閑話 少し位良いよね?
2月16日、今日は大学の合格発表。
私は妹の彩也香と一緒に発表を見に来ていた。
「やった!」
「やったね!」
自分の受験番号を見つけ手を取り合って喜ぶ。
苦しかった受験勉強がようやく終わり、明るい未来が見えた瞬間だった。
「「「「おめでとう!」」」」
「...ありがとうございます」
いつのまにか私達の周りに沢山の人が取り囲む。
彼等は一体誰だろう?
「俺達はテニス愛好会です、是非入会を!」
「私は演劇サークル、貴女達双子よね?
珍しいわ、こんな可愛いなんて」
「俺達は...」
どうやら大学のクラブ勧誘をしに来た人達みたいだ。
次々と名乗られて私と彩也香はその迫力に圧倒されてしまう。
「これ案内です、良かったら読んで下さい」
「俺達のサークルは今日でも大歓迎だぜ」
「いや...あの」
困惑する私達を他所に彼等は解放してくれない。
早く帰って両親に報告したいのに。
「ねえ、少しだけ顔を見せるだけで良いから」
1人の女性が私の腕を掴む。
彼女は確か演劇サークルの...
「...彩也香」
妹を見ると静かに微笑みを浮かべ私を見ていた。
「行ってきなよ」
「え?」
「今日まで頑張ったんじゃない、少しくらい良いんじゃない?
お父さんには上手く言っといたげる」
「そんな...」
予想外な言葉に混乱が広がる。
だって凌空に会えるのを夢見て今日まで頑張って来たのに。
「ほら妹さんも」
もう1人の人が彩也香の腕を掴もうと手を出した。
「いえ、私は良いです」
「そんな事言わずに、直ぐ終わるから」
「ごめんなさい、私は報告しないと....」
彩也香の声が小さくなる。
妹は昔から押しに弱い、仕方無いけど。
「少しだけですよ」
「...姉さん」
「大丈夫よ、ちょっと位大学生活を楽しんだって」
「...もう」
こうして私達は演劇サークルへ入る事になった。
沢山の先輩達から楽しい話を聞き、暗闇だった私達の心に明るい日が射すのを感じていた。
結局夜遅くまで話をしてしまい、帰ってから両親に叱られた。
『凌空君に恥ずかしくないのかっ』て。
凌空、仕方無いのよ。
早く帰って来ないあなたが悪いんだから。




