第五十二話 宇喜多直家の調略
昨日更新できませんでしたので今日は二話更新します!!
宇喜多直家の調略回です!!
宇喜多直家。
出雲国の尼子経久、安芸国の毛利元就と並び称される中国地方三大謀将の一人。
元・主であった浦上宗景を裏切り、下克上を成した備前国の大名である。
直家は二度主君を裏切っており、一度目は失敗した上に情けをかけられて帰参を許されたものの、現在している二度目の裏切りは彼の中でもう失敗できないものになっていた。
だが、今のとこと主を備前国から追放するところまではうまくいっているのだが、追放先である播磨国から備前国に残る元家臣たちと連絡を取り合い、小さな蜂起が重なっており、少々頭を悩ませていた。
さらには羽柴秀吉率いる織田の中国侵攻。
かつて毛利方の猛攻を退け続けた赤松政元がいた上月城にまさに攻め入っているという。
今は彼の息子が城主となり守っているが、当たり前のことだが父に比べると戦経験に劣る。
援軍を送ったものの、守り切れるか……。
「直家様! 今しがた伝令から、上月城が落ちたと!」
「……やはり難しかったか。上月はまさに要の城。すぐに取り戻さねばならぬ、支度をせよ」
「はっ、しかしその前にこちらを」
「?」
家臣が直家に手渡してきたのは一通の書状であった。
中を確認すると直家の眉間に皺が寄る。
しばらく沈黙し、書状を睨みながら考え込む様子の直家を周囲にいた者たちは静かに見守っていた。
少し経った頃、直家は静かに書状を閉じて懐にしまいこんで一言。
「―――客を迎える支度をせよ」
宇喜多直家の居城・石山城。
その天守にて対峙する小寺官兵衛と宇喜多直家。
二人の間には並々ならぬ空気が漂っていた。
そして、その官兵衛の背後には。
「………」
素の、秀吉の妻であるときのままの姿で座る寧々子がいた。
周囲も動揺しているのか、ひそひそ話が絶えない。
せめて強気の姿勢でいるために表面上はキリっとしている。
「小寺官兵衛殿、本日はよくぞ参られた。そなたの書状、拝読いたした」
「さっそく本題に入っていただけるとは恐縮です」
「話が早い方がそちらにとっても居心地がよかろう?」
言いながらチラッと寧々子へ視線を向ける。
どうやら宇喜多直家は寧々子に気を遣っているらしい。
いや、これを気遣いと素直に受け取るべきなのか。
表面にはあまり出ていないが、彼もまた周囲の者たちと同様の反応なのだろう。
「そうですね。それでは急かすようで申し訳ございませんが、返事をお聞かせ願いますか」
「その前に確認したい。羽柴秀吉は、織田は、再び同盟を交わせばわしの主君謀反への全面協力及びそれに先立つ赤松軍の提供、そして領土安堵を約束する、と」
「はい」
「……わしは二度主君を裏切った身。織田と一度同盟を結んでいながら毛利とも結んだ。それは結果的に裏切ったようなもの。そのようなわしにおいしい話が過ぎるのではないか」
「毛利と手を切って協力していただけるのであれば安い話です」
官兵衛の言ったことに偽りはない。
毛利と手を切り、こちらに協力さえしてくれれば秀吉は本当に構わないのだが、宇喜多直家はやはり信じられないという態度だった。
「……赤松軍をなぜ殺さなかった。羽柴秀吉もおぬしも真っ先に皆殺しを選択しそうなものを」
「それについてはこのお方の入れ知恵となります」
「なに?」
そこで官兵衛と宇喜多直家の視線が一斉に寧々子へ寄せられる。
静観していた寧々子はそこでニコリと笑みを浮かべた。
「このお方は秀吉様の奥方・おねねさまにございます。戦期間中は秀吉様の本拠・長浜城にて留守を取り仕切っておられ、家臣たちからの信頼もあるお方、だそうです」
「中途半端な答え、だな」
「私自身は今回初めてお会いしました故、これは友人・竹中重治から聞いたことであります」「なるほど。それで? 長浜にいるはずの奥方が何故ここに?」
その問いは寧々子に直に向けられたものだったので、後ろで控えていた寧々子は軽く一礼して官兵衛の隣へと並び、答えた。
「私が旦那様の元へ来た理由自体は大したことのない、お使いです。ですがそのときに偶然赤松軍の処遇について話し合う場でしたので少々口を出させていただきました。無闇な殺生は恨み以外なにも生まぬと」
「――つまりは、わしはそなたに救われたことになるのだな」
「……救われた?」
「その様子だと特に何も知らなかったのであろうな。 ……ふっ、小寺殿」
「はい」
「同盟の件、承諾しよう。毛利とはこれより手を切る」
「! ありがとうございます」
すんなり話がいい方向へと進んで内心驚きに満ちている。
本来であれば一年後、官兵衛が長きに渡って交渉して難航した調略がこうもあっさり成るとは。
宇喜多直家と上月城主の関係を知らない風に装って、あまり大した効果が出るとは思えない赤松軍の提供を提案したけど、皆殺しにしなかっただけでこれだけ効果が変わるものなんだな。
官兵衛と寧々子は正式な書状を宇喜多直家から受け取り、秀吉の待つ姫路城に帰っていった。
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