第6話 悩み相談!
「かんぱ〜い!」
あれから数分後、アメリとセニアは会社近くの
居酒屋に来ていた。
セニアおすすめの居酒屋らしく、よく来るのだそうだ。
人気のお店なのだろう、店内を見回すと確かに席は
全て埋まっていた。
「すみません先輩、いただきます」
アメリはビールではなく、レモティーを頼んでいた。
「どんどん頼んじゃって!でも、ビールじゃなくて
良かったの?」
「はい。ビールはちょっと・・・・・・」
「あっ、分かったアメリちゃん下戸なんでしょ?」
「まぁ、そんな感じです」
アメリは顔をやや下に向けながら苦笑し
レモンティーを口に含む。
市販のものよりほのかに苦く、しかしながら
後味は少し甘かった。
「美味しいです、何杯でも飲めちゃいます!」
「そうでしょ!私もこの前飲んだんだけど
お酒だけじゃなくて、ノンアルのドリンクも
美味しい所が他のお店より1歩進んでるのよね〜」
セニアは他にもおすすめのメニューを教えてくれた。その中からいくつか選んで頼んだところで
セニアが話を切り出す。
「それで天使ちゃん、なにか悩みがあるみたいだけど?」
「はい。仕事でロナちゃんとあまり仲良くできて
なくて、私頼りないのかなって不安になって
きて・・・・」
「なるほどね」
ビールを1口飲み、頬杖をつきながら話す。
「きっと、緊張しちゃってるのよ。
天使ちゃんは初めて仕事やる時どんな気持ち
だった?」
「なんていうか、ミスをしないようにしてました。
周りに迷惑をかけちゃいけない、ミスをしたら
周りに嫌われちゃう気がして」
「そう。きっと、ロナちゃんも同じような気持ちで
働いてると思うわ。私に挨拶をしに来た時とても
熱心に仕事の仕方を聞いてきたの。メモを沢山
とって自分の机に戻った後も何回も読み込んでた」
ロナやアメリのような真面目な人間は集団で何かをやる時周りの気を損ねないようにできる努力は何でもしようとする。
しかし、全ての人に気に入ってもらうことなど不可能だ。
そして、それを気にしてさらに努力をしようとする。でもそんなに頑張っていたら体は壊れ、ついには心も壊れてしまう。
そうやって壊れた心は直ぐには治らず
他人を拒絶するようになってしまう。
「このままじゃ、いつか必ずロナちゃんも壊れてしまうと思うの。だから、壊れる前に天使ちゃんも気にかけてあげてね?私たちが何かをやったからと言って
ロナちゃんの心が満たされるわけではないと思うけど
先輩として放っておく訳にも行かないから。」
セニアは力なく笑いまた1口ビールを飲む。
「なんか、柄にもなく語っちゃったわ。
さぁ、飲み直しましょ!」
「お待たせしましたー。ご注文のお品です」
頼んでいたものが届き、それを食べながら
世間話をしつつ夜を過ごす。
時間は流れ、窓から見える光も徐々に減って行った。
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翌日、特に何も無く時間は過ぎていく。
変わったことといえば昨日のような快晴とは
打って変わって、強めの雨が降っていることだけだ。
湿度が高く最近は気温も上がってきたため社内では
エアコンが稼働していた。
「ロナちゃん、仕事丁寧だし早いね!
私も頑張らなきゃ!」
「はぁ、ありがとうございます・・・・・・」
昨日セニアと話したことを思い出し、アメリはロナにできるだけ声をかけながら仕事をしていた。急にそんなことを始めたアメリをロナは不思議に感じていた。
「あの、どうしたんですか急に。もしかして
この雨でおかしくなったんですか?」
「え、いや大丈夫だよ。だからそんな可哀想
なものを見るような目をしないで。」
どうやらロナに対してあまり効果はなかったようだ。ロナの心配をするつもりが自分のことを心配されては意味が無い。それでもアメリは声をかけ続けた。
「あんまり無理しちゃダメだよ〜。
休憩ちゃんと取ってね!」
「私、無理なんかしてません!」
ロナの大きな声が部署内に響く。
近くの席の何人かがこちらを見ている。
アメリはロナをなだめセニアの元へ行く。
「先輩、私ロナちゃんの機嫌を損ねちゃいました。」
「こればっかりは時間の流れに任せるしかなさそうね・・・・」
「分かりました・・・・」
2人とも自分の不甲斐なさを悔やんでいるようだった。
落胆しながら自分の席に戻ると固定電話の着信が鳴っていた。どうやら、製造部からのようだ。
一呼吸置いてから受話器を取る。
「はい、営業部天使です。え!?分かりました直ぐに行きます!」
「どうしたんですか、先輩」
ロナが呆れたように、聞いてきた。
「ロナちゃんが作った書類に不備があって転生希望の方に間違ったスキルを渡してしまったっていう
報告が・・・・」
「え?」
ロナの顔がみるみる青ざめていった。