第五十九話 荒木村重への対策
別所長治よりも荒木村重の情報が多数。
別所長治の拠点となる三木城にて潜入ミッション開始し、初回の情報交換をしていた三人。
それぞれが持つ情報を出し終えてもう少し様子見をしようということでさらに五日間三木城に滞在することが決定し、その日三人は再び散り散りになった。
そして三木城に潜入してから合わせて十日経った頃。
三人は再び本丸内神社に夜中集まった。
「では情報の更新をしたいところですが、どうですか? 僕は前回と変わらなそうです」
「俺っちは会談内容に変化というか具体性が上がったってとこかな。でもここで言うにはちょいと時間が足らないかな」
「私も半兵衛同様前回以上の情報はないかな。あれ以来、正室の方の実家から文がよく送られてきているからどちらかといえば半蔵の方が情報ありそうね」
「それではもうここには用はないでしょう。離反を止めることができないならばけしかけた家臣の首ぐらいはと考えていましたが、思っていた以上に支援者が多い。打つ手を変えた方がよさそうです」
「そうだなぁ。じゃ、行くか」
半蔵はそこで自身の影の上で手を振りかざして色を濃くする。
すると影が泉のような揺らぎを見せる。
半兵衛と寧々子はその影の泉に迷いなく入り、見届けた半蔵も周囲を警戒しながら泉に溶け込んでいった。
影の行き先は姫路城の半兵衛の部屋だ。
寧々子は本来、ここにはいないことになっているので一足先に部屋に入り、変装用の姿へ着替える。
その間に半蔵と半兵衛は部屋の前で情報を共有する。
「離反の正式な時期は四月。毛利軍が全て備中松山城に集合し、上月城を攻めるのと同時だそうだ。上月城を救援するはずの秀吉の背後を突くつもりらしい」
「寧々子殿が言っていた未来の歴史と同じ時期ですね。離反の時期に変化はないということでしょう。違いがあるのは宇喜多がこちらへついている、ということ」
「でもそれも安心材料とするのはどうかねぇ。いくらこちらへつく時期が早まったとはいえ、もう一度裏切ってもう一度戻ってくるなーんてこともやりかねないぞ?」
「そこは僕たちの動向次第。でももう一度裏切ったら正直秀吉様がなんといっても信長は宇喜多を認めない気がする。信長はそういう人だ。 ……宇喜多はこちらが有利であることと約束を守ってさえいれば迂闊に離反することはしないと思う。あと、別所長治は間に合わなかったけど荒木村重にはどうにかとどまってもらいたいね」
「そうだねぇ。お嬢ちゃんは荒木村重の離反理由がなんだったのか、言ってないのか?」
「それが分からないのよ」
着替えを終えた寧々子が扉を開けながら、半蔵が半兵衛へと問いかけた質問に答える。
分からない? と質問を質問で返す半蔵に頷く寧々子。
「実は明らかになっていなくていろんな説が浮かんでいたわ。
そもそも幕府将軍と本願寺とも親しかったので情で裏切った説。
村重の家臣が信長に内緒で敵対関係にある本願寺へ兵糧を流していたので両者の関係悪化に伴いバレるのを恐れて先に離反した説。
信長の一部家臣と仲が良くなかった説。
摂津の支配がうまくいかず信長へ反旗を翻すことで民の怒りの矛先を変えた説。
あとはあまり考えたくないけど、官兵衛殿との謀略説」
「正確に分かっていなくてもあらゆる可能性が浮かび上がっている時点で気になる行動がいくつもあるということですね。最後のやつは結構気がかりですね」
「最後の官兵衛殿謀略説を濃厚とする学者もいたわね。荒木村重離反後、説得しにいった官兵衛を信じることなく信長は官兵衛殿から預かった人質を問答無用で殺そうとしたからね」
「なるほど」
いくら軍師であらゆる可能性を考えなくてはいけないとはいえ、友人の悪口を言われているも同然の情報なのであまり気分が良くないだろう。
寧々子はなんとかこの可能性がないともいえないが絶対だとも思っていないので、励まそうと言葉を考えていると。
「それだけ裏切る理由があんなら、止めることだってできんじゃね? 理由が確実でないならいっそ本人に聞きに行くか今回の別所長治にしたように身辺調査をまたしにいけばいいじゃん? しかもお嬢ちゃんがあげた理由聞くとさ、別所みたいに絶対に反抗してやるー! て反骨精神てよりは信長にビビって反抗した説が濃厚じゃん? 臆病な奴には大丈夫よ~お母さんがついてるからね~みたいにしてあげりゃいいじゃん??」
半蔵が超ポジティブな発言を連発していった。
最後のそれは完全にバカにしているというか、煽っているのではと疑問視しかけるが、確かに言っていることは間違っていない気がする。
将軍や本願寺にけしかけられたとしてもそれは荒木が織田にとって重要なポジションに位置する土地を支配しているので、ビビっていても成功する絶対に大丈夫俺らがついてる、とでも言われて乗せられた可能性。
家臣が本願寺に兵糧を流していることがバレたのでは!? と危機感を感じている説も信長を恐れて考え。
信長の家臣と仲が良くなかった説も視点を広げればそれによって信長に目を付けられることを恐れてのことかもしれない。
摂津の支配がうまくいかなかった説からの反抗は摂津の民を恐れての所業。
官兵衛の謀略説も、逆にいえば官兵衛がこちらへ心底従うならまずけしかけることさえしないし、官兵衛がけしかけなければ動くこともしないだろう。
確かに全体的にビビっているというか臆病者というか。
「なるほど、確かに安心感、つまりは保証をあげればいいのね。宇喜多殿同様、相手が欲しいものに対しての保証をすればいい」
「ですね。保証案件の準備とトドメとして嫌な形ではありますが別所長治を見せしめとしましょう。もう別所長治はどうにもなりませんからね……」
「荒木村重への大まかな対応は決まったわね。ならそれについては私がちょっとだけ伝手を使って先に調べ始めるから、当面は約二か月後に迫った別所長治と毛利本隊への対策を講じるわよ」
「おっ、いい仕切りだねぇ~。お嬢ちゃんと一緒に戦するの初回の鳥居殿の時といい、なんか楽しいわ~」
「戦が楽しい、というのはいかがなものかとは思いますが、確かに気持ちは分かります。かの武田信玄と上杉謙信も二人でする戦が楽しかったと聞きますが、こんな気持ちだったのでしょうかね」
毛利本隊の上月城攻め及び別所長治離反まであと二か月の時だった。
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