第七十五話 両兵衛の帰還
やっと帰ってきた!!!!
三木城支城の内、海沿いに立地している高砂城と魚住城。
この二つの城を攻略中の羽柴秀吉率いる織田軍。
諸将の奮戦もあって無事この二つの城を攻略することに成功した一行は、大谷平馬が当初提案していたとおり、一度支城攻めを休止し、三木城の動きを待つこととなった。
しかしそこでこれまで三吉にいさめられて、上月城へ救援を出すことを我慢していた秀吉が爆発した。
「わしは上月城へ行く!」
「なりません、秀吉様! 秀吉様や荒木様を逃がして殿を引き受けてくださった半兵衛様や小寺様の気遣いを無駄になさるおつもりですか!」
「わしにとって半兵衛は必要なんじゃ。それに、官兵衛殿も此度の中国攻めで多大な助力をしてもらっておる。そんな二人を失うことなどわしには……」
「まだ死んだと決まったわけではありません!」
「手勢もなし、たった二人の軍師と一人の直属の兵士のみで未だに連絡がないなど、死んだか、死に瀕する状況で救援が呼べないかの二択ではないか!」
陣中で大声を出して言い争いをする秀吉と三吉の間を、平馬が「二人とも落ち着いてください」と言いながら入っていくが秀吉はもはや誰の声も耳に届かないようだ。
「三木城の動きを見るだけなら荒木殿や信忠様たちだけでも十分じゃ。わしは行く」
「どこへ行くんですか?」
「上月城に決まっておるだろう―――が?」
聞き覚えのある声が耳に入り、秀吉は声が聞こえた方へ顔だけ向く。
すると、そこには。
「半兵衛! 官兵衛!」
「いやぁ、随分遅くなってしまい申し訳ございません」
「こちらは順調そうな状況ですね」
少しボロッとした出で立ちをしているが、紛れもなく竹中半兵衛と小寺官兵衛、それに後ろに兵士に扮装していた寧々子と陣の外に服部半蔵。
上月城にて殿を引き受けた者たち全員の姿がそこにあった。
「無事じゃったか! 連絡を先によこさんか!」
「アハハすみません」
「そもそも伝令を走らせるだけの兵力もないので」
「それもそうじゃった。む、そうだ。上月城はどうなったのだ?」
「はい、ちゃんと報告しますよ」
そこで半兵衛と官兵衛はそこで一礼して一連の報告を始めた。
「我々はあの後上月城へ向かい、尼子と協力して毛利へ善戦するつもりでしたが、その道中尼子軍に不審な動きがあり、確かめたところ毛利と密会している現場に遭遇しました。
その時点で尼子は黒であると判断し、我々は城内へ味方を装って潜入後、尼子の首をとりました。それを取引材料として毛利へ掛け合い、上月城は見逃してもらって毛利は撤退。残った上月城の守護に再び宇喜多軍を選び、要請して待っておりました」
大半の内容が嘘で塗り固められているのだが、それを事実であったかのようにスラスラと淡々と報告していく半兵衛に後ろに控えている寧々子はゾッとしていた。
隣に控えている官兵衛はすまし顔でいる。
「尼子が……通じていた? 上月城の守備を任せるようあれだけ強く意見してきたのはまさか」
「あれは罠だったのでしょう。毛利に攻められているふうを装って秀吉様をおびき出し、援軍の荒木様もろとも一網打尽にするつもりだったのでしょう。我々が殿で良かったです、危ないところでした」
半兵衛の報告内容に付け加えるように嘘を述べていく官兵衛。
彼もまたすまし顔で報告していて寧々子は再びゾッとした。
半兵衛も先程の官兵衛同様すまし顔でいる。
軍師という生き物は皆、化け狐か狸に違いない。
寧々子は今後二人を人間に化けた何かとして見ようと心に決めた。
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