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第五十話 仲直りの城攻め

つけておいてなんですが、仲直りの城攻めって物騒な名前ですよね







「―――で?」

「………」




 三人+変装寧々子で作戦会議を終えてから上月城攻めのために姫路城出立する前日、寧々子は姫路城にて半兵衛に与えられた部屋に呼び出され、正座していた。


 目の前に座る半兵衛の表情は読めない。

 しかし纏うオーラは未だピリピリしている。




「この前の話、どうなんですか」

「宇喜多直家を調略するという官兵衛殿の意見?」

「そうです」




 問いも答えも冷たい。


 いや、冷たくもない。

 感情の一切を抑え込んでいるかのよう。




「正解、かなぁ。宇喜多直家は天正七年に織田につく。そうさせたのは官兵衛殿だ」

「七年……来年か。なるほど、今がいい機会ということですね。でも時間がかかっているということはやはり一筋縄では」

「実際に調略を始めたのはもう少し後だと思うから今始めれば今後起こる戦をいくつか止められる」

「危険は?」

「調略は難航していたから時間がかかっていた。一筋縄ではいかないことは間違いないです。私は歴史を知っているけど、手札までは分からない」




 そこまで寧々子が告げると半兵衛は嘆息した。

 半兵衛の纏うピリピリした雰囲気が解かれ和らいでいくのを肌で感じる。




「官兵衛殿の言うことは正しい。それは分かる。けれども」

「友人を心配することは間違いではないわ。もうちょっと素直に君が心配ですっていえばいいんじゃないのかな」

「男にはそれがなかなか難しいことなんだよ」

「男って、面倒なのね」




 ほんとにね、と苦笑したあと、半兵衛は真剣な表情を浮かべて再び寧々子へ向き直る。




「宇喜多直家の調略を成功させたい。持てる情報を教えてほしい」

















 ――ということが姫路城出立前にあったものの、姫路滞在中に両兵衛が顔を合わせることがなかったせいもあって険悪ムードなのは変わらない。


 秀吉は上月城近くに着くと、軍を一度止めて主要家臣たちを呼び集めた。




「これから向かう上月城の周辺にはほかに三つの山城が存在する。東の利神城、南の高倉城、北の佐用城。四つの城の中でも上月は播磨だけでなく、美作・備前の国境に位置しているので絶対に落としたい城じゃ」

「上月のみを落とすこと自体はそう難しいことではありませんが、落城させたあとの維持のためにも周辺三城も手に入れる必要があります」

「官兵衛の言う通りじゃ。そこでここで軍を四つに分け、それぞれ同時に城を攻める。わし率いる本隊は予定通り上月城を、両兵衛は佐用城を、残りは利神城と高倉城は――」




 秀吉が他の家臣たちに指示を下している間、指名を受けた両兵衛は気まずそうに視線だけをお互いに向けていた。


 きっと秀吉も二人の仲直りの機会を与えるための強引な命令なんだろうけどももう一手足りないなぁ。

 仕方ない。




「半兵衛様!」

「わっ」




 一兵士の治として扮装している寧々子が半兵衛の背中を強くたたいた。

 背中をさすりつつこちらを恨めしそうな目で見て何かを訴えてくる半兵衛に半眼で官兵衛にチラチラ視線を送る。

 意図を察した半兵衛は困ったように嘆息したあと、意を決して背筋を伸ばした。




「官兵衛殿」




 官兵衛の名を呼び、相手の顔を自分へ向けさせた後に懐から書簡を取り出して「ん」とだけ言って渡す。

 目をぱちくりとさせて官兵衛はその書簡を黙って受け取った。

 書簡と半兵衛を交互に見た後、官兵衛は静かにその書簡を開く。




「! これは……宇喜多直家降伏案?」

「そうです」

「反対ではなかったのですか」

「調略が成功すればこのあとの戦を見込みより早く終わらせられる。それは分かりますが、あまりに危険、成功確率が低い。行っても官兵衛殿の命が危ないから反対したのです」

「―――私を心配して?」

「…………………………………友達を心配してはいけませんか」




 そんなことを言われるとは思わなかったのか、呆気に取られて目を点にしてしまう官兵衛。

 それに恥ずかしくなってきたのか半兵衛は顔を赤くして背けてしまう。




「……あまりそういう心配をされないので、慣れずうまく反応が出せないのですが」

「僕も本当に友と言える存在は初めてでしたし、仕事以外で純粋に人を心配することはあまりありません。僕、天才ですから」




 間に自画自賛が混ざっているが、黙っていこう。




「やるからには絶対成功、官兵衛殿も無事が絶対条件です」

「――そうですね」




 官兵衛殿は少し嬉しそうに口元を緩ませると「ありがたく頂戴する」と書簡を懐にしまった。




「佐用城、さっさと攻め落として秀吉様に合流いたしましょう」

「当たり前です。僕たち二人そろえば余裕です」




 仲直り、ということらしい。

 二人はそのまま自分達の隊へと戻り、すぐさま佐用城へと向かった。





 結果。

 佐用城は仲直りしてテンション高めな二人の働きにより最速落城。

 他の高倉城と利神城は秀吉軍が攻め来たと聞いて即座に降伏、一番時間がかかった秀吉本隊の上月城もさほどの犠牲者を出すことなく落城に成功。


 ここに第一次上月城の戦いは無事に終結した。


読了ありがとうございます。

ブクマ・ptよろしくお願いします!


次回、宇喜多直家の調略が始まるのか!!?!?

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