これが君の力ですね。
さぁ、どうする。
霧に包まれた俺の肉体は、酷く熱い。
確かに気温がかなり高く、体感的には真夏日どころの暑さではない。ひょっとするとこれは霧ではなく湯気なのではないか、そう思ったりもする。
ところでさっきから、かなりの距離を歩いているはずだが、何かにぶつかる訳でもなく、ただ白の中を進んでいるだけである。
「痛ってぇ、ちゃんと前見て歩けやゴラァァア!!」
へ、
「す、すみませんすみません。ホントごめんなさい。」
「うっわー頭ぶつけて血ぃ出たわー、こりゃぁ入院せなあかんかもなぁ。払って貰うで、治療費。」
どうやらマズイ事になったらしい。相手の顔はよく見えないが、なにやら重傷のご様子。救急車を呼ぼうにも現在地が分からないではどうしようもない。このままでは....諦めていただくしか....くっ!まさか人を殺めてしまうとは私、無双西京一生の不覚....
「おいおい何黙っとるんじゃゴラァァ!舐めた態度取ってるようやから分からせてやるわ、俺の力をなぁ!それとも払うんやったら考え直すで、さぁいい加減に男見せろや!」
この男、力比べをしたいんだろうが、生憎俺の腕は切断された後の違和感で上手く動作しない。それにしても、この男、いったい何者....
「もう待たれへんわボコるで。おら《ブースト》!」
「なっ!」
霧が晴れてゆく。いや、目の前の男が吹き飛ばしているのだ。
全身から絶え間なく衝撃波を放ち、破れたらしい衣服が飛び散る。筋肉質な体が現れた。
「異世界転生者の俺ならこの程度のスキル屁でもねぇ。
おら行くぜぇ!」
「ぐはぁ!」
男の拳が俺の体をえぐる様に突き上げ、あっという間に虚空へと飛ばされる。内臓に有り得ぬ程の衝撃が与えられ口から血液が吐き出された。
「....っ!」
意識が薄らぐと共に体が落下してゆく。
準天界にも重力はあるのだなぁ、なんて考えながら、俺は気を失い地に墜ちた。