第五十八話 三木城潜入!
気がついたら長くなってしまった。
久しぶりに未来のことが掠めましたね。なにかのフラグか!?
毛利本隊が動き出したと報せが入り、秀吉自らがそれに対応している間に寧々子一行は別所長治の離反を阻止すべく動き出していた。
別所長治は現在播磨国にある三木城という、播磨の三大城と称された城を拠点としている。
今回服部半蔵の影の能力を使用して潜入するのはこの三木城である。
一月頭に計画を立てたがすぐには動き出せず、なんやかんやで一か月経過した二月に三人は三木城へ潜入した。
「―――成功のようですね」
「ここは……二の丸だねぇ。櫓がたくさんだ」
寧々子、竹中半兵衛、半蔵の三人は三木城内二の丸に辿り着いたようで、周りには多数の櫓が設置されていた。
誰かに見つかると面倒なのでひとまず近くの草陰に隠れて周囲を観察している。
「これが戦国時代の三木城! ザ・城というよりは武家屋敷豪華版という感じなのね。この時代になる前に幾度も落城の危機にあった歴史から長い年月をかけて拡張していったとは聞いているけど現代で実際に見た時、想像していたより敷地広くてビビったけど予想通り広くてまじビビるわぁ」
「ネェ、軍師殿。あそこに俺たち忍び込んでいるってことを忘れかけているヤツ空気読めないヤツが一人いるんだけど大丈夫なの?」
「寧々子殿のあれは僕にも止められないので何とかしといてください。その影で」
「いや、俺の能力をそんな雑用みたいな扱いされるのは心外すぎるんだけどな~!」
周囲を、目を輝かせてキョロキョロしては早口で独り言を発する寧々子と、同じように普通の目で周囲を見渡して警戒する半兵衛と、時間が夜であることをいいことに影を使って周辺状況を探る半蔵。
三者三様の光景は今後の動向を不安にさせるものであった。
夜闇に乗じてコソコソと移動しながら本丸へと向かう一行。
本丸へは二の丸から西の丸を通っていかねばならないためそこそこ距離がある。
その距離をこの毛利本隊が動き出している状況で、絶対人に見つからないように、とはいかないと考えていた半兵衛は、あらかじめ半蔵に頼み、別所軍の兵服と寧々子のみ女房の服を確保してもらった。
三人はそれを着て動いている。
「あ、神社が見える。本丸に入ったようだねぇ」
「神社はこの時代からここにあったのね!」
「寧々子殿、そろそろその観光気分は抑えてくださいませ」
神社前に辿り着くと三人はそこで一時停止をする。
寧々子は二人から離れて向き合う。
「それじゃ、私は女房の一人として情報収集を」
「ええ。それで僕は一兵士として情報収集を」
「俺ちんは忍びっぽい感じで情報収集を」
「役割確認は大丈夫そうですね。それでは五日後にこの神社付近で落合い、近況報告としましょう」
「「了解」」
そこで三人はそれぞれの形で役割をこなしにいったのだった。
――五日後の夜。
約束通り三人は神社の前に集まった。
「時間があまりありませんので手短に報告しあいましょう。まず、一番情報を持っていそうな寧々子殿」
「私は幸運なことに別所長治の正室の方付きの女房様と接触する機会を多々得られたわ。どうやら正室の兄と結託して離反するつもりの様子。もはや説得を聞いてくれる様子はないわ」
「別所長治のお方様はどこの方でした?」
「丹波国波多野秀治の妹だそう」
「明智光秀殿が担当している地域ですね。そういえば数年前に元々織田にいたのに突然その波多野秀治は裏切って信長を怒らせていましたね。でも織田離反から二年。光秀殿の進捗は確か年末段階で大分いい方へ進んでいると報告していましたから逆に言えばあちらは大分焦っているということですね」
他者の管轄や進捗状況、過去に所属していた織田の同盟相手まですぐにパッとでてくるとはさすがである。
それにしてもこの中国地方ではいち早く信長の才を見破って手を組んだにも関わらず随分離反者が多い。
信長の性格への不信感がそうさせるのだろうが、抵抗する方がもっとひどいことになるだろうに、賢いのかそうでないのか。
「僕は警護中に毛利からの使者及び国人衆と思しき者かそれらに近しい者たちが出入りするのを何度か見かけました。時期のすり合わせが行われているとみて間違いないでしょう。国人衆からの使者の数は多くありませんでしたが、それでもこれだけ長治の声に呼応する者がいるならこのあと続々織田から反旗を翻す者がいてもおかしくはないですね」
「俺っちは実際の会談場を覗き込んでいたから化けの皮被ってここへ来た奴らの素顔も拝んだよん。軍師殿が言う通り結構数がいる。そりゃ秀吉が窮地に陥っても無理はない。人手だけじゃなく、ここは相手の庭だ。地形や季節の天候状況にも詳しい。数が多少不足している程度の問題は地の利で押し返されると思うね。それだけ入念な話し合いも持たれていた」
「離反の理由は感情的というか人間的だけど、そういう準備をあらかじめちゃんと用意しておく面は慎重な男なのね、別所長治」
「そういうところが地元の人間に愛される所以なのかもしれませんね。人は結局、利ではなく情で動く。かくいう僕もまた秀吉様の心に惚れてこうして軍師となりましたからね」
利ではなく、情。
これは時代に関係なく、一貫する考えだろうなぁ。
寧々子は一瞬、前世での記憶がフラッシュバックする。
オタクであった寧々子はネットでのつながりは広いものの、現実はあまり広くはない。
そうはいっても普通に学校生活を営む上では不便なことはなく、いつでもある程度つるめるそういう趣味に理解ある友人はいたし、寧々子自身がいじめで苦しむことはなかった。
――いや、冷静に思い返せばハブられていることはあったのだろう。
趣味に生きると決め、成績第一の両親に抗うため勉学を怠り始めたあたりから、周りの目は変わった気がした。
一人でも生き生きと楽しそうにしている人間は、四人組またはそれ以上の人数からなるグループを結成して学校生活を送る通常の人間からすれば異質だったのだろう。
だからといって周りの迷惑になることはしていない。
授業中はちゃんと授業だけを受けていたし、家で自習をあまりしていないのでテストの点数がそれまでよりガクッと落ちたくらいだ。
部活に入れば周囲に迷惑をかけるだろうからあえて入らず帰宅部で過ごした。
だが周囲は異質である私を外し、孤立させた。
それが一部の人間がやっていたことだが、そのグループに目をつけられては厄介だと思ったり、騒ぎに干渉したくない人間も必然と手を貸す形となる。
だが一人で没頭できる趣味を持つとそんなこと気にする余裕がないくらい心は忙しいし、そんな環境になって数か月後にはソウルメイトと呼べる友人が転校してきて環境がまた一変したのだ。
そういえば前世の未練、弟のこと以外だとオタク関係のことだけかと思っていたけど、あの子のことも気がかりだなぁ。
「――どの。寧々子殿?」
「えっ、あ、ごめんなさい。なんだっけ」
「何か気にかかる事でもあったのですか?」
「いや、ちょっと昔のことを思い出しただけ」
「へぇ~! それって前世? 俺っち聞きたいなぁ!」
「また今度にしてください、へっぽこ忍者」
「軍師殿ひどくない!?!?」
さっきまで時間ないからと急いで情報交換していたのに、目の前で悪態つきはじめる大人二人を見ているとつい笑いがこみ上げてくる。
今、潜入ミッション中なんだぞ、二人とも。
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