第六十四話 隆景視点:あれは……!!
ちょっと小早川隆景視点はさみます
時は少し前にさかのぼる。
毛利陣中にやってきた羽柴軍からの使者。
正確には竹中重治からの使者から渡された書状を甥の輝元や兄の元春より先に目を通してすぐに表情が曇ったことを自身で自覚していた。
ボクの様子を不審に思った二人が書状を奪い取り、中を読んで破り捨てて行かなくていいと止めてくれた。
罠だろう、危険だ、と二人は言ったが、ボクは少なくとも罠とは違うような気がしていた。
確信はない、直感だった。
周囲は反対したし、上月城目前までついてきてくれた人もいたけど、ボクは自分の直感を信じて一人で入城した。
城に入り、天守に案内されるに当たって帯刀している刀を預かる様子もないし、拘束もしない。
城兵たちはボクの顔を見て、すごく驚いている。
これを目の当たりにすると、一連の行動は彼の一存のようだし、罠ではないなという確信は得られた。
極めつけは本人との対談で「ただ話がしたい」と直接言われたこと。
直接会ったことがあるわけではないのに、随分興味を持たれているものだと思った。
父上の噂が知れているのは分かるが、自分自身は大した功績をあげていない。
何故だろうか。
そこになんとなく違和感を覚えた。
まるで、ボクが、いや、小早川隆景という存在が、すごい人であると、知っているようだ。
これはボクの直感。
そして希望。
この時代に小早川隆景として生を受けてもうすぐ五十に到達しようとしている今、もしかしたらようやく探し求めていた人に出会えるかもしれない。
自分と同じ、転生者。
(試してみる価値は、ある)
この時代の人としておかしくない行動を取りつつ、この時代のこの国にはない文化を暗に示さねばならない。
かつ、アピールする人物を絞らねば。
やはり自分に異様に興味を示している竹中重治か?
ボクのソウルメイトとも呼ぶべき友が前世にて、竹中重治は、中国の三国時代にいた天才軍師として名高い諸葛孔明に匹敵する才能がある軍師だと言っていた。
ではその才能が才能ではなく、実は中身が未来からの転生者で時代の流れを知っていたのだとしたら。
ありえない話ではないし、むしろ有力といえる。
よし、狙いは竹中重治だ。
彼に狙いが伝わればいいので、誰かに一回刀を向ける必要がある。
そう考えた時、そうそうたる顔ぶれの中で異彩を放っていた雑兵が実は羽柴秀吉の妻だと名乗る。
これはちょうどいい。
彼女を使おう。
少々不憫だが、こっちは五十年近く待ちわびた希望だ。
ボクのために一度、危険な目に遭ってくれ。
狙いを定めると、ボクはこの時代にはない、前世で習っていたフェンシングの動きで、素早く羽柴秀吉の奥方だという雑兵に突きかかるイメージトレーニングを始める。
彼女の挨拶が終わると同時に、ボクは光の速さを意識して彼女へと刀を向けた。
チラッと横目に竹中重治を見る。
驚愕と焦りが表情から伺いしれる。
ということは、伝わっていない?
では彼は転生者ではないのか。
これは説明がめんどくさそうだなぁ。
いっそこのまま彼らを攻撃して回って天守の窓から飛び降りるべきかと腹をくくったときのこと。
刀を向けた雑兵の服の中から薄い書物が落ちた。
「!!」
その書物に一瞬目を向けた時、ボクはそこに書かれている絵に見覚えがあった。
筆で描かれているので少々の違和感があるが、絵柄は間違いない。
あれは、寧々子の絵!
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
彼女は突然発狂するとそのまま床に落ちた書物を勢いよく拾い上げて天守を脱していった。
みんな、斬られたことよりも書物の方に反応したらしい彼女の様子に唖然としている様子だが、ボクだけはその意味を知っている。
「待って!!」
唖然とする一同の中で意味をすぐさま理解したボクだけが、彼女を追いかけていった。
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