第27話 待機施設!
遅れてすみません、今後このようなことが増えると思います。
12月某日
この日アメリは、転生希望者の待機施設を往来していた。先日までの他国の支援は神の仕事にも影響が出ているようで、資料の作成ミスが多発していたのだ。
施設内は暖房が効いておりアメリはやや暑く感じていた。
いつも通り受付で対象者の部屋番号を教えてもらい1人ずつ回っており、最後の1人の部屋へと入った。
「失礼します、天使と申します。少しお聞きしたいことがあるのですが、よろしいですか?」
この部屋にいたのは20代前半くらいの女性だった。
「話は神様から聞かされています。スキル?のことを聞きに来たんですよね」
「はい、そうですけど・・・・」
彼女の返答に少し疑問を持つ。というのも
これまで対応してきた希望者にアメリが
訪れることを知っていたのは、1人もいなかったからだ。そのことを察したのか彼女は訳を話してくれた。
「実は神様に質問された時に異世界で暮らすか、天界で暮らすか答えを出しきれなくて、考える時間を頂いたんです」
(神様のミスじゃなくて、意図的な事だったんだ)
アメリは聞き方を変え、まず彼女から話を聞くことにした。
「もしよろしければどう言ったことでお悩みなのか教えて頂けませんか?」
彼女は一瞬、躊躇うような表情を見せたがゆっくりと口を開き話し始めた。
「異世界に転生したとして、やりたいことは決まってるんです。花屋を開きたいなと考えてまして」
「お花が好きなんですか?」
アメリが尋ねると悲しげな顔をして、窓の外を眺めながら小さく首肯した。
「私付き合ってた人がいたんです」
そう言って彼女は過去を話し出す。
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私と彼は大学で出会いました。山の中にあるキャンパスには、その広大な土地を活かした花壇が設置されていて、私は毎日と言っていいほどそこに通っていました。
そんなある日彼が私に話しかけてきたんです。
「あの、花、好きなんですか?」
彼は私に話しかけるのが恥ずかしかったのか
目線を外し少し震えた声をしていました。
「えぇ、あなたも好きなの?」
「は、はい」
2人とも花が好きということで意気投合して、気がついたら彼氏彼女の関係になっていました。いつも通り二人で花を眺めていたある日彼がこんなことを言い出したんです。
「一緒に花屋をやってくれませんか」
「それってプロポーズ?」
突然の提案に少し驚いたけど、私はそんなことを言って彼をからかったりもしました。
「い、いや別にそういう意味は無かったけど・・・・。いずれそうなれたらいいかなとは思ってたりもする」
やっぱり彼は慌てながら言いました。最後の方は
彼が小声になって風も吹いたから聞き取れなかったんです。
「ごめん、最後なんて言った?」
「え、いや、なんでもないから気にしないで。それでその、やってくれますか?」
彼は私の顔を伺いながら再度聞いてきました。
この人となら楽しくやれそうだと思えたから私は快く受け入れたんです。
「うん、よろしくお願いします」
私の返答を聞いて直ぐに彼は子供のように喜んでいました。その姿を見て私は頑張ろうと思えたし、ずっとそばにいたいと思いました。
それからはお店を開くために必要なことを調べて、お金を貯めるためにバイトを始めたんです。
ちょうど近所の花屋さんが募集していたから
色々と教えて貰えて、学生生活との両立は大変だったけど、彼と一緒ならどれだけやっても辛くはなかったです。
大学を卒業してから1年間はこれからのことも考えて
バイトを続けました。
そしてやっと開店の準備が整った、これからも好きな花に囲まれて、好きな彼のそばで働けると思うと高揚感を抑えきれませんでした。
けれど、彼は、私と開店前の店を残して居なくなってしまったんです。交通事故でした。
彼は花束を持っていて現場には花びらが散らばっていたそうで、警察が持ってきたのは花束に入っていたという銀色のリング。
光を反射したそれは、無慈悲にも輝いていました。
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「そこから約2年、何とか1人で店を経営していたけど、赤字が続き店を閉めざるを得なくなってしまったんです。そして何もかもを失った私は自ら命を絶ちました」
「そうだったんですね」
彼女は尚も悲しげに窓の外を眺めている。そんな彼女の心を映すかのように空は曇りやがて雨が降ってきた。
「彼が頑張ってくれたおかげで出来た花屋も潰してしまって、頑張ることを諦めた私が異世界でまた花屋をやりたいだなんて、そんな我儘なことが許されるはず無いんです。
良く考えれば、最初から天界で暮らす以外に選択肢はなかったんですね」
そう言って、天界で暮らす前提で話を進めようとする彼女に、アメリは思ったことを言う。
「あの、余計なお世話かもしれませんが異世界で
暮らした方がいいと思います」
「え?」
アメリの提案に困惑する。本来転生希望者の望み通りにする立場の人間がこんなことを言い出したのだから当然のことだ。
「旦那さんが居なくなってしまっても、2年も続けられたなんて凄いことだと思います。頑張ることを諦めたなんて思わなくていいと思うんです。1人でできることには限りがありますから。それに・・・・」
アメリは1拍置いて、続ける。
「それに、旦那さんは花が好きなあなたを好きに
なったんですよね?それなら、花と関わりを持ったままの方がきっと旦那さんも喜ぶと思いますよ」
アメリのその言葉を聞いた彼女は、ハッとした表情のまま回顧していた。
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とある花畑にて ───
「ねぇ、もし私が花を好きじゃなくなったって言ったらどうする?」
私と彼が出会って今日で1年。
ひまわりに囲まれた通路の真ん中で、私は彼の顔を覗き込みながら、少し意地悪な質問をする。彼は困るかと思ったけど、いつもの優しい顔で答えてくれた。
「僕みたいなのが君と出逢えたのは花のおかげなんだ。きっと花がなければ君に声をかけることも出来なかった。君と僕を結んでくれた花を僕はずっと好きでいる。だから君にも花を嫌いになって欲しくないかな」
最後の言葉を言う時だけ、優しい彼の顔に
真剣さが垣間見えたのをよく覚えている。
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「確かにあなたの言うとおりかもね。それにもしかしたら向こうの世界で彼と再会出来るかもしれないし」
天気が回復するにつれ、彼女の表情も和らいでいった。
「それでは、転生する方向でお話を進めさせていただきますね」
「えぇ、スキルの内容ですよね」
彼女は少し考えてから、希望の内容を決めアメリに
伝える。
「日本で咲いていた花を向こうでも育てられるようなスキルをお願いしたいんだけど、大丈夫ですか?」
「はい!可能ですよ。自由に花の種を生成できると
いうスキルでよろしいですか?」
「それでお願いします」
彼女の承諾を得てアメリは資料に記入する。
「本当にありがとうございました。あなたとは歳が
近そうだったから、話しやすかった」
記入を終え部屋から出ようとするアメリに言う。
「いえ、お役に立てたなら良かったです。
花を育てるって大変な事だと思いますけど頑張ってくださいね。努力はきっと誰かに届くと思いますから。努力が"実る"って言いますし」
「その考え方素敵ね。彼と再会できることを祈りながら頑張るわ、ありがとう」
彼女の再度のお礼を聞いて部屋を後にする。
(2人が再開できるといいな。私も頑張らなきゃ)
そう思い、たくさんの資料を抱え受付へと向かった。
唐突にラブコメを書きたくなってきた。




