第18話 夏期休暇! 6
「失礼いたします、夕食をお持ち致しました」
扉の向こうから従業員の声が聞こえる。
セニアが部屋の玄関に向かう。
「ちょうどいい感じにお腹すいてたから
ナイスタイミングだね」
ファインがアメリに話しかける。
「そうだね」と軽く返事をして、机の上に置いてあるものを片す。
するとセニアが数人の従業員と共に部屋の中に戻ってくる。その従業員達はお盆の上に夕食を乗せ、運んで来た。
白米、味噌汁を初めとした和食中心の夕食だった。
その中でもひときわ存在感を放っていたのが、大きな船に盛り付けられた刺身だった。
「こちら、アタウミで取れた魚を使用しております。釣り上げてから当宿に仕入れられるまでの時間が短いため、とても新鮮な状態でのご提供となっております。どうぞごゆるりとお楽しみくださいませ。
それでは失礼致します」
料理の説明を丁寧にしてから部屋を退出していった。
「奮発したかいがありましたね!すごい美味しそうです」
ファインが興奮しながら料理を見渡す。
「そうね、それじゃあ早速頂きましょうか」
3人はグラスを持ちあげる。
セニアとファインは生ビール。
ファインはレモンティーだ。生ビールは部屋の冷蔵庫に入っていたが、レモンティーは無かったので自販機で購入したものをグラスに注いだ。
せっかく旅館に来たのだから雰囲気を出したいものだ。
「とりあえず約4ヶ月、お仕事お疲れ様。これからも
無理しない範囲で精一杯頑張りましょう。そして今は存分にリラックスして楽しみましょう。乾杯!」
セニアが乾杯の音頭を取り、皆2、3口喉に通した。
「部屋は充分涼しいですけど、体の中からも涼しさを感じれていいですね〜」
「そうね、やっぱりビールは冷たいのが1番ね」
そう言ってセニアとファインはもう2、3口飲む。
「私お刺身取り分けちゃいますね」
「ありがとう」
そう言ってアメリは小皿に刺身をとりわける。赤身魚も白身魚もたくさん盛り付けられており、3人で分けて食べても十分楽しめる量だった。
「いただきます!」
取り分けたアメリが刺身を食べ始める。
まずは醤油をつけずにそのまま。
「美味しい!!すごい美味しいですよこれ」
それを見てセニアとファインも刺身を食べる。
「本当だ、すごい美味しい。こんなの食べたら
スーパーのやつなんか食べれなくなっちゃうよ」
「本当ね。特にこのマグロなんて厚さが凄いわ」
3人とも各々食事を楽しむ。
すると一通り刺身を食べたアメリが、今度は醤油を
つけて食べる。
「ん〜、この醤油の塩分濃度が丁度いい!
素材の味を邪魔しない」
「グルメリポーターかな?」
ファインの言う通り、満面の笑みで感想を言うアメリの姿はテレビのグルメリポーターのようだ。
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食事を終え、食休みも兼ねて部屋で楽にしていると
外からドンッドンッという音が聞こえてくる。何事かとファインが窓の障子を開けると、カラフルな閃光が目の前に飛び込んでくる。
ファインがスマホで検索すると"アタウミ花火大会"というページが出てきた。
「毎年この時期に開催されてるみたいですよ」
「そうなのね。それにしても、綺麗ね」
セニアがグラスに余っているビールを口に運びながら言う。
「こんな近くで見れるなんて、結構穴場の旅館なんでしょうね、ここ」
セニアは「そうね」と相槌をしながらアメリの方を見る。すると花火に夢中になっているアメリが間違えてセニアのビールを飲んでしまった。
「天使ちゃん、それ私のビールよ?」
「ほぇ?何言ってるんですかぁ、そんらわけないじゃらいですか」
「天使ちゃんが壊れた」
アメリの態度の急変に困惑する2人。
「もしかして、酔っ払ってるの?」
セニアが聞くとアメリはセニアの肩を叩き
「酔っ払ってらんかないれすよ。それよりも花火見ましょう、綺麗れすよ。たーまやー!」
(酔っ払ってる人はみんなそういうのよ)
どうすればいいのか分からない2人だったが、花火に夢中になっているのでしばらくそのままにしておいた。
「それにしても先輩、なんでこんなに酔っ払ってるんですかね」
「分からないわ。でもアメリちゃん自分のこと下戸って言ってたし、それと何か関係あるのかしらね」
これ以上分からないことを追求しても何もわかる気がしなかったので2人も花火に集中することにした。
しばらくして花火大会が終わるとアメリはさっさと布団に入り眠ってしまった。
「綺麗だったわねー」などと花火大会について話した後、2人も就寝した。
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次の日の朝、セニアが目覚めると隣で正座状態のアメリがこちらを見ていた。
「先輩おはようございます。その、昨日のことは記憶から消していただけるとありがたく・・・・」
「それは別にいいけれど、どうしてあんなふうになっちゃったの?」
昨晩から気になっていたことを聞く。
するとアメリは顔を赤くし、手で覆う。
「私本当にお酒に弱くて、少しでも飲むとあんなふうになっちゃうんです。だから人前では酒類は飲まないようにしてたんですけど・・・・」
「そうだったの。でも、可愛かったわよ」
そう言って優しく微笑む。
「いや、ほんとお恥ずかしい限りです」
二人の会話が聞こえたからか、ファインが起床した。
「なんの話ししてるの?」
「おはよう、ファインちゃん。なんでもないから早く起きて支度してね」
「寝起きからはぐらかされると、傷つくなぁ」
そんなことを言いつつもファインは着替え始める。
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それから三人は、銭湯で会ったよしこさんにおすすめされた商店街に来ていた。
「すごい賑わいですね」
あまりの人の多さにアメリはよしこさんがおすすめしたことに納得する。
「とりあえず一通り見て回りましょうか」
商店街には本当に色々なお店があった。
近くの海で取れた魚を売っている店もあればそれを調理して海鮮丼として提供しているお店もあった。3人はその中のお土産屋さんに入る。
「いらっしゃい」
気前の良さそうな中年の男性が出迎えてくれる。
3人は各自店内をブラブラする。
(何か良いものあるかなー)
特にこれといって買うものを決めずに色々とみていると、アタウミの海岸の写真がついているキーホルダーを見つけた。
「それにするの?」
後ろからファインが話しかけてくる。
「うん、そうしようかな。ファインちゃんは?」
「私はこれ」
そう言って見せてくれたのは、可愛らしい包装がされたクッキーだった。
どうやらお土産としては有名なものらしい。
2人はセニアの元へ向かう。
「先輩、何にするか決まりましたか?」
「えぇ、私はこれにするわ」
セニアの手には酒瓶が握られている。
「お酒ですか・・・・」
「これだけは絶対に買おうって決めてたのよね」
そんなセニアを見て2人は微笑む。前々からそんな気はしていたが、やはりセニアはお酒好きらしい。
3人は先程の男性の元へ会計に行く。
「でも先輩、それ割れちゃいませんか?」
ファインが酒瓶が割れることを懸念する。
するとそれを聞いて、男性が話しかけてきた。
「そういうことが起きないように、うちではしっかりと梱包するんだ。だから大丈夫だよ」
「そうなんですね」
会計を済ませた3人は商店街を後にし、バスで駅へと向かう。
新幹線の車内ではセニアとファインは眠りにつき、アメリは流れゆく景色をぼーっと見ていた。
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「それじゃあ2人とも、休み明けにまた会いましょう」
「はい」
「それじゃあね天使ちゃん」
3人は出発した時と同じ駅で解散する。
2人が見えなくなった後アメリも自宅へと帰る。
(また、行きたいな)
最後駆け足になってしまい申し訳ないです。
次回の更新はいつも通り日曜日になります。
今後も何卒よろしくお願いします。




