第十四話...異能結界・心に宿りし青い鬼神
遅くなりすいません。後書きに解説(他の作品の説明)があるので、読みたい人は読んで下さい。
魔法陣を描き消そうと脚が魔法陣に触れると、周囲が凍った様に止まった。視界が白に統一され、脳内に「遅かった」この言葉が浮かんで、何度何度脳内再生され「貴方は気になりませんか?」と無機質な声が聞こえる。
思い出したくもない声。過去の先生の声にそっくりで、嫌になる。「何が気になるんだ?」と頭の中に疑問が浮かぶと「異能が無い世界ですよ」この言葉を聞いた瞬間に、一瞬で頭が白く成った。
暗闇の世界が光に包まれ景色が変わり、見覚えのある男性と白髪の女性が子供を連れてこちらに歩いているのが分かる。
見たとこ美男美女の夫婦が、子供を公園に連れてきたと言う事だろうか。
「走るなよ、すぐ転けるからな」
「転けちゃうよ、転んだら痛い痛いだよ」
「大丈夫だよ!」
「病み上がりでも無茶をするのは誰に似たんだか」
「誰に似たんでしょう?ふふ」
その二人は幸せそうで、理想の家族と言った所だろうか。十分遊んだ所で、黒髪の男と金髪の背が低い子が子供を連れて来て、楽しく話をし始める。
この景色を、何処かで見た気がする。
異能がなければ、公園で遊んで、夕方帰る事も出来たかな。
俺はこの世界では何をやってるだろう、案外子供とかいるいるのかな。
「黒君の美鳴兎君も元気だね」
「衣明の所もじゃない?」
「は!?」
まさか、ここは異能がない幸せな世界。
違和感がある。
「気付いたかな?」
また聞こえる声だが、何故か楽しそうに聞こえる。
「汚物はこの世界にはない、幸せな世界だよ」
感情がある様に聞こえる、聞きたくない。
「どういう意味だ?」
「異能に出生が関わっている人間は存在しない、君の義理の弟さん二人とか。だってあれは長男が異能を遺伝していれば生まれてない人物。汚物だよ」
「違う、この世の人間に汚物何て存在しない」
「何も違わない、この世界には必要ないから消えたんだよ。全ての希が叶った世界だよ?」
「巫山戯るな!こんなのは偽りの幸せだ」
「ある男は災害に巻き込まれず、本当の親と兄弟と暮らせた。妖怪として生まれてきた悲しい生き物は、弟達や親に大切にして貰えた。名探偵と女優は限られた寿命ではなく、本当の寿命で死ねる。他にも色々この世界には幸せだよ、だってこれは今言った人達の幸せなんだから。これが幸福」
そうだ、異能何てなかったら......今頃皆殺し合いじゃなくて、楽しい高校生活を送って、凄い奴らだから有名に成って慕われて、死後も有名な人物として語り継がれる逸材達だったんじゃないか?
俺が思考する度、何度も何度景色が変わり、幾千幾万の他人の人生を見せられた。
大きく揺れた大地、親の目の前で泣き崩れて死んで行く子供。
ボロボロの服を着た大人が「おにぎりを食べたい」の一言で倒れ、二度と立ち上がる事がなく、大きな波に飲み込まれ、瓦礫に潰れる人間達。
火砕流に襲われ、何度も何度も何度も人が死に誘われる。その後に人達の幸せを見せられ、必要ない者達が居ない世界。
手を伸ばしても俺はあ居ない、世界に居ない。助けられない、でもまだ生まれて来た罪悪感は消えない。
奴は感じていた、だから...今戦っていた奴の方がヒーローに向いているんじゃないか?俺は殺しが向いてて、奴は違う世界があれば良い人になった。
その世界を見た、この世界の不純物は......ただ一つ。この俺何じゃないか?
ナイフはある、必要ない世界は俺の世界。
なら、消すのが"正義"。消さないのが"悪"なのではないか?気っとそうだ、そうでなければならない。
何度も言われた、オレの存在価値。売られた俺の、無意味な存在。だがこの世界にとっては、不純物として価値があってしまう。
なら俺が取る事ができる最前の作とは、俺自身の消滅。
「灰神零人の消滅」
ナイフを掴んで、ナイフに突き刺す瞬間、気付く。ナイフが動脈に刺さらず、微かに声がする。
押し込もとするが、ナニカ見えない手に止められて自殺する事が出来ない。
眼をこらすと、髪が水色の何処か懐かしい少女が目の前に立ち、俺のナイフを血を流しながら止めていた。
理解が出来ない。
「何だ、何で止めるんだ?......地海!」
「やっと、気付いてくれた」
「君が死ねば、私が消える必要は無くなるの...」
「聞いていた通りって、ことなのか」
「......」
「理由が解らない。俺は疎まれて産まれてきた、だから死んでも構わない。生きていい理由がない」
唇を強く噛み締め、血を流しながら下を向いて、涙を貯める少女にできる事は...これが最後なんだろう。何故かそう、思う。
地海のやりたかった事は分かる、施設で生き残った最後の二人だからだ。
あと数人居たんだ、ストレスとか虐めとかで皆が死んだ。守りたかったんだ、気っと、自分を犠牲にしてでも。
「なぁ、お前はこんな死に方を望んだのか?」
「嫌だよ、君の為じゃなきゃ死にたくないよ。私にも大切な友達とか、拾ってくれたお父さんとかいるの。嫌だよ!」
「どうして欲しい?」
「どういう...こと?」
「「察しろ」」
「「「言えよ、お前が今何をしたいか。して欲しいか、叶えてやる。この器に頼る、偽物の世界を、更に偽物の世界で上書きする事もしてやる。どうだ?」」」
「助けて...私を...皆......助けて!」
「分かった。お前をこの世界から、奴らから救ってやる!」
この世界が本当に幸せなのか?少数の人間の存在が消され、多くの人間が笑ってる。この世の命は、価値なんて同じなはずだ。
誰だって幸せになる権利がある、存在を消されて生きる事さへ、だれもが権利も何もかもを失うこと何て俺には許せない!
だから、俺は生きて、まだ自身の価値を証明する。
「久しぶりだな、これを使う何て」
「これ?」
「覚醒の瞳」
眼に力を入れ、心のストッパーを外して行く。視界が変わって暗闇に、中心には黒い機械のキューブが添えられている。キューブは扇風機の様な物にあおがれ、冷やされている。
何度も何度もガチャガチャと動いて、形を変えている。形を変える際に、ドクンっと一瞬心臓の様に跳ね、膨らんでいる。
「そして」
キューブに掌を向けるとキューブは変化し、元の地球概念空間にどもる。戻る一瞬「あと、1回」とボヤけた数字が浮かぶ。
地海の骨や筋肉、服までもが透明に見え、一人一人が持つオーラ量などが細かく分かる。
「目の色が...虹に」
「「あんま好きじゃないから見ないでくれないか?」」
「ご、ごめん」
「「怒ってはねぇよ」」
「その眼って?どうするの?」
「まぁ、この世界はエネルギーを吸収を出来る場所は存在しない。だから、無限のエネルギーを持つこの瞳で異能結界を作る」
「あんな高等技術できるの!?」
「「出来なきゃここから逃げ出す事が不可能なんですけど」」
「......何時から?」
「......施設にいる頃から。早くやるから」
ナイフが壊れない様に補強し、全身に強化してから異能結界を発動できる程のエネルギーを込め、地面に突き刺して足で踏み付ける。
ナイフから世界が書き換えられて行き、あっという間に世界が変わる。
縦横斜めにビルが並ぶ、簡単に言えばビルしか存在しない世界。
ビルとビルの幅は51m、ここならトリッキーに動いたら他のビルに落ちるまで常に空中だ。
「心に宿りし青い鬼神」
「す、凄い。私達、今ビルの窓に立ってるけど、大丈夫なの?」
「「ビルの横、今オレ達が立ってる窓ガラスがある所に重力が存在している。まぁ物理法などないにも等しいが、ビル一つが地球だと思ってくれ」」
「これからどうするの?」
「「お前の概念払ってさっきの男を倒す、ただそれだけだ。ちょっと眼を瞑ってな」」
ナイフを地海に当たらない様に振るい、地海の身体に植え付けられた概念を切り裂く。
地球概念が死亡と同時に異能結界の外側の地球概念空間が、罅割れて人々が泣け叫びながらクルクル回って、血を流して死んで行く。
そんな光景を地海に見せたりする訳には行かないので、聞こえる前に耳を塞ぐ。完全に地球概念空間が消滅すると胸が何故かグッと重くなる。
地海をお姫様抱っこして、異能結界を一時的に解除する。
「さぁ、決着付けようか」
「雰囲気が変わったな」
「連十さん......」
「知り合いか?」
「うん......」
「俺の計画には必要だからな、その為に死んで貰うんだ。少しは敬意を払う必要があると、思ったんだ。今と成っては夢も潰され、俺には何も残ってない。後は俺の我儘だ!!」
「俺はお前を止める!」
異能結界ってなんぞや?Byダブルライフ魏皤孁錷の異能結界・夜影曲第一番_白蝶覇調より...異能結界、それは魔術と結界術、異能の自己的解釈を広げた先にある奥義。本来の結界術は自身の霊力_霊子で霊子を鎖状に編み、周囲を囲む術。
異能結界の場合は霊子ではなく、異能(炎など)を鎖編み、霊子1%以下で編む事で自身の異能をフル活用できる空間を造り出す結界術と異能の極致。
結界の内側は自身の心象風景が具現化され、結界内で自身が決めたルールを定め、内側にいる敵に対して行動を縛る事が出来る。
結界内で自身の心が映し出される理由は、異能が自身を映し出す鏡だからと古くから語り継がれ、5千年以上経った現代でも最新の使用者の耳に入るのは、使用が少なかったからなのか、それとも異能の確信を得たからなのか。制約も自身に縛りを掛ける事で強くなるのは思い込みのプラシーボ効果に似ている。
制約は水鉄砲が水を遠くまで飛ばす為には銃口を細くする。そんな感じ。さらに制約を付ければ異能結界も強化されるが、圧倒的なポテンシャルが必要。
使用頻度は1回使えば疲れるので考えなくても良いが、毎度の戦闘で使うと異能から結界条件を考察or対策され、切り札の一枚を失う事になる。
一番最悪なのが結界を見せた相手が逃れた場合、自身の能力の全貌が割れる。それは死を意味すると同じ、最悪を避ける為には縛りがどれ程重くとも結界を強化し相手を確実に殺す。