第四十九話 両兵衛の喧嘩
本日、作者都合により予約更新です!!
天才! すごい! (語彙力) と評される二人ですが、こういうことがあってもいいのではということで!
第一次上月城の戦い。
上月城での戦は秀吉の中国攻め期間中二度起こるため、最初の一回である今回はそう呼ばれている。
毛利方に属する上月城主・赤松政範および近隣にある備前国を治める宇喜多直家が子の戦いにおける敵である。
そう、敵、である。
「………」
「………」
これから敵の城を攻めに行くと言うのに険悪ムードを漂わせる武将がここに二人。
軍師、竹中半兵衛と小寺官兵衛である。
総大将である秀吉と半兵衛のそばに控える寧々子はそれに少々頭を抱えていた。
「なぁ、半兵衛、官兵衛。そうかっかせずにいかんか? あれだけすぐ仲良しになったというのに、少し意見が分かれただけじゃないか」
「仲がよかったのは昔の話です」
秀吉が仲裁を試みるも半兵衛がすかさず反論を述べる。
いや君たち出会って一年も経ってないのにもう昔とか言いだすのか。
「同意見なのは腹立たしいですがその通りです。昨日の友は今日の敵となる時代です」
「いやおぬしら味方じゃからな……」
秀吉が呆れすぎて力なくつぶやく。
どうして両兵衛がこんな険悪ムードなのかというと、事は数日前にさかのぼる。
竹田城攻めが順調に進んでおり、もうすぐ本丸へ侵入可能、という報せが姫路城へ入ったとき、秀吉は半兵衛と官兵衛を呼び出した。
「竹田城は問題なく落ちるじゃろう。なので、かねてより予定していた上月城へ行く。二人の知恵を借りたい」
「承知いたしました。上月城は現在、赤松政範が城主となっており、背後には宇喜多直家が控えています。此度攻め入れば宇喜多は間違いなく援軍を送ってくることでしょう」
「援軍が来るとなれば戦が長引く可能性があります。城の周囲に垣を幾重かにして設けて攻守に備えるべきかと。それで兵への負担が幾分か減ります」
「援軍が来ることが読めるならば半兵衛の言った垣は用意すべきじゃの」
「秀吉様、私は宇喜多直家の調略も提案いたします」
えっ。
部屋の端で傍観していた寧々子は思わず声に出てしまう。
一瞬半兵衛の鋭い視線が向けられた気がしたが、気のせいということにしよう。
「宇喜多直家の調略か……確かにうまくいけば赤松政範をすぐに降伏させることはできるし、上月城もしばらく安全、毛利への圧力にもなる。が、見込みがあるのか?」
「――ギリギリ半分、でしょうか」
「賭けがすぎますね、官兵衛殿。具体的な内容がないのに、あなたらしくもない案です」
「らしいかどうかの問題ではない。戦をどう有利に働かせ、犠牲を少なく早く終わらせられるか。これは重要であろう」
「それは間違いないですし、僕も同意見です。そもそも戦は起きない方が最善。しかし相手は中国地方の三大謀将の一人・宇喜多直家。すでにわが軍にも何かしらの息を吹きかけていてもおかしくない相手ですよ。だから秀吉様も僕たちだけを呼んだのです」
半兵衛の言う通りだった。
今回大きな軍議として作戦を皆で練らず、両兵衛とおまけで半兵衛についてきた寧々子のみで作戦を練っているのはすでに身内に潜んでいるかもしれない間者の存在があるからだ。
実際に誰が間者なのか、そもそもいるのか、それはまだ分かっていないが、いないという確証はない。
なにせここは敵地。
怪しい、というだけなら最近織田へ臣従した官兵衛も疑われる対象にはなるが、秀吉は官兵衛を信用してこの場へ招いたのだ。
「この私に信を置いてくれることについては心からの喜びを申し上げます。しかし、宇喜多直家の調略がうまくいけば今後の中国攻めは非常にやりやすい運びとなりましょう」
「それは確かになぁ。しかしその調略、行くとしたら誰が行く?」
「提案したのです。もちろん私が」
「危険だ!」
ここで半兵衛と官兵衛の間に険悪な空気が流れだした。
これはまずいなぁ、と本能的に悟った寧々子はそそくさと半兵衛に近づく。
「――あのぅ、少し落ち着いて冷静に……」
「君は黙って」
「はい」
あっけなく言いくるめられてしまった。
その後も意見は平行線で、結局秀吉が「調略するにしても此度の上月城攻めには間に合わぬであろう、またにしよう!」と官兵衛の意見を取り下げ、元の通り、戦をすることになった。
しかしその後、半兵衛と官兵衛は姫路城出立まで顔を合わせることがなかったため険悪ムードがそのままひきずられてしまったのだった。
読了ありがとうございます。
ブクマ・ptよろしくお願いします!
果たして険悪ムードはいつ収まるのか!!




