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はんなりゆけ。

春ってこう、爽やかでさ

作者: 里野 ゆきこ

春といえば 出会いと別れの季節。期待に胸を躍らせ笑みを浮かべる者、新しい生活を不安に思い涙する者。同じ日々の繰り返しだと考える者。 心情は様々だ。


どの道へ進みどの立場になっても必ずと言って良いほど催されるのは歓迎会。そして


________お花見である。






________________



こいずみ「ま、その季節にしかできない行事ってってダイジよな。春らしいことしましょうや。」



にいざき「いや〜今年も綺麗な桜が咲いたなあ。今までは気づかなかったけど花見ながら食べ飲みするのってこんなに心えぐれるものだったっけ。」




目の前には満開に咲いた桜と男女の団体。男女の団体。会社絡みの団体。老人仲間の団体。男女。




こいずみ「ア~ほのぼの日和にそぐわないこの気持ちはなんだろう~。今日くらい″素敵な出会いがある予感♡″とか思いたかった。いかにも合コンで 今日初めて会いました♡の集団しかいねえよ。 心がイテェ」



にいざき「フッ、まあ見てな。そのうち酒で出来上がってきたヤツらが本性を現し始めるさ。あわよくばワンナイトしたい男、イケメンを拝んで眼福したいだけの女。他になにが出るか楽しみだ。いい酒の肴をみつけたな」



こいずみ「そうね。みんな春のお花の妖精さんに化かされてんだ。酒で潰れていく人間を見てると冷静になれるってもんよ。ありがとう皆、私たちは冷静にイケメンを見定め、本日をもって幸せになります。」



にいざき「感謝感激。さて、明日からラブライフを一緒に過ごすオトコ探すぞ~~~~~」




双眼鏡で辺りを見回しては菓子をつまみ、また見回しては酒を飲む。そしてついに遠くの合コン団体に理想のイケメンを見つけた!




こいずみ「オワァァ!!これはどストライク!!!とんでもないイケメンを見つけたぞ、2対2の男女グループだな。はしゃぎ過ぎず騒ぎ過ぎずそこまで盛り上がってない非常に良い雰囲気だァ。」



にいざき「年上でちょっとクールだけど笑うと可愛い、もっと笑ってほしくてこっちの母性が爆裂する系の殿方ね、わかる。こいずみ好きそうだ」



こいずみ「しかし美男美女しかいねえな、 カップルか?調査が必要だ。 こんなこともあろうかと一応持ってきた麦わら帽子、無駄にならなくてよかった。さ、あの宴の席まで飛んでゆきなさい!」




ヒュルルル、ポス。大当たり。




こいずみ「フリスビー協会も驚きの腕前により帽子ちゃん着地、無事成功。汚れなし。外部損傷なし。報告以上です。回収してきます♡」



にいざき「帰還を楽しみにしております」



______________



こいずみ「すみませ~ん帽子が飛んでいっちゃって~取りに来ました!お楽しみのところ邪魔しちゃってごめんなさ~い♡。みなさんお花見楽しんでますか?今日はお友達同士の集まりですか?」



A乃「いえいえ〜大丈夫ですよ。はいどうぞ、帽子です。こちらのB美ちゃんと私は元々お友達なんですけど、C男君とD太君とは初めてお会いしました。2人はB美ちゃんの職場の同僚さんなんです。仲がいいんだって紹介してくれて」



B美「本当はA乃ちゃんと2人でお花見する予定だったんですけど、せっかくなら人数が多い方がいいかなって私が急遽呼んだんです。ここが友達になってくれたら今度はみんなで遊べますから!」



こいずみ「(なるほど。Myビッグラブ殿方はD太さんというのか。A乃さんかなり美人だし、初対面ならD太さんはA乃さんの事気になっててもおかしくないな。先にフラグ折っときたいしカマかけてみるか…。)



帽子ありがとうございます!そうだったんですかー!すごくイイ感じの雰囲気だったのでカップルでWデートかと思っちゃいました~!!!」




この確信をついた発言によりA乃の「え~!?そんなことないですよ!そもそも初対面ですよ~!?ナイナイありえないです~~~~!」を引き出すことで、D太が一目惚れしている可能性があってもちょっとガッカリさせてA乃の好感度を下げるという情けない作戦である。




D太「ま、A乃レベルだったら俺は恋人になってあげても良いんだけどね」



こいずみ&A乃「…ンっ?エ?」



D太「A乃わりと顔いい感じだし、スタイルもそこそこいいし、まあ最低限の条件は揃ってるからオレの彼女にしてやってもいいかなーって。どうしてもっていうならね」



A乃「あの、D太さん??」



D太「B美が「友達呼ぶからお花見しよ〜」なんて連絡よこしてくるから、どんなヒマな女連れてくるんだと思ってたらまあまあ悪くなかったし。B美もたまにはいい仕事するね」



C男「急に何言ってんだお前。ありえないだろ、酔っ払ってるからってしちゃいけない発言だ」



D太「はいはい、モテない奴はうるさいね〜」



空気が重くなる。ヘラヘラしているD太に対し、C男はドン引き。B美など何が起こったかわからないという顔をしていたが、徐々に怒りに振るえ、拳を握りしめている。




こいずみ「あ、あの、D太さんて普段からこんな感じの方なんですか?」



B美「…いいえ、普段は真面目に仕事をしています。社交性もあるし人に害を与えるタイプじゃないと思っていたんですけれど。」



A乃「今日も来た時からすごく気を使ってくださって、優しくて。おっとりした様な方だったんですけれど…。急に何が起こったんでしょう」




もう誰も笑っていない。こいずみは瞬時に悟った。彼は酒を飲むと本性を剥き出しにする、「飲酒後急激豹変型」の人間だったのだ。暴露されたその姿は、普段穏やかな分周りの人間によりショックを与える。D太の普段真面目な様子からは想像できない姿だったろうに。




こいずみ「(おそらくここは修羅場、戦いの場になる。これ以上イケメンの酷い姿を見る前に去ろう)


そ、そうだったんですね。変な事聞いてすみませんでした。もう行きます。アリガトウゴザイマシター」


________




にいざき「おお、おかえり。どうだった、甘やかしたいクールイケメンの脈は」



こいずみ「爆弾を投下してしまったというか、でもいつ爆発してもおかしくなかったというか、そこは好きになってはいけないというか…」



にいざき「何かを見てきたんだな、お疲れ様でした。さ、他のイケメンを探そうや。私まだタイプのイケメン見つけられてないし」



こいずみ「切り替えが早い。私を慰めろ。今日はもうイケメンはイイカナァ。メンタル部分がちょっと疲れちゃった、酒だ酒。」




にいざきが双眼鏡を覗いている間にビールを飲み干すこいずみ。1時間ほどしてにいざきから「今日は諦めよう」の号令がかかり、いそいそと撤収の準備に取り掛かる。


帰り際なんとなく修羅現場を見ると、B美が酔って寝かけているD太の胸ぐらを掴み怒鳴っていた。C男がそれを宥め、A乃は死んだ目をしている。周りの人達の注目を浴びて、凄い絵面だ。


心の中で南無。と唱えると、こいずみたちはその場を後にした。その後D太の処遇がどうなったのかはわからない。南無。


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