第五話 浮気劇第一幕「誘拐」
めっちゃ楽しかったです今回(笑)
書きながら笑った。
寧々子が信長に、夫・秀吉の浮気が目立ちすぎると抗議をした日。
信長は寧々子の「浮気しましょう?」という色気が欠片もないお誘いにノリノリで承諾。
さらに同席していた前田利家、竹中半兵衛、石田佐吉(三吉)、ついでに外に控えていた森蘭丸の協力の元、信長が脚本としてこの浮気劇の幕は上がる。
寧々子が信長のいる岐阜城を訪れてから二日後。
自身の城である長浜城にて、その日は仕事をこなしていた羽柴秀吉。
その秀吉がいる天守へ慌てて駆け込んでいく者が一人。
秀吉がいる天守部屋の前にいた大谷平馬が、その者を見るなり立ち上がった。
「三吉、どうしたそんなに慌てて」
「ハァハァ。 ……やや姫に相談があると言われてなぜかおねねさまの部屋に行ったんだけど、姫が今日部屋を訪れた時に文台にこんなものが置いてあったと言ってて」
「なんだ、手紙か? 中をみていいのか」
「平馬にはむしろ見て欲しい。そして共に考えて欲しいんだ、これを秀吉様に見せるべきかどうか」
「一体なにが書かれていたんだ……」
三吉に圧倒されるままに、彼が持ってきた手紙を受け取って中身を確認する平馬。
手紙の内容を読んですぐに平馬も顔色を変えていく。
『 羽柴秀吉。
ねねはそなたにふさわしい女性ではない。
私こそ、ねねにふさわしい男だ。
故に、彼女は私がもらい受ける。
数十名ほどの妻をかかえているのだ。
一人ぐらいいなくなっても構うまい? 』
読み終わると、パン! と軽快な音がなるくらいの勢いで手紙を閉じる。
顔色は真っ青だった。
「なんだこの内容は!? 何かの茶番じゃないだろうな」
「でも僕、三日前ぐらいにおねねさまと会ったのが最後で、やや姫も今、暇をもらっていたから頻繁に会わずにいたもので、久しぶりに訪ねたらこんな手紙があったと言っていて」
「つまり、おねねさまが城からいなくなっておよそ二日は経過している、と?」
「……そういうことになるね」
突然の事態に平馬は額に手を当て、深刻な顔つきになる。
そのまま黙り込んで、今後の対応をどうするか悩んだ末に。
「……秀吉様に教えよう」
「いいのだろうか……」
「どちらにせよ、二日城へ戻っていないのだろう? やや姫の様子からして彼女の元へいるとは思えない。少なからず家出をなさっているだろう」
「そう、だな」
「――何を騒がしくしておる」
これから部屋に入ってちゃんと事情を説明しようとする前に、中から秀吉が現れる。
心の準備をする間もなく秀吉と対面することになり、二人は一瞬焦りの色を見せる。
しかしせっかく中から出てきて、一度戻してまた話すのも申し訳ないのでそのまま秀吉に例の手紙と二日間寧々子が城を不在にしていることを告げる。
「ハハッ、何かの茶番だろう~」
と、手紙をクシャクシャにしてポイと投げる。
ということは一切せず、先程の平馬以上に秀吉休息に顔色を変化させる。
「ねねが、いない……? 誘拐、された?」
「秀吉様、お気を確かに」
フラフラと後ずさって畳の上にペタリと腰をつく秀吉。
相当ショックを受けた様子だ。
これは秀吉に言うことなく、ひそかに処理しておいた方が良かったかもしれないと平馬が後悔しだしたところで、秀吉が再びゆらりとゆっくり立ち上がる。
「――だ」
「え?」
「ねねはどこにいるのかと聞いておる!!」
突然、三吉の肩を鷲掴みにして迫る秀吉。
驚いてめちゃくちゃビビった三吉は、それはそれはもうコミュ障かというほどに言葉を紡げずにいた。
すると、部屋の外からまた別の影が現れた。
「秀吉」
「……その声は、利家か!?」
秀吉の親友・前田利家が現れた。
利家の登場に平馬は驚き、三吉は秀吉から掴まれている肩部分からみるみる力が抜けていくのを感じて安心していた。
「利家がなぜここに。お主は柴田殿について越前に行かねばならないのでは?」
「そうなんだが、その前に用事ができちまってな。ねねのことだ」
「ねね!? ねねのことを何か知っているのか!?」
「ああ。昔、お前とねねの結婚に尽力したけどよ、お前はあんなに賢くてべっぴんさんもらってるのにすぐホイホイと他所に女作ってるそうじゃねえか。そんなやつにねねはもったいねぇ!」
「何を言い出すんだ利家! まさか、ねねをさらったのは利家なのか!?」
秀吉の問いに利家は目を逸らし、黙り込む。
それを肯定と受け取った秀吉はそれまで掴みかかっていた三吉から離れ、利家にしがみつき泣き出した。
「どじいえぇ!! 頼む!! ねねを、ねねをわしに返してくれ!!」
「それはできない相談だ」
「どじいえぇ!! ……ウッウッ、確かにわしはたくさん女のところへ行っておるし、側室もたくさん娶った。じゃが、ねねは、どの側室たちでも替えがきかない大切な妻なんじゃ! 子供ができなくともわしにはねねが必要なんじゃ!!」
男としてのプライドなど捨てたかのように、子供のように泣きじゃくりだしてねねへの愛を告白する秀吉。
その告白内容に、三人は心に何か熱いものがこみあげてくるのを感じた。
平馬が目の端に涙を浮かべ、それを拭うかのような仕草を取る。
その間にも秀吉は利家へ泣きついて必死の懇願をし、利家はそれをバツが悪そうに視線をそらすだけでなにも言わない。
「へぐっ!」
突然、秀吉が謎の悲鳴を上げて床に倒れ伏した。
秀吉の後ろに三吉が手刀の構えで立っていた。
平馬がそれに呆気にとられていると、利家が「よいせ」といって秀吉を肩へ担ぐ。
「任務、達成ですね」
「さーてと運ぶか」
「え。え、ちょ、おい待て三吉! これは一体!」
「ああ、平馬が言った通り、茶番だ」
「はぁ!?」
まさかの急展開に声が裏返ってしまう平馬。
その間に二人は秀吉を厚めの布にくるんでしまう。
全く状況についていけない平馬はそのままポカンとしながら棒立ちしていた。
「信長様の命なんだ」
「そうそう。すぐ秀吉は返すから、あと、ねねもな。ちょっと二人借りるわ」
そういって二人は、平馬に何の説明もしないまま、秀吉を担いで長浜城を後にした。
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これで終わりじゃないですよ!
遊びには人間、いつだって本気です!!