おわりはじまり
5月の爽やかな風が、僕の頬をつたって、するりと抜けた。
何もかもが、新鮮だった。
川のせせらぎも、樹々のざわめきも、時折聞こえる、鳥の囀りも。
陽の光でさえ、優しく、微笑んでいるように見えた。
誰もいないけど、みんながいるこの世界で、僕は、僕になった。
けど、そこには君がいた。
確かに、君がいた。
僕にはわからなかった。
君がどういう存在で、僕にどんな影響を与えるのか。
でも、今になって考えてみると、全てが君の言う通りになった。
蝶も、草木も、小さなものから、大きなものまで、全てが君の思い通りになった。
そして僕の世界は、崩れ始めた。
川が、樹が、鳥が泣いていた。
太陽は怒った。僕は傷ついた。
みんな傷ついた。