第14話 風邪
「ハクション!」
5月も終わりに差し掛かったとある日、アメリは朝から
くしゃみをしていた。続けて何度か咳き込む。
「う〜、風邪引いたのかな?」
そう言ってケースから体温計を取りだし
体温を測定する。数分後ピピッと機械音が鳴り、見てみると38度と表記されていた。
「完全に風邪引いちゃった。どうしよう」
ベッドに座りながらこの後どうするか考え込む。
(私がいない分誰かに迷惑かけちゃうだろうし出来れば休みたくないけど、会社の人に移しちゃったらそれはそれで悪いし)
ん〜、と唸っているともう少しで家を出なくてはならない時間になってしまった。
その事に触発されたのか、ゆっくりながらも立ち上がる。
(とりあえず出社して、これ以上酷くなるようだったら早退させてもらおう)
それから急いで朝食を取り、着替えを済ませて家を出る。
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「おはようございます」
「あら、天使ちゃんどうしたの?元気ないわね?」
いつもより少し遅めに出社しアメリに挨拶しに
行くと、早速指摘された。
「少し風邪気味で、でも仕事に支障は無いので大丈夫です」
「そう。辛かったら遠慮しないで言ってね」
「ありがとうございます」
セニアの気遣いに感謝しながら席に戻り仕事を始める。だが、やはり作業は手に付かず、ぼっーとする
時間が続いてしまう。
(ダメダメ!集中しなきゃ)
ゆっくりながらもキーボードを操作し続ける。
(この方には剣術系スキルだから、k、e・・・・)
普段の倍の時間がかかり、やっとひとつの資料を作成し終えた。確認の印を貰うためにセニアの元へ向かう。その歩き方は朝よりもふらついていた。
「先輩、確認お願いします」
「ねぇ天使ちゃん、本当に大丈夫?」
「はい、だいじょうぶ・・・・」
直後、アメリはバタンと大きな音を立てて床に倒れてしまった。
「天使ちゃん!」
すぐさまセニアが駆け寄り、額に手を当てる。
「大変、結構な熱があるわ」
「先輩今の音どうしたんですか?って天使ちゃん!?」
音を聞いて様子を見に来たファインが、倒れている
アメリを見て驚きの声を上げる。
「ファインちゃん。実は天使ちゃん朝から具合が悪くて、辛かったら早退するように言ったのだけれど我慢してたみたいね。」
「どうすれば・・・・」
ファインが右往左往し慌てながら何をすればいいか
考える一方、セニアは冷静だった。
「落ち着いて、ファインちゃん。今なら多分整備部にオルデ君がいると思うから呼んできてちょうだい、私は救急車を呼んでおくから」
「分かりました!」
ファインは大急ぎで整備部に向かい、セニアは携帯を取りだし電話する。
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「失礼します、オルデさんいらっしゃいますか!」
製造部に着いたファインは大声で叫ぶ。
するとその声に反応して2人の人物がやってきた。
オルデとロナだ。
「ファインさんどうしたんですか?」
「天使ちゃんが倒れたんです。今セニア先輩が救急車を呼んでるんですけど、来るまでちゃんとしたところに寝かせておきたいので移動させるのに男手が必要なんです」
「分かった、すぐに行こう」
返事を聞いてファインとオルデが部署を出ようとするが、ロナがオルデの服の裾を引っ張る。
「お兄ちゃん、私も行く」
「気持ちは分かるけど、ここは兄ちゃんに任せてロナは仕事に戻りなさい。大丈夫、お医者さんに見せればきっと良くなるさ」
「うん、分かった。気をつけてね」
「あぁ」と軽く返事をして部署を後にする。
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「セニアさんお待たせしました」
「オルデ君、ありがとう。早速なんだけどあそこのソファーに寝かせたいのお願いできるかしら?」
そう言って廊下に設置されている革製のベンチを指さす。
「おやすい御用ですよ」
オルデはアメリをお姫様抱っこしベンチに移動させる。するとアメリが少しだけ目を開けて蚊のなくような声で喋り出す。
「オルデ、さん?」
「気が付いたかい?今救急車を呼んでいるから、眠ってていいよ」
「すみません」
その言葉に甘えアメリは眠りにつく。
数分後、救急車が到着しセニア付き添いの元病院へ運ばれて行った。
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ぐつぐつと何かが煮込まれる音でアメリは目を覚ます。見慣れた天井だった。
音のする方に目をむけてみるとセニアが鍋で料理をしていた。視線を感じたのかセニアが振り返ってこちらを見る。
「気が付いた?」
「先輩、私」
アメリは起き上がろうとしたが制止されてしまった。
「あの後病院に行ったら、やっぱり風邪だったからお薬貰ってタクシーで帰ってきたのよ。天使ちゃんも起きていたけど多分覚えてないでしょ?」
「はい・・・・」
「それじゃあ私そろそろ会社に戻るわね。キッチン借りてお粥作ったから、食欲湧いたら食べてね」
そう言いながらセニアは玄関に向かい靴を履く。「あ、そうだ」と言ってこちらに向き直る。
「頑張るのはいい事だけど、ちゃんと休まなきゃダメだよ。今日みたいに倒れたら元も子もないんだから。他人に迷惑をかけるからって思うかもしれないけど、休んだ分元気な時に頑張ればそれでいいんだから!」
「はい」
セニアを玄関で見送り鍵を閉めてベッドに戻る。しばらく天井を見つめたあと眠りについた。
久しぶりに1回で全部書きましたよ。
その分短いくなってしまいましたがね。
また来週。




