南天の赤と白
小片詩 -かけらのうた-
おまけの欠片
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『南天の赤と白』
-南天は飾るとき、赤よりも白を上にするのが正式だ-
-だけどな、木は白より赤の背が高い-
そう言いながら、
山の親父は南天を切って葉や枯れた枝を落とし、
花瓶に差しやすいよう、飾りやすいように形を整えてくれる
-大根は凍っているが、
そのまま土に埋けて置けば凍ったままなら大丈夫だ-
-ジャガイモは凍らせないようにすれば、
萎びた方が味が良くなる-
-白菜もそうだ
凍らせなければ何ヵ月もそのままで食べられる-
山の親父はそう言って、
抱えきれないほどの、山で取れた野菜を持たせてくれた
山からの帰り道
車を運転しながら、言葉少なに語った山の親父の言葉を思い出し、
想いが込み上げて、胸が一杯になる
人に生かされている
人からいただいたものに……
生かされているのだ
さまざまな想いたちに……
一人でただ生きているわけではない……
さまざまなものから、たくさんのものをいただいて生きている
いただけたいろいろな想いで生かされている
そんなことを思いながら、
山ほどの想いを抱えて、所々が凍った山道を下る
ひさびさの冷えきった山の空気と、
たくさんの想いを感じた日
冷たく澄んだ空気と、熱い気持ちをいただけた
そんな日のことだった
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〈南天の赤と白、山の親父さんからいただいたものです〉