第25話 平穏 2
部署内が何やら騒がしかった。
「オルデさん!」
普段ならここにいない者の声に驚き声のした方へ
振り返る。
「天使君、どうしてここに」
「良かった、無事だったんですね」
天使君は僕の姿を見るなり、ほっと一息ついて
安堵していた。状況が呑み込めない僕は再度質問を
する。
「それが、今日地上整備に行った方のほとんどが
悪魔と接触して負傷したらしいんです。」
「それは本当かい!?」
どうやら悪魔の活動は予想よりはるかに活発化して
いるようだ。そんなことを考えながら
再度天使君の話に耳を傾ける。
「その方たちの看病のために各部署から数名ほど
ヘルプが呼ばれたんです。それで、私もここに」
「そうだったのか、ありがとう」
お礼を告げて、天使くんが教えてくれた負傷者が集められている部屋に向かおうとする。
が、天使君に呼び止められた。
「オルデさんも、怪我してるじゃないですか!」
左腕の怪我を見て天使君が慌て出す
「このくらいなら後でも大丈夫さ。ただのかすり傷だよ。そんな事よりも今はみんなのことが心配だ」
「でも・・・・」
そう言って、下を向いてしまう。
天使くんの心配を取り除くためにも、ここは折れて
おこう。
「わかったよ、それじゃあ絆創膏だけ貰えるかい?」
天使くんが救急箱のようなものを持っていることに
気づき、提言する。
「はい!ちょっと待ってくださいね」
廊下に設置されているベンチに救急箱を置くと、中から傷口に適した大きさの絆創膏と消毒液を取り出す。
それを受け取ると、怪我をした左腕の袖をまくり消毒から始める。
想像よりも傷口が大きかったのだろうか、天使くんが一瞬困惑した顔を見せる。
「後で、ちゃんとした処置を受けてくださいね」
「分かっているよ、ロナにも心配されそうだからね」
話しているうちに絆創膏を貼り終え、改めてお礼を
告げてから目的の場所へ向かう。
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部屋には壁にもたれかかっているものもいれば、床に寝かされ痛みを叫んでいる者もいた。
最初に指揮を執っているであろう者に話を聞くことにした。
「それぞれの侵食への対処はどうなっているんだい?」
「オルデさん、無事でしたか!」
「あぁ、なんとかね。それで?」
「侵食が進んでいる者から順に手当をしていますが、あまりにも人数が多いために魔力消費が激しくて。
術者は今、魔力飲ゼリーを飲ませて回復させています」
「そうか・・・・。ここは任せていいかい?」
「もちろんです」
できることなら侵食の処置を手伝いたいが、僕には
回復魔法が使えない。製造部で作ってもらうにしても一日はかかってしまう。
処置を任せ、僕は神様へ報告しに行くことにした。
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「失礼します」
ドアをノックし社長室へ入る。
「君か、オルデ君。要件はなんだね?」
やはりというか、神様は至って冷静であった。
「少し報告しておきたいことがありまして。書類でも記入はしますが、出来るだけ早く報告しておいた方が良いことかと」
「ふむ、では聞こうか」
僕は神様に促されて来客用のソファに座り
報告を始める。
「最近悪魔の行動が活発化していることはご存知かと思います。そして今日僕が接触した悪魔たちが妙なことを言っていたんです」
「ほう、妙なこととは?」
「奴らはどうやら"レジスタンス"という集団を作り、何者かの指示によって行動しているようなんです」
「なるほど、いつの間にそんな集団がてきていたとはね」
神様は「うーん」と唸りながら腕を組んで考え込む。
少しして、
「少々危険かもしれんが、1度悪魔界の者と会合を開くことにするよ。なにか詳しいことが分かるかもしれないからね。報告ありがとう、あとは皆のところで声をかけ続けてあげなさい。
君の声を聞いて希望を持てる者もいるだろう」
「恐縮です」
僕は立ち上がり、社長室を後にする。
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それから4時間後
回復術士たちの活躍により、ようやく全員の処置が
終了した。侵食がだいぶ進行していたものは後遺症が残ってしまう可能性があるため、天界に1つしかない
総合病院へと運ばれていった。
(最近行動の活発化が異常だ。
奴らは一体何を考えているんだ)
「お兄ちゃん!」
突如後ろから物凄い勢いで抱きつかれる。
「痛い痛い」
「良かった、なかなか合流出来ないから心配したんだよ」
そう泣きそうな声が背中に掛かる。
僕はロナの方へと向き直る。
「大丈夫だよ、さぁ帰ろう。今日は全員に帰宅の指示が出てるから」
僕達は荷物をまとめて会社を出る。
この、心配や不安といった感情も次第に薄らぎ
1週間、1ヶ月後にはきっといつも通りの日々を送るのだろう。平穏は突然壊れ、やがて修復される。
遅れてすんません




