1話
拙いですがどうぞ
1話
僕の名前は五月雨雫、
神奈川県横浜市に建てられている私立桜ヶ丘学園の一年生である。
こう表したらそれなりに都会にありそうな高校だと思われそうなんだけど、高校の周りを見れば木とか沢山生えているし、ネットの回線が遅すぎたりする、
ごく普通の高校だと僕は思っている。
周りの人達に関しても小説とかでありそうな特別な人なんていない。
ラブコメによくいる幼馴染み?
クラスで天使や女神などと騒がれている女子?
文武両道でイケメンな親友?
「好敵手」と書いてライバルとか言われる奴?
現実はそのような人たちは一切いなかった。
何が言いたいのかというと、僕、つまり五月雨雫という人物は、平凡な日常を送っていた。
みんなとは異なる特徴を持っているが、みんなから見れば物語などに出てくる脇役以下、
つまりMOBのような存在であった。
(そもそもあんまり目立ちたくない)
しかし、ある日を境にこの生活は大きく変わった。
人と異なる特徴を持つというだけで。
12月17日。
五月雨雫にとってこれからも忘れることはない日になるだろう。
季節が冬ということもあり、午後5時であるが日が沈みかけており、周りを見てみると電灯が既にあちらこちらで点いているのが分かる。
寒空の下、雫はコンビニの外にあるフードコートの隅っこの椅子に背中を預けていた。
彼は塾の自習室から一旦抜けていたのである。
今から店に帰って晩ご飯を食べたら、確実に授業に間に合わなくなる。
だからといってガッツリ食べてから授業を受けると寝てしまう。
なので塾に行く時はこうして軽食を買っているのである。
今見えている景色。
昔は今のような時間帯でも、小さい子供たちが遊んでいたり、大学生が写真を撮っていたり、未来を夢見るミュージシャンが演奏している姿が見かけられたが、今はその影がまったく無く、人が片手で数えられる程度しかいない。
(ほぼ毎日見ているけどやっぱり寂しいな)
寂しげな感情を抱きながら、右手にある財布の中にある数少ない小銭で買った焼きそばパンを食べている
その時だった。
「テメェ、ふざけてんじゃねぇよ」
「そっちこそ、舐めた態度とってんなよ」
ここからでは喧嘩している場所は分からないが声でどこで喧嘩しているのは分かった。
たぶん50メートルくらいは離れているだろう。
(馬鹿だな)
彼がこう思うのにも訳がある
この場所の近くに警察署がある、喧嘩する声がここまで聞こえてきた。
ということは署まで聞こえているだろう。
喧嘩が終わる頃には警察のお世話になっているだろう。
雫は基本的に興味のない厄介ごとには首を突っ込まないので
(まぁ、ほっといていっか)
という興味のない態度を取っていた。
が、すぐにその態度は消え去った。
「邪魔だ女、殴り飛ばすぞ」
という声が雫のところまで聞こえてきたからだ。
きっと女性が男達の間に入って喧嘩を止めようとしたのだろう。
だが話の内容を聞くにこのままでは女性が危ない。
(仕方がない、人助けしますか)
彼は空いている左手に石を二つほど拾いながら喧嘩が起きている場所に向かっていった。
50メートルはあるので普通の男子高校生では速くても6秒くらいはかかる。着いた頃にはもう手遅れになるかもしれない。
(こういう場所で見せたくないけどしょうがないか)
歩行者に少し強めの風が襲ったと思ったら、雫の姿は元の場所から消え、喧嘩している奴の顔がはっきりと見えるところまで来ていた。
喧嘩している野郎共の間には見た感じ中学生の女子がいる。両手を喧嘩してる奴の前に出して止めているが、今にも殴られそうだ。
助けるために2個小石を投げたが、
(1個は間に合うけど、もう1個は間に合わねぇっっ、どうする)
拳を1発受けて女の子が無事であることを祈りながら、もう一つの小石を投げようとする。
その時であった。
野郎共がまるで女の子に貼ってある障壁に思いっき弾かれたように吹っ飛んで行ったのだ。
目を疑うような光景を見て手元が狂ってしまい、明後日の方向に小石が飛んで行ったが、今はそれどころの話ではない。
(何が起こった…周りに人はいないし…あるとすれば僕と同じような人か、だとするとどういう特徴が…もしかして?)
この時から、僕の平穏な日々が消えていったのであった。
「ちょっと君ごめん、気になったことがあるんだけど」
女の子は睨みながら
「なに?ナンパならさっさと消えて。」
(初対面なのにやけに攻撃的だなぁ…)
雫は、『敬語』という言葉の意味を脳内辞書で引こうとしたが、今は話すことが重要なので、引くのをやめた。
「さっきの男2人とも吹っ飛んだのはきみがやったの?」
「さぁ?どっちにしてもあんたには関係ないでしょ?」
(いや、たぶんこの子がやった筈だ。殴られそうだった時彼女は、ガードもなにもしてなかった、ありゃ確実に自分が助かると思ってた動きだ。あの言葉を出してみるか。)
「そうなのか...」
「そこ邪魔だから、さっさと消えて。わか」
「Project CVT、この言葉に聞き覚えはないか?」
「っ..!」
最後まで言おうとしていた彼女の少女の言葉が詰まり、驚愕した顔で雫を見つめた。
雫の予想通り同じ人間だったようだ。
「あんたっ...まさか!」
「まあ、その、知っている側の人間だ。」
「さっきの質問に答えるわ。男達が吹っ飛んだのはわたしの能力、≪高速化≫を使って倒した。だからあんたの目的によっては、倒して逃げる。」
「嘘だね」雫は断言した。
「能力は風操作みたいなもんじゃない?」
この一言で、さらに少女に警戒されたので
「あー、誤解されないようにいうけど、僕は施設から抜け出してきた人間だから、きみの思ってる様な敵ではないと思うよ。」
それ聞いて、己の敵では無いと知った女の子は、ようやく緊張の糸が切れたのか、
「ああ、よかったー!」
と安堵の表情を浮かべた。
「やっと、ついたのに組織に連れ戻されると思ってて怖かったー!それはそうとなんで私の能力が分かったの?」
「ナイショ。取り敢えずきみはこれからどうす」
グゥ〜〜〜〜〜〜〜〜
この場に似合わない大きな腹の虫が鳴り響いた。音を鳴らした当の本人は雫の目から目線がどんどん下がっていって、最終的には彼の右手にある焼きそばパンのところで止まった。
雫は残りの焼きそばパンが彼女の胃袋に収まっていった未来が見えた。
8分と42秒が過ぎた、場所はさっきのフードコート。
「あのー。僕の焼きそばパンをものすっごく美味しそうに食べてくれるのは、こちらとしてはあげてよかったなと思えるのですけど、そろそろお互いについて情報交換しませんか?」
もぐもぐ
「お互いに敵では無いことも分かりましたし、有益だと思う情報は共有しあうべきだと思うのですが。」
もぐもぐ
「早く口の中にある焼きそばパンを飲み込んでくれると嬉しいなーって思ってんですけど」
もぐもぐ
(いつまで食ってんだよ!)
テーブルをバンッと叩いてツッコミたかったが、テーブルを叩いてしまうと壊れてしまうため、行動するのを抑え、諦めて彼女が食べ終わるのを雫は待っていた。
〜1分半後〜
「で?あんたはそもそも誰?」
「五月雨雫、高1だ。一応能力は施設の関係者から[superhuman strength]って呼ばれている」
「超人的な力?どういうこと?」
「怪力っていう意味らしい。一応君の能力も確認しておきたいんだけど」
「[wind control]、あんたの予想通りよ。そういやまだ自己紹介をしていなかったわね。」
と言い、自己主張がお世辞にも激しいとは言えない胸を張り、
「私は坂巻凛、2月生まれの15歳よ!」
「へぇ、同じ学年だったんだ」
「それってどういうこと?」彼女つまり凛は不機嫌そうに聞いてきた。
(正直に「中1くらいだと思ってた」とか言ったら彼女の地雷を踏んで情報交換どころの話じゃなくなるから、危ない、危ない。)
「自分より上だと思ってた」
「やっぱり!」そういうと彼女つまり凛は嬉しそうに微笑んだ。どうやら正解だったようだ。
「話を元に戻そう。僕はこのプロジェクトについて自分なりに情報を集めた。」
雫は指を一本たて、
「1つ目は、このプロジェクトは人体改造を行なっていて、ほとんどの人が失敗して、能力は手に入るが、人間として一般的な能力に一部悪い影響を与えるようだ。」
「どこもおかしいところないから私は成功ね!」
「一般的な人間と比べたことないだろ…」
どうやったらそんな自信がつくのが知りたいと思いながら雫は話を続けた。
@Ametosamusa1217です