第七十話 場所戻ってその頃の上月城は
一度上月城回へ戻ります
天正六年、五月。
寧々子や三吉たちが生まれた世界の歴史と比較して数か月遅れて開始された三木合戦。
しかし織田軍にあるはずだった被害は寧々子や竹中半兵衛たちの計らいでなくなり、織田軍から離反して別所氏についた播磨国内の国人衆の人間も史実の半分程度まで減らせている。
小さくとも確実な歴史変化、そして秀吉たちにとって良い方向へと変化しているこの好機を逃す理由はない。
先日の軍議で大谷平馬が指示したとおりに織田軍は三木城の支城攻略を開始。
事はスムーズに運び、秀吉と村重が担当した野口城、織田信忠兄弟たちが担当した神吉・志方城は間もなく落ちた。
そしていよいよ兵糧攻めの中核を成す、海沿いの支城の一つ・高砂城の攻略が開始された。
「そういえば平馬」
「はい、なんでしょう秀吉様」
「上月城に向かっていった半兵衛たちから連絡なんかはきておらんかのう」
「自分は何も聞いておりませんが……三吉は?」
「半兵衛様たちからはなにも。代わりになるかはわかりませんが、宇喜多様が動かれたと情報が入っております。行き先は上月城みたいなのでもしかしたら小寺様から指示を何か受けているのかもしれません。」
「上月城には尼子がいるはずじゃが、大丈夫じゃろうか……まぁ両兵衛が揃っておるのだ、大丈夫であろう。わしらは三木城攻めに専念するぞ!」
「「はっ」」
こうして秀吉たちはこのまま高砂城攻略へと着手していった。
場所変わってその頃の上月城。
小早川隆景を組み敷く寧々子という謎の現場を見せつけられた両兵衛及び半蔵。
とりあえず二人を引っぺがし、隆景は一旦お客扱いとして上月城内の客間に案内していく。
そちらの対応は官兵衛に任せ、別室にて寧々子は半兵衛と半蔵の前に正座をさせられていた。
「何をしているんですか、あなたは。天守での取り乱し様や先程の小早川隆景に対する態度といい、説明を求めます」
「俺ちんもびっくりだよ~。お嬢ちゃん、意外と手が早いんだなって」
「そういう話ではないでしょう、ダメ忍者」
「つい」
「つい、ですることですか!」
なぜか話を逸らそうとしてくれた半蔵はチャラいが本当にいいヤツなんだなぁ、と内心でしみじみしながら最もな意見を述べる半兵衛に寧々子は大人しく白状した。
小早川隆景が自分同様未来からの転生者であったこと。
さらには前世で寧々子と友人関係があったこと。
包み隠さずに話した。
半兵衛が驚いて頭を抱えるところは想像どおりだったが、半蔵がなんのリアクションも起こしていないことに寧々子はある可能性に気付く。
「家康様は隆子のことも知っていたの?」
「もっちろん。なんせ神様だからね~」
「神様って自ら転生者に接触することってできないの?」
「あまり望ましくないみたいよ~。相手から接触する機会があって、話せるタイミングがあれば話すみたいだけど」
「……隆子の転生は私や三吉みたいな誰かの意図の元に成っていることなのかしら?」
「その辺は家康ちんに聞いてちょうだいな。俺っちは家康ちんの忍びだから、たとえお嬢ちゃんの頼みでも何でもかんでもは話せないなぁ」
どうやら半蔵だけでなく家康もなにか事情を知っているようだ。
これは中国征伐完了後に隆景も交えて家康に会う必要がありそう。
「あの有名な謀将が策略面で目をかけたという小早川隆景がまさか未来人だとは……」
「官兵衛のときと違って期待を裏切らせたようで悪かったわね。でもまさか私も中身が友達だとは思わなかったわ」
「その友情を利用して毛利を降伏させるようにこう誘導できませんか?」
「平気で友情利用を図るな! 毛利とは史実通り同盟でいいんじゃないかしら? 毛利とはとても長い付き合いになるし、もし同盟の時期が早まればお互い流す血が少なく済むし、隆子ちゃんにもそう告げてみましょうよ」
「しかし彼……彼女? 紛らわしいので普通に見た目通りに言いますね。彼は先程同盟を先に破ってきたのは織田だと言いました。実際そうですので、それでまたやっぱり都合悪くなってきたから同盟関係に戻らない? というのは自分勝手がすぎる話ですし、たとえ現場でうまくいっても信長は認めるかどうか……」
半兵衛の言っていることはもっともだ。
何より同盟を破棄するようなことをしでかしたのは信長様なので確かに現場でまとまっても後で報告したときに認められるかどうか。
結局のところ、この日は解決策が浮かばず、日を改めて話し合うことにして寧々子たちは解散し、別室にいた官兵衛と隆景を交えてその日の晩は食卓を共にした。
そのまま数日経った。
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