第12話 最終日! 1
「おはようございます」
翌日
アメリは悪魔と遭遇したショックが残ったまま
出社した。
地上整備部での研修は今日が最終日だ。
「あぁ、おはよう」
オルデがパソコンで事務作業をしていた。
二人だけの静かな空間でキーボードだけが音を発していた。
自分の席についたものの座らずにいたアメリを見て何かを察したのかオルデが声を掛けてきた。
「僕に、何か用かい?」
「悪魔について色々と知りたくて」
「そのことか・・・・」
そう言ってパソコンを閉じ給湯室へ向かう。
ついて行くとオルデがお湯を沸かしていた。
「コーヒーでいいかい?」
「すいません、気が付かなくて。変わります」
「いいさ、このくらい自分でやるよ」
オルデはマイカップがあるようだが
アメリは持っていなかったのでやむ無く紙コップに
注いでもらった。
一息ついてオルデが話を切り出す。
「悪魔のことについてだったね。実を言うと僕も
あまり知らないんだ。」
「どうしてですか?」
何度も地上界に行っているオルデなら知っていると
思っていたアメリは不思議でならなかった。
「今から何百年も前のことさ。地上では戦争が
相次ぎ、その都度多くの死人が出た。
けどその中には謎の死を遂げた者が多くいた 」
このことを不審に思った天界側が調査をしたところ
悪魔の干渉が認められたという。
悪魔は人間の欲望を叶える代わりにその魂を奪い
それを糧に生きる。特に飢餓で苦しんでいた平民の
多くが悪魔と契約しその魂を奪われたそうだ。
最初の頃は悪魔側のことも考え、目をつぶっていた
そうだが必要以上の魂を奪ったことを理由に
その余った魂の処理を天界に押し付けてきた。
転生先の世界の人口もパンク寸前となり
見かねた天界側が、悪魔側のトップすなわち
魔王との会合を開いた。
「ちなみに天界側のトップは誰だかわかるかい?
きっと天使君も知っているはずだよ」
「私も知っている人?」
うーん、と考え込んだ末出てきた人物の
意外性に驚く。
「社長ですか!?」
「ははは!その反応は少し酷すぎるんじゃないかい?」
笑いながら話を続ける。
「その会合でしばらくの間悪魔側は活動を自粛する
ことになったんだ。僕達が出会ったのはその会合に
納得できず反乱している悪魔たちだろうね」
「なるほど」
オルデの話を振り返り自分なりに整理してみると
1つの疑問が生じた。
「オルデさん、知らないって言ってた割には
詳しいですね?」
話を聞く前オルデはあまり知らないと
確かに言っていた。
しかしその理由は簡単なことであった。
「この話は新人研修の時に聞いた話だからね。
他人に聞いた不確かなことを知っていると言うわけにはいかないだろ?一時期は新人に気を引き締めさせるためのホラ話なんて噂もあったくらいさ」
そう言って冗談めかして笑う。
「天使君も、もう一杯飲むかい?」
気がつけば紙コップの中は空になっていた。
「ありがとうございます」とお礼を言いながら
コップを渡す。
(悪魔の行動が活発になればそれだけオルデさんも
危険な目にあうかもしれない。
そしたらロナちゃん悲しむだろうな)
「はい、どうぞ」
カップを受け取りオルデに告げる。
「あの、地上に行く時は気をつけてくださいね。
もしオルデさんが傷ついたりして帰ってきたら
ロナちゃんが心配するだろうし・・・・って、こんなの私が言えるようなことじゃないですよね。
すいません忘れてください。」
足早に給湯室から出ていこうとすると
オルデが声をかけてくる。
「心配してくれているんだね、ありがとう。
でも大丈夫さ、こう見えて僕って結構強いから!」
笑いながら右手に力こぶを作り左手でそれを叩く。
「そうですね」
それを見たらなんだか可笑しくなってきて
ふふっ、と笑ってしまった。
「さぁ、最終日も楽しくやっていこうか!
ワクワクしながらね、仕事だけに」
オルデがダジャレを放った途端、聞きなれた
笑い声がした。
「それってworkworkってことですよね?
やっぱオルデさん面白い人だ」
鞄を持ったままのファインが給湯室の入口で大笑いしていた。おそらく出社してきたばかりなのだろう。
「お、ファイン君おはよう!やっぱり君は見込みがあるね」
「おはようございます!ありがとうございます!」
挨拶をしながら2人は給湯室を出ていく。
アメリだけポツーンと取り残されてしまった。
そして一言。
「最終日にワクワクってどういうこと・・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最終日の業務はこの研修中に起こったこと等を
レポートにして提出するというものだった。
パソコンを使っての書類作成はいつもやっている事
なので比較的楽だった。
「1日目、座学を中心に仕事の概要説明
その後・・・・」
アメリは初日からの出来事を着実に入力していく。
(思い返すと色々な事があったなぁ。
たった3日の事とは思えない)
この3日のことをじっくりと振り返り書類の作成を完了させ、オルデに確認に行く。
「オルデさん書類作成終わったので確認して
いただけますか?」
「分かった、後で確認するからそこに置いといてくれるかな。それまでファイン君のサポートをしてあげてくれ」
オルデの視線を辿るとそこには、頭を抱えながら
パソコンとにらめっこするファインがいた。
「分かりました」
苦笑しながら返事をする。
この光景も見慣れたものだ。
ファインの元へ向かおうとした時
焦りを隠しきれない声が部署内に響く。
「大変だ、うちの部署の人間が地上で悪魔と接触し
負傷した!」
オルデはガタッと派手な音をたてて立ち上がり
その社員に詳しい話を聞きに行く。
アメリの心には朝と同じような不安が蘇っていた。
ハーハッハッ、またまた2部構成だZE!
でも今週はマヂで頑張ったからぁー
来週はお休みしたいなぁなんて
すいません嘘です。
でも頑張ったのはホントなんですその証拠に
後書きがどんどんキャラ崩壊してってるでしょ?
いつもなら、前半短め後半長めなんですが
今回は前半が長めです。
つまり後半は・・・・・・おっと誰か来たようだ。