第五十四話 長浜へ一時帰還 前編
数か月ぶりの家ですが、普通に軍議してますね
宇喜多直家の調略が成ったことで歴史に変化が訪れた。
まず、第一次上月城の戦いの後、羽柴秀吉と宇喜多直家は上月城を巡って攻防を繰り返すことになるがそれがなくなる。
両名は、上月城をどちらの兵が守るか話し合いを交わすために上月城にて話し合いの場を設けた。
最初はお互いの武将を推し合い、相手に配慮しあいながらどちらかの武将のみを置いておくことが議題であったが、あまりに埒が明かないので小寺官兵衛と竹中半兵衛が割り込み、両者の武将一名ずつを上月城に置いておくことで最終的な決定となった。
こうして秀吉は当初の信長の「播磨のみを平定せよ」という命令だけでなく、但馬攻略も実らせたのだった。
二つの国が平定されたことで秀吉は一旦長浜城へ帰還し信長へ報告と、季節が年末出会ったことからそのまま年越しを長浜城で過ごすこととなる。
「ねねーー!! どこじゃー!!」
現在近江に建築した安土城にいる信長への中国地方攻略の進捗報告完了後、秀吉はすぐさま長浜城へと戻って己の妻を探し始めた。
秀吉が長浜城へと一時帰還する決定を下した直後に寧々子は一足先に帰還し、寧々子の影武者で代理城主をしていた妹・やや姫と情報共有をしていた。
秀吉の出立から一日早く出ただけで秀吉の到着する一日前に着き、疲労困憊の中で領内の全容を把握するのにとても苦労したがなんとかインプットができた。
二年くらい大人しく領内の城主代理をしていたせいでこういう慌ただしいことが久しぶりだったので正直秀吉に会うよりも部屋で大人しく寝る休日が欲しい。
内心で「寝たい」という想いを抱えつつも慌ただしく走り回る秀吉の前に現れ、彼の相手をする寧々子。
その日は翌朝まで共に過ごしたのだった。
「あ゛あ゛……しんどい……」
「おつかれ」
「おつかれさまですね」
翌日、ずっと城主代理をこなしていた寧々子を休ませるためと秀吉が大人しく政務をこなしている間、寧々子の部屋には三吉と半兵衛が揃ってやってきた。
「よくやるよ、っていつも思ってたけど、ほんとによくやるね。戦に出ずに大人しくしていればいいじゃん」
「しかし今の寧々子殿の実力は普通に武将並なので軍師的にも戦への参加はありがたい話なんですよね。苦労はさせていますが」
「二年ほど半兵衛の見張りをかねて大人しくしていたせいでかつての勘が鈍っているわ。でもややのサポート力が高くて、疲労困憊の体と回らない頭でも一日で重要なポイントが叩き込めているから私よりもあの子の方がすごいわ」
「さぽーと、は補佐、ぽいんとは部分、的な意味で合っています?」
「半兵衛さん、そのうち英語も習得できるんじゃないかというくらい呑み込みいいですね」
「語学は日常に紛れ込んで聞いているのが一番身に着くと聞きますからね」
「この時代に語学って発想があるんですね」
「三吉殿、南蛮の人間と取引がある時世ですから存在するに決まっていますよ」
「それもそうか」
先日まで城を落とすために駆けずり回っていたとは思えないほどのんびりしたムードである。
眠い目をこすりながら寧々子は姿勢を正して本題へと入る。
「宇喜多直家の調略が予定より一年早く成ったわ」
「ええ。ですが、まだ毛利への圧力には足りない。今回の宇喜多直家調略はこの先長い目で見た時に有利、と考えます」
「このあと起こるのは、官兵衛殿がかつて信長様へ臣従することを決めた時に他に勧誘したメンバーの一人・別所長治の離反とそれに相次ぐ播磨内での反乱。これによって信長様と同盟関係にある尼子氏の滅亡。あと、荒木村重も離反して官兵衛殿を監禁するはずね」
「えっ、宇喜多の件よりそっちの方がよっぽど危険度が高いじゃないですか。聞いてませんよ」
「宇喜多直家の調略がどうあれ、年末までに一段落つくと記憶にあったからそのときでいいかと」
「呑気な! この播磨での騒動をどう対処していくかですね」
確かに反乱が起こるのは面倒だが、のちに毛利と同盟を組むので毛利と長年因縁のある尼子氏にはここで滅んでもらった方がいいのではないだろうか、と考える寧々子。
我ながら戦国的思考に染まって来たな。
「……反乱を止める気がないのかな、姉さん」
「そうなのですか? しかし止めねば秀吉様が窮地に陥るのですよね?」
「一時はね。でも脱している。半兵衛が秀吉の死を未来視でもしない限りは大丈夫なはず。私も出るし」
「だんだん自身の実力に対する謙遜がなくなってきましたね。反乱を止めない理由は尼子氏ですか? 再興させぬ方がいい、と?」
「秀吉の世においては毛利……正確には小早川隆景がいてくれればいいので、余計な火種になりうるのなら尼子氏はこのままでいいのではないかな。旦那様は止めるんでしょうけど。でも信長様は尼子氏が窮地に陥ったとき、切り捨てた」
「なるほど。寧々子殿は信長と似た考えである可能性がありますね。信長も今利用しているだけで尼子氏再興は望んでいない」
「……嫌な会議だな、これ」
まだまだ軍師への道が遠い三吉である。
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