第26話 社中泊!
12月に入り寒さもより増している頃、営業部はいつしかのように人の往来で騒がしかった。
他国の転生者が日本支部に転生されてきているのだ。
前回は1つの国の転生装置が壊れたことによるもの
だったが、今回はそれが3カ国分となり負担が増えて
いるのだ。なぜこんなにも日本支部に回されているのかといえば、各国の神の中でも日本支部の神が1番実績を持っているからである。
本来なら誇るべきことであるが、社員からすれば
仕事が増えるという複雑な感情を持たざるを得ない。
「終わる未来が見えない」
始業してからわずか1時間ファインは既に諦めモードである。
「だとしてもできるだけ終わらせておかないと、後で苦しんでも手伝ってあげないよ?」
と、アメリはいつも通り業務を進める。
「酷いな〜、私たち友達じゃん!」
「え、そうだったの?」
「酷いな・・・・」
「嘘だよ。少しは手伝ってあげるけど、できるだけ
自分で終わらせること、分かった?」
「はーい」
子供のような返事をした後、ファインはやる気を取り戻したのかテキパキと業務を進めていく。この忙しさではアメリが手伝えないことは明確であるのに、それに気付かず陽気に業務を行うファインであった。
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できるだけいつもより早いペースで業務を進めつつも、減らない資料に囲まれながら定時を迎えようと
していた。
「疲れた、もう、動けない」
ファインが掠れた声で言いながら、バタッと机の上に頭を置く。
続けて
「もう家まで帰る気力も残ってないよ。はぁ、どうせ明日もこんな感じだろうし、いっその事会社に泊まっちゃいたいな」
「それはさすがに無理でしょ・・・・。お風呂とかどうするの?」
「知らない?この辺に新しくスーパー銭湯できたんだよ。オープンしたてだからきっと割引価格で入れちゃうよ」
このような情報に抜け目が無いのは、さすがファインと言うべきであろうか。
そんなことを思っていると、セニアが2人の元へやってきた。
「お疲れ様2人とも」
「「お疲れ様です」」
なんの話かと思っていると、セニアが口にしたのは
驚きの内容だった。
「今日はもう帰宅していいわよ」
「え、どうしてですか?」
残業する気満々だった2人にとっては、信じ難い言葉であり、かつ救いの言葉でもあった。
「まだまだ処理しなくちゃいけない資料は沢山あるから、残業してもしなくても大して変わらないからだそうよ」
「先輩、それは聞きたくなかったです」
残業無しに喜んだかと思えば片付かない資料の存在に悲しむと、感情の変化が激しいファインだったが
今は残業無しをとことん喜ぶことにしたようだ。
「そうと決まれば天使ちゃん!早く帰ろ」
「あ、ごめん。私ちょっと用事があるから、先に帰っていいよ」
「そっか、じゃあまた明日ね」
そう言ってファインはそそくさと荷物を準備して帰宅する。
「天使ちゃん、用事って?」
ファインを見送ったあと、セニアがアメリに問う。
「ちょっと神様に聞きたいことがあって」
「そう、それじゃあ私もお先に失礼するわね。
また明日」
「はい!お疲れ様でした」
営業部の外まで見送った後、荷物をまとめて社長室へと向かった。
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「失礼します、突然すみません」
部屋に入ると神はデスクでまだ何かをしているようだった。
「あぁ、君か。どうしたんだい」
神はその手を止め、しっかりとアメリの方を見る。
「今日は少しお願いがありまして。実は他国の手伝いをしている間だけ、会社に泊まれないかなと考えているんですが」
先程ファインと話した内容、主に銭湯に現実性を
感じたアメリは、ダメもとで頼みに来たのだ。
「いいとも、自由に使うといいよ」
「え?いいんですか?」
あっさりと了承を得た事に驚き、頼んでいる側の言動としては少しおかしいかもしれないが、重ねて確認を取った。
「あぁ、それよりどうやって寝るつもりなんだい?」
「そうですね、おそらく寝袋を用意して寝る感じになると思います」
「そうか、それなら営業部の近くに会議室があるからそこを使うといいよ。机とかどかしちゃって良いから」
「ありがとうございます!」
アメリが礼を告げると、神は声のトーンを一変させ「ところで」と別の話題を切り出す。
「最近、悪魔の行動が活発化しているのは知っているかね?」
「は、はい。前回ヘルプに入った時に教えていただきました」
突然の話題に戸惑いながらも答える。
「じゃあ、その事について何か知っていたりするかい?」
「すみません、特には」
「そうか・・・・わかった、ありがとう。引き止めてしまって悪かったね」
「いえ、大丈夫です。それではお疲れ様でした、また明日」
部屋を出る前に一礼をしてから、社長室を後にする。
(悪魔たちの活発化か。生きるためとはいえ、一体どうしてこんな一気に行動し始めたんだろう)
アメリは、自分なりに色々と考えながら帰宅したが
その答えが出ることは無かった。
暑い




