第四十八話 戦後のお茶
のんびりお茶会ですね。
次はまた寧々子の番です!
「おかえりなさい」
羽柴秀長が無事竹田城攻めを完了した報告を受けていた寧々子は、上月城攻めの準備で待機していた味方が駆け回っている中、三吉と平馬を出迎えた。
「無事に竹田城を落とせたようでなによりです」
「そのついでに報告だけど、秀長様を狙う刺客とかいなかったし、戦運びも順調だったと思うし、特に史実と相違ある出来事はなかったと思うよ」
「そうね。私も勝つってことぐらいしか知らないし、味方に派手な損失がないならそれで大丈夫なはず」
「なら大丈夫かな?」
さも普通に上下関係を感じさせる会話を交わす、二人の兵士。
その光景に「?」を浮かべていた平馬に寧々子が思い出したかのように告げた。
「ああ、平馬。ごめんなさい。ねねです」
言いながら被っているカツラを外す。
ギョッと目を剥き、三吉と寧々子を交互に見る。
「長浜にいたはずでは!?」
「こういう大きな戦のときは同行すべく夫にも内緒でね。ややたちに城は任せているわ。今は一兵卒よ」
「戦に出る女子が全くいないわけではありませんが、仮にも秀吉様ほど出世頭たる方の奥方がいるのはどうなのでしょう!?」
「西国の立花家では立花誾千代という方も普通に戦っているはずよ。それと同じみたいに考えて頂戴。ほら、あの人元々平民出だから最初貧乏だったし」
「貧乏関係ありますか!?」
三吉が真っ先に自分を頼ってくる時より頭を抱える事実に平馬は今にも倒れそうな心地になるのだった。
寧々子はそのまま半兵衛が待つ場所に行くため二人に「上月城攻めは私と両兵衛が主役だから二人は休んでてね~」と告げると走り去っていった。
二人は休みを取る前に今回の戦で世話になった秀長の元に挨拶にいくことにした。
秀長のいる部屋へ行くと、秀長のほかに藤堂高虎も居合わせていた。
「おお、兄上の小姓お二人。ようこそ参られた。ささ、そこに座ってくれ。高虎」
「はい、秀長様」
具体的に内容を言われたわけではないのに高虎はすぐ主の意図を察して二人分のお茶を用意した。
とても気が利く人なんだなぁ。
呑気に高虎への株を上げているが、三吉はこの藤堂高虎がのちに宿敵となる存在であることなど微塵も知らない。
寧々子は歴史に明るいが、三吉はそうではない。
こういう小さな部分でも後にどのように影響していくのか。
「此度の竹田城攻め、来てくれて感謝する。おかげで予想より事が進んだ」
「某は少々もたもたしすぎかと思いましたが」
「高虎! ――すまんな、少々口が悪いが、悪い奴ではない。許してくれ」
「いいえ、僕たちには藤堂殿のような勇猛果敢さや武力が足りないと自負はあります。だからこそ、頭を使います」
「いかにも。それが行動の早い藤堂殿にはもたついているように映ってしまうのでしょう。いやはや耳が痛い」
挑発するような高虎の発言を素直に認めた上で、高虎を褒めつつ自分達の強みをアピールしていく三吉と平馬に秀長はさらに感心した。
「兄上は本当に良き子達をお持ちだなぁ。改めて感謝の意を述べよう、ありがとう。次の上月城攻めには同行しなくていいのか?」
「次の上月城攻めには小寺官兵衛殿、竹中半兵衛殿といった軍師組が主な活躍を見せるそうなので大丈夫かと。――あの人もいるし」
「?」
「まぁとりあえず僕たちの出番はないようなので、竹田城か姫路城で疲れて戻ってくるかもしれない秀吉様を出迎える準備を整えます」
「呼び出される可能性もありますがね」
平馬が最後に言った方の可能性が高い気がして「あはは……」と乾いた笑いをこぼしながら三吉は出された茶をすすったのだった。
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