第16話 神様代行! 3
帰宅し携帯を確認すると、見慣れない番号からの着信があった。ネットで検索をかけても出てこない。
一体誰からの電話なのかと考えていると、再びその番号から電話がかかってきた。
変な電話だとしたらどうしようという不安と同時に
真実を知らないままで生活をしていくことに嫌悪感を抱いたアメリは思い切って電話に出ることにした。
「もしもし」
「あ、出た。もしもーし」
携帯のスピーカーから聞こえてきたのは聞き慣れたファインの声だった。
「天使ちゃんに連絡しようと思ったら、登録されてなかったからびっくりしたよ。
とりあえずセニア先輩に番号聞いて連絡してみたんだけど全然出ないから間違えてるのかと思った」
「そうだったんだ。ごめんね、さっきまで寝てたから」
ファインたちには風邪をひいて休んでいることにしている。流石に神の仕事をしていたからと言う訳には行かないので、それらしい理由を言って誤魔化す。
「この前の風邪がぶり返したって聞いたけど大丈夫?」
「うん、今朝よりは良くなったよ」
そう言って2、3度咳き込み、風邪をひいている演技をする。
「それなら良かったけど。心配だから今からそっち行こうか?」
「絶対来ちゃダメ!」
風邪を引いていないとバレてしまうことを危惧するあまり、つい大きめの声を出してしまった。
「そんなに強く言わないでよ。悲しくて泣きそう」
余程ショックだったのか拗ねた子供のような口調に
なっていた。
「ごめんね。ほら、うつすと悪いから」
全力で否定したことを疑われないように弁解する。
するとファインが小さな声で何か呟き始めた。
「突然ですが問題です。泣きたくなるような場所ってどこでしょう」
どさくさに紛れて恒例のダジャレクイズを出してきた。しかも、本当はこのクイズを出すためにに拗ねたのではないかと思ってしまう内容だ。
「ほんとに突然だね。でも今回の問題難しいから分からないな-」
何とか機嫌を取ろうと分からないふりをしてみるが、演技に慣れていないせいでほとんど棒読みになってしまった。
「天使ちゃん、嘘は時に人を傷つけるんだよ」
やはり見抜かれていたようだ。全てを悟り窓際で黄昏ている女性を彷彿とさせるセリフで指摘された。
「答えは暗い場所でしょ。泣くは英語でcryだからね」
これ以上拗ねられても困るので、素直に答える。しばらくすると電話から「ふっ」と鼻で笑う音が聞こえた。
「天使ちゃん、真実って残酷だよね」
「どうしろと?」
正解を言っても言わなくても同じような態度を取られ、本当の正解がわからなくなりツッコミを入れる。
またしばらく経ってからファインが返答してくる。
「天使ちゃん、今私の心は沈みきっているよ、真っ暗闇さ。そう泣きたいくらいくらいにね。ハンバーグ!!」
携帯から聞こえてきたのは某師匠のネタだった。
突然大きな声を出されたので「うるさ」とだけ反応して携帯を耳から離す。
しかし、それに反応してファインが呼んでくるので仕方なくまた耳に近づける。
「ひどいよ天使ちゃん、確かに大きな声出したのは悪かったけど」
ファインが謝罪してきたのでアメリも「こっちこそごめん」と謝罪する。
そして気になっていたことを質問する。
「それで?そのネタはどこから仕入れてきたの」
「この前やってた、日本のテレビ番組」
「やっぱりか」
アメリは、ファインがダジャレを知った理由が日本のお笑い番組を見た事を思い出し、今回もそうなのではないかと予想していたのだ。予想は見事に当たった。
(ファインちゃんにはもう日本のテレビ番組見ないようにしてもらおうかな。このままだとその道に進みそうで怖い)
そんなことを思いながらしばらく話をしていると、ファインが会社で話題になっていることを教えてくれた
「今日の神様の資料がいつもと比べ物にならないくらいわかりやすいって話で持ちきりだよ」
「へ、へぇー」
今度は棒読みがバレないように短い単語を選んで、興味を持っている演技をする。
「ずっとこのままだといいんだけどね」
それを実現するにはアメリが神になるしかないが今の段階ではまだ到底なれないので
「さすがにそれは無理」と心の中でツッコミを入れる。
「天使ちゃんも、神様の資料が分かりやすいうちに来れるといいね」
「そ、そうだね」
そこからさらに数分ほど話し、夕飯の時間を迎えたので電話を切る旨を伝える。
「病人相手に長電話させちゃってごめんね。会社に戻ってくるの待ってるからねー」
その言葉を聞いてからアメリは電話をきった。
「果たしていつになることやら」
そう呟き、アメリは夕飯の支度を始めた。
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翌日
午後に入ってその日12人目の転生希望者が転送されてきた。
「あれ、神様が対応してくれるって言われたからてっきりお爺さんかと思ったけど可愛いじゃん」
「は?」
口調だけでなく服装もチャラついているその男に嫌悪感を抱いたアメリは敵意をむき出しにする。
「お姉さん見た目とキャラ違いすぎね?まぁ、そういうのも俺はありだけど!てかこれ実質告白じゃね?」
男のペースについていけなくなったアメリはしばらく呆然としていた。が、何とか正気を取り戻し仕事を
始める。
「えっと、とりあえず希望されるスキルの内容を
お聞きしたいのですが」
「そりゃあもちろん、女の子にモテまくる系のやつでしょ」
「かしこまりました、蚊に血を吸われやすくなる
スキルっと」
小さな声で復唱しながら資料に書き込む。
しかし、男にはそれが聞こえていたらしい。
「ちょっと、そんなこと言ってないッスよ。
なんすかその嫌がらせ」
机をバンっと叩いて立ち上がり反応する。せっかく転生したのに蚊に刺されまくりでは冒険を楽しめるはずもない。当然の行動だろう。
「知りません?血を吸っている蚊ってメスだけなんですよ」
「知ってるよ!そうじゃなくて何で蚊なんだよ」
男は腕と足を組んで椅子に座り直す。たいそうご立腹なようだ。
それを見てアメリも資料を訂正する。
「市松人形に好かれるスキルっと」
「怖すぎだろ!てかアンタの辞書に人間の2文字はないんスか?」
もはや怒る気力もないのか今度は冷静にツッコミを
入れてくる。
アメリは立ち上がり男の周りを歩きながら語り出す。
「私があなたにスキルを与えたことで、多くの女性を傷つけてしまうかもしれない。そんなこと神の私には出来ません。なぜなら、人間を救い、幸せにすることが私の使命なのだから」
アメリの言葉に謎のエコーがかかり、語尾が空間に
響く。
「アンタの考えによると、アンタに救われていない
俺は人間じゃないことになると思うんだが」
「気づいちゃいました?」
「この人わざとだよ・・・・」
そう言って男は頭を抱える。
さすがに可哀想になってきたので資料に正しく書き込む。その他のことも質問し聞き取りを終える。
「俺が言えたことじゃないけど、あんたその性格直した方がいいと思うぞ?」
「大丈夫です、一部の人にしかやらないので」
「その一部に選ばれて最高だよ」
男は両手を挙げてお手上げのようなポーズを取る。
いつも通りの見送りの言葉を述べ男を送り出した。
すると、背後から「お疲れ様」と声が聞こえた。振り返るとそこには行きとおなじくスーツケースを持ったアロハシャツの神がいた。
「思ってたよりも早いおかえりですね」
「それがさ、向こうに着いた途端に台風が来ちゃって。遊ぶところじゃなくなっちゃったよ。来るのはやすぎるよまったく」
と言いつつもその手にはしっかりとお土産が握られている。外に出られない分、売店等を見回って楽しもうとしたようだ。
「まぁ、そういうことだから明日から営業部に戻っていいよ。お疲れ様」
「分かりました」
そう言って2人は社長室に戻る。
気付けばもう退勤時間になっていた。先程の男にかなりの時間を割いてしまったらしい。
神にこの2日間で起きたことを報告し帰宅の途につく。
途中自動販売機でレモンティーを買い1口飲む。
「明日からも頑張ろ!」
周りの人に聞こえない程度の声で呟きまた歩きだした。
来週はお休みさせていただきます。




