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ようこそ、萬呪事引受協会へ!

前世の因果から解き放たれ、魔女として生きていく覚悟を決めたセシリア。個性的な魔女達との暮らしの中で自分を知り、恋を知る。


かなりの説明回。説明しきれているか不安だ。

「セシリア、お昼どう?」

いつものように呪い玉の点検をしていると天井の梁にいる黒猫から同僚の声がした。

「えっ、そんな時間?A定食売り切れちゃうかな!」

慌てて自分の亜空間魔法の一つである魔法ボックスにノートを片付け財布を取り出した。

「お昼ご飯行ってきま~す!!」

広すぎる空間、視界には美しく光を放つ呪い玉しか見えないが、

「「「了解!」」」

と言う声があちこちから聞こえた。

声を掛けて返事が返ってくる。そんな、当たり前なことが嬉しかった。

黒猫が飛び取りて私の肩に乗ってきた。

“みゃう”

猫らしい声にほっこりした。

黒猫のみゃうは、同い年の同僚ロザリーの使い魔だ。

使い魔は、魔女の代わりにおつかいをする頼りになる相棒だ。ある程度の魔女にならないと使い魔(=ペット)は持てない。

貴族令嬢として周囲の厳しい目に晒され、マナーのチェックを受け続けてきた私は、自分の事で精一杯だった。黒猫の他にも使い魔に出来る動物はあるらしく、信頼関係で結ばれている彼らをみると、使い魔を持つことが、この魔女ライフの目標となった。

協会に来た当初は、何故、人の世に拘ったのか不思議だが、萬呪事引受協会会長曰く、因果率の問題だと説明され納得した。

魔女の嫌疑を掛けられ非業の死を遂げた初代の私に対する周囲の人間の執着度のことを因果率と言うらしい。

妹ステラは、私を虐げることで愉悦感を得て、私が側で苦しんだり、泣いたりしていることで自分の幸せを実感出来る性質だった。その性質こそがステラの前世の魂が持つ私への執着だった。

周囲に根回しを行い逃げられなくした上で自分は悲劇のヒロインとして舞台に上がる。彼女の望む結末には、悪役である私が必要だった。私の存在こそが自分を物語の主人公(ヒロイン)する大きな要因だった。

物語の結末を現実にするための執着が、彼女の転生先に被害者(私)の魂を引き寄せる、魔女ではなく人の生を選ばせるのだそうだ。

因果率と言うものは、加害者(彼女)の魂が生まれ変わる度に減少し、私の魂も自由な意思で転生を選ぶようになるのたが、ステラの魂は転生する度に魂を狩り取られる年齢が若くなったように因果率も上がると言う稀有な魂だった。

いい迷惑である。

そして、神様も意地悪だ。

危険人物が側にいるのなら教えてくれたらいいのにと魔女の歴史を学ぶ度思った。

協会長曰く、神は、絶対的な味方ではない。もし、魔女側に神がいるのならそもそも魔女なんて生まれていないと。

善に染まるも悪に染まるも人の勝手。どのような考えを持ち、罪を重ねるのか。神に祈り、助けを求めた魔女達の死にすら関心はなかったのでははないか。

協会長の言葉は辛辣だった。

我々は所詮、神の作った箱庭の中で暮らしている駒なのだと。



“ある時、暴虐の限りを尽くす王がいた。

悪政に苦しむ人々がバタバタと死んでいくのを見た神は、愛する女神が悲しむ姿を見て、気まぐれを起こした。人々の望みを1つ叶えてやろうと。

それが聖女誕生だった。

女神に良く似た容貌の聖女は、神と女神、人々が望む“善”を元に作り上げた人間である。

“人の世を終えた後は女神(むすめ)として、自分達の側に置こう。”

と女神と2人思っていた。

しかし、その聖女は、思った以上に早く、残酷に殺されてしまった。

愛しい娘を殺されて、女神は嘆き悲しんだ。神と女神の元に帰ってきた聖女は、自分が去った後の世界は更に混沌として、多くの命が奪われる、それが想像出来て悲しいと嘆いた。その時、神は初めて人に対してイラっとした。

神と女神の作った箱庭は彼らの性質を少しばかり受け継いだ魂を持つ者達が王となる。王には民のために時に冷酷無比な判断が要求される。暴虐王は神の気紛れと望むもの以外に興味の薄い性質の魂を色濃く引き継いでいた。

無自覚な神はいっそのこと箱庭を破壊してしまおうかと考えたが女神と聖女に止められてしまった。

つまらないと思った神はそれでは、実験をしてみようと考えた。悪業を尽くした暴虐王のような人の魂の記憶は、次の生でも引き継がれるのだろうかと。

神は、魂の性質をそのまま持たせたまま彼らを転生させた。神の実験を知った女神と聖女は、怒りと呆れを覚えた。神が一度決めた運命は簡単には変えられないが上書きは出来る。魂の性質そのままに行動した転生者が再び残虐な所業を犯さないよう女神は魂に何重もの蓋をした。それでもか弱い者達が再び犠牲になるかもしれない。ならば前世で非業の死を遂げた者の魂を持つ人々に運命に抗える力を授けよう。女神は殺された者達に魔法と言う力を与えた。女神の考えに賛同した聖女は、彼らを導き、心の拠り所となる場所を作ると宣言し、神の反対を押切り再び人間として聖女の記憶を持ったまはま転生した。

愛する女神からの叱責と娘との別れに神は少しばかり反省をし、今以上の実験はしないと誓った。”

歴史書に書いてあった魔女誕生の真実に少しばかり私はショックを受けた。ロザリーも諸先輩方もそうだったと笑っていた。

とにかく、私は新しく生まれ変わった魔女ライフを大いに楽しんでいる。

とても幸せだ。


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