齢。

一体、何の為に結婚したのかも分からない。


そういえば、結婚式のドレスも母のお古だった。

結婚の時でさえヘアメイクもさせて貰えなかったのを清貧と美談に仕立てあげたのだ。

ちなみに、母はメイクも髪型もバッチリ決めてきらびやかなドレスを新調していた。そのせいで、主役の花嫁(わたし)より目立っていたから。



前世の私の人生ってつくづく母の引き立て役だったんだとぼんやり思いながらため息が出そうになる。



今の私は祖母ペェスカ王后陛下の腕に抱えられている。すぐそばでヴィルトゥスお兄様が私の頭を優しく撫でてくれた。


撫でてくれるお兄様の表情がとても悲しげで私を案じる眼差しだった。

兄様はこんな幼い時から母の本性を知っていたんだ。ずっと葛藤していたんだろう。自分だって辛いのに私の事まで案じてくれるお兄様。そんな優しいお兄様に前世の私はなんて酷い事をしたんだろう。罪悪感で胸が苦しくなる。



けれど、今は違う。やり直せるんだ。人生を1から。次は、国と国民の為にも信じる道を間違えない。


私はたくさんの教養と人脈を作り、ヴィルトゥスお兄様を御守りする事。


あと、身だしなみにも気を遣おう。さらに、ペェスカ陛下やフローラ王弟妃との関係を深めよう!!


母に立ち向かう為の完璧な王女になろう!


「オリナーシャの教養掛かりはペェスカの縁者に頼もう。適任者が見つかるまではリュミエールに任せる」


「謹んでお受け致します」



リュミエールはソファから立ち上がり、国王陛下に恭しく頭を下げた。



つまり、今の状況は願ったりだ! 私は絶対に完璧な王女になってみせる。


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