第16話 神様代行! 2
神に仕事の代行を依頼された翌日。
アメリは、セニアたちに気づかれないようにいつも
より早く出社していた。
前日同様エレベーターで社長室のある7階まで行き
ドアをノックする。
「失礼します」
「めんそーれ!!」
ドアを開けると麦わら帽子をかぶりアロハシャツを
着た神が、スーツケースを持って立っていた。
「待っていたよ天使君。飛行機が出発しちゃうじゃないか」
言葉では怒っていても顔は満面の笑みである。
それほど楽しみにしているということなのだろう。
(沖縄に行くんだ。というか、神なのに飛行機使うの・・・・)
「それじゃあ色々と業務を教えるからちゃんと聞いてね〜」
そう言って神は机の上に置いてある赤いボタンを
「ポチッとな」と言って押した。
すると目の前に机と椅子がふたつあるだけの、辺り
一面真っ白な空間に転送された。
「ここで転生希望の方にお話を聞いて資料を作るんだ。天使君はこの椅子に座って転生希望の方が転送されてくるのを待っていればいいんじゃよ」
そう言って今度は机の上の青いボタンを押すと、さっきまでいた社長室に戻ってきた。
「今やったようにこのボタン押せば向こうの空間と行ったり来たりできるからね。それじゃあ後は任せた
よーん」
「え、説明もう終わりですか!?」
戸惑うアメリの声など聞こえてないかのように鼻歌を歌いながら出ていってしまった。
「とりあえず先輩に今日休む連絡を入れておこうかな」
携帯を取りだしメッセージアプリで休む旨を伝える。直ぐに既読がつき「大丈夫?」と心配する返信がくる。
(うぅ〜、心が痛むなぁ)
罪悪感を感じながら神の言っていたことを
思い出しメモ帳に書き出す。
始業時間が近づいたのを確認し机の上の赤いボタンを押すが、周りは社長室のままだった。
「おかしいな〜合ってると思うんだけど」
それから何回か試してみたが空間が変わることは無かった。そこでもう一度、神の行動を思い出してみることにした。
立ち位置、押す角度など些細な所まで再現してみたがやはり空間が変わることは無かった。
ただ一つやり残していることがあることに気がついた。
「まさかね」
にわかには信じられなかったがそれ以外に
試せることはなかったので半信半疑でその行為を
試す。
「ポチッとな」
瞬間、辺りの景色が例の白い空間へと変わった。
と同時に機械のような声でアナウンスが流れる。
「始業ノ時間デス、所定ノ位置ニ着イテクダサイ」
「まさかこれがキーになってたなんて・・・・。
それよりも早く準備しなくちゃ」
机の椅子に座り、引き出しの中から書類を取り出す。するとその書類の下からノートが現れた。
最初のページを開くとそこには"分からないことがあったらこれを見てね!"と書かれている。神がマニュアルのようなものを作って置いていってくれたらしい。
(なんだかんだでしっかりしてるよね、あの人)
神が作ったマニュアルを眺めていると
目の前に置いてある椅子に1人の女性が現れた。
この空間に転送されてくる人間と言ったら転生希望の者しかいない。
アメリは落ち着いて対応する。
「転生希望の方でお間違いないですね?」
「はい。あの、私やっぱり死んだんですよね?まだ実感が湧かなくて」
「ここに居るということはそうだと思いますが」
「まさかあんな死に方するなんてな・・・・。
お母さんとお父さんに何も恩返しできてないのに」
そういうとその女性は暗い顔をして俯いてしまった。どうすれば良いのか判断に困り神のマニュアルを開く。
"転生希望の方がどんな状態であっても仕事を進めるべし"と書かれていた。一日に転送されてくる転生希望者の数は決して少なくない。
1人にかける時間はなるべく少ない方がいいのだろう。
アメリもその事を理解し仕事を進める。
「気持ちの整理が着いていない中で申し訳ないのですが、早速質問に答えていただきます」
「はい」
営業部での経験を活かしながら適切に聞き取り記入する。10分かけてようやく女性からの聞き取りを終えた。
「以上で質問は終了です、お疲れ様でした。この後は転生希望の方向けの待機施設に向かっていただきます。そちらでスキルが完成するのをお待ちください」
「分かりました、ありがとうございました。あなたのおかげで楽しい異世界生活を送れそうです」
「それは良かったです!!ぜひ楽しんでください」
別れの言葉を告げると女性は施設へと転送された。
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それから20人ほどの対応を終え終業時間を迎えた。
ボタンを押し社長室に戻る。窓からは夕日が差し込み部屋の壁を橙色に染めていた。
「神様あと何日で帰ってくるんだろ」
そう呟きながら朝と同様セニアたちに遭遇しないように時間をずらして退勤した。
16話はもう1話分書きます。
来週もどうぞよろしくお願いします。




