これから仕事ですね。
「どうします。。。?貴方に与えられた選択肢は2つほどしかございませんけども。」
メガネは俺の方を見上げてたずねた。
鼻をふんふんと膨らませながらこちらを見つめてくる。パソコンのような機械のキーボードみたいな物に両手を載せている。
「え、えっとねぇ、犬に転生するかここの職員になれと?」
「ネズミもご用意しております。」
「ここで働きます。」
即答だ。人間は無理だからって犬やらネズミやら押し付けてくる辺り、この「準天界」っていう世界の役所はクレイジーだぜ。俺はここで働く事になるのかね。
「え⁉︎」
何が「え⁉︎」やねん。こっちは真面目にリアルガチのハナシしとんのやぞ。現実的なわいに文句あるなら3次元の金払ろうてからにせえ。
「ここで働くっての。」
「い、いやぁご冗談を。。。」
「働かせろや」
どうもこの世界の住民は話が分からなくていけない。
至極生真面目な一般市民にとってはやりにくい世の中である。
「ではこちらの紙に氏名を記入して下さい。」
真っ白い紙の真ん中に四角い枠がある。
ここに書くんだな、ふむふむ。
ペンを手に取りサラサラサラと書き出す。
「はい、これでいいですか。」
「よし、貴様は今日から俺の部下1号だ。」
黒メガネが偉そうに立ち上がり、俺の胸に指差す。
「は?」
「一度名前を書いてしまったからには、もう後戻りできんぞ。今日からは俺の手足となって働いて、さらにはお尻拭きになってもらうから覚悟をしておく様に。…質問は?」
「あります先輩。」
大ありだ。まずお前の態度の急変に対して疑問が次から次へと湧いてでる。
「上司だぞ、この穴熊の姿焼きめ。貴様の先輩になった覚えはない、強いて言うならご主人様だろう。常識もないのかね、そうなのかね?」
こいつの犬になれってか?
「まぁいい。それではお仕事の内容を説明してあげよう。」
なりきるしかない様だ、こいつのワンちゃんに。
「よろしくお願いします!!」
「うむ。それではまず出勤してからの一日の大まかな流れを教えてあげよう。時刻鳥が三度鳴いたら朝礼開始、四度鳴いたら二十三度鳥さんが鳴くまで異世界の外回り。二度鳴いたら帰っていいよ。」
「時刻鳥?」
「はぁー、これだから人間卒は。この準天界という世界では時間は24時間制で貴様の前世界と同じだ。ただし呼び方が少しオシャレで鳥さんに例えるのだ。」
「え…という事は朝3時から次の日の朝2時まで働けと…?」
「そうだが何か?」
「いつ休むんです?」
ブラック企業を通り越してただの収容所じゃねぇか、ご主人様よぉ。
「何を言っている、準天界じゃあ痛覚が意図的に抑えられていると言ったはずだな?ならば眠気も抑えていると言うことぐらい考えたら分かるだろう?少しは頭を使え!」
いや頭使っても分かんねぇだろ。もはやイマジネーションの世界じゃねぇか。
「それでも休憩時間が少ないような…」
「時刻鳥一鳴き分も休めるんだぞ?十分すぎるだろう、あまり文句を言うなら肩叩きならぬ足払いするがいいのかね?」
何言ってんだこいつ。もうええわー
「ありがとうございましたー。」
「では早速初仕事といこうか。私はデスクワークがあるから1人で行ってもらうが、勿論問題ないよね?」
「え、それはちょっと……」
「問題ないね?」
「…はい」
なんや仕事って。確か仕事内容外回り以外無かったよな、どこ回るんだ?
「このマニュアル読めばどうすれば良いか分かる、さぁ行け。」
黒メガネは分厚い紙の束を渡すと、俺を役所から追い出した。
この建物は二階建てでどうやら俺は一階に居たらしい。
透明な自動ドアを通り抜けるとそこは辺り一面霧に包まれていた。なるほど、行ったことはないが、これがロンドンの空模様なのかね。いや、曇っているかどうかも確認できない程濃い霧なんだがねぇ。着ていたTシャツがビショビショじゃないか。
さてと、まずはマニュアルを読んで–––––––––––––––––
「読めねぇよ霧にでなぁ!」
おいおいどうしろってんだ?このままじゃ、一生霞んだ世界で
彷徨う事になっちまう。