第四十六話 若人たちの初めての城攻め
単純なつたない策ではありますが、楽しんでもらえたら幸いです。
寧々子とから受けた羽柴秀長護衛(?)のため戦への準備を急いでしていた三吉は、最後の切り札である人物に両手を合わせながら頭を下げてお願いをしていた。
「平馬! お願い!」
「と、言われてもなぁ」
三吉がお願いをしていた相手は大谷平馬、のちの大谷吉継になる三吉の友人である。
三吉が寧々子のパシリなどをしている間などに一手に小姓の仕事を引き受けては全てこなしてきた。
友の願いとあらば、と最初は快く答えていた平馬も最近は少々甘やかしすぎたかと考えを改めていた最中であった。
「ちょっとお前には頼られすぎている気がして今回は甘やかさないでおこうと思っていたところだからな」
「でもおねねさまの命令なんだ」
「お前、それを言えば許されるとか考えていないよな?」
「平馬相手にそれが通じると考えるほど馬鹿じゃないよ。今回は、というかいつもだけどね」
「お前たちは仲が良いな」
これまで触れるタイミングがなかったので説明していなかったが、平馬は三吉と寧々子の関係を知っている。
三吉の正体を知っているし、寧々子に接触するときに非常に世話になったので三吉は正直に伝えていた。
だから寧々子に呼び出されても周囲の人間のような考えに及ぶことはなかった。
なかったが。
あまりにも自分を当てにしすぎだろうと少々立腹である。
「仲良くなんてない。心外だ」
「良しとせんのならそんなお願い突っぱねることもできたのではないか?」
「まぁ……それは」
「まぁいいだろう。今回は長期に渡ると予想して秀吉様も小姓をいつもより多く連れてきている。二人抜けても多少問題あるまい」
「平馬……!!」
花が咲き綻ぶように笑顔になっていく三吉に平馬は自分の甘さに嘆息した。
急いで準備をしてくると早足に立ち去るのを見届けて三吉も自分の支度へと戻っていった。
竹田城を攻めるために姫路城を出陣した羽柴秀長率いる秀長隊はまず竹田城へ行く道中にある岩洲城の攻略を始めた。
岩洲城は正面から攻めていったものの、敵の小細工などもなかったので時間がそうかからないうちに制圧が完了した。
制圧した岩洲城で一夜を過ごし、続けて本命の竹田城を攻めるために進軍する。
竹田城周辺には七つの支城が存在し、その先に竹田城がある。
また、竹田城は山の上に建てられていることもあり、下からみるとRPGでボスがいそうなダンジョンのような迫力を醸し出している。
「すごい。ダンジョンみたいだここ。うまく天気と雲海の条件が重なれば天空の城となる、って聞いたけどそれが納得できる光景だ」
もちろん姉である寧々子の入れ知恵である。
せっかく見に行くのだから楽しめと。
「だんじょん、というものはよくわからないが、天空の城というのはあながち間違いではないと思えるな。戦を楽しむというのも変な話だが、この城の攻略は少々楽しそうだ」
「その気持ち分かる」
「おい、お前たち。ぼさっとするな」
わくわくしている二人に声をかけたのは秀長に仕えている藤堂高虎である。
三吉の時代に伝わる高虎は生涯で八人の主に仕えたので不忠者とする作品が多くあったらしいが、高虎自身は誠実な人柄であったという意見があり、徳川家康からは後に厚い信頼を受けることとなる。
かつては信長の義弟であった浅井長政に仕えていたが、長政の死後、長政の家臣であった者たちや信長の甥のもとを転々としたものの、さまざまな理由からそれらの人の元を去り、現在に至る。
「竹田城は支城が多くある少し厄介な城だ。いくつかの部隊に分けてそれぞれから同時に攻撃、本丸付近まで近づいて合流することになった。お前たちは秀吉様の小姓だろう? ここらでその実力を見せてもらおうじゃないか」
お前たちの働きが主の評価へと繋がるぞ、と暗に煽りを仕掛けてきた高虎に二人はむっと表情を硬くする。
「ええ、もちろんお見せしますよ。ここでね」
勇ましく言い返した三吉が言いながら指差したのは自身の頭であった。
微妙に決まらんな……と喉まで出かかった言葉を飲み込みながら平馬もうなずく。
そんな二人を見て、軽くふっと笑うと高虎は自分の部隊に戻っていった。
秀長が定めた刻限になると、各支城の攻め用に編成された複数の部隊が一斉に攻撃を開始した。
三吉と平馬は同じ部隊で共闘するつもりでいる。
それぞれ自分の刀を抜き、他の者に続いて支城の一つへと攻め入る。
まだまだ戦経験の浅い二人ではあるが、二人は武勇には明るくなくとも戦運びがスムーズにいくように準備したり臨機応変に対応する力が高かった。
まずは門を開けるために複数人が大きな丸太を持って押し入る必要がある。
しかしこの間、無防備な彼らに敵は容赦なく襲い掛かるだろう。
そんな彼らを守る意味でも、目を引く存在が必要だ。
まずは刀を持っているものにも弓を持たせ、距離をとって全員で城門の向こうへと矢の雨を降らせた。
「いいか。人に当てるのではなく、人を脅かすのだ。できる限り相手方の矢が当たらないよう距離を取り続けるんだ」
「よし。弓兵が目を引いている今のうちにこじ開ける!」
三吉は丸太攻め隊に入って、他の者と共に門への攻撃を開始。
弓兵に指示していた平馬はそのまま自身も矢を放っていたが、矢の雨が降る中でも塀から外へ飛び出し、門を攻撃する者たちを成敗しようとしている兵を見つけるとすぐに弓を投げ、残りの矢を周囲の者に押し付けて丸太持ちたちを守るべく、漏れ出た兵を次々と斬っていく。
丸太持ちたちが門をこじ開け、中へ入れるようになるとみな弓を置いて刀や槍を手に中へと押し入っていった。
支城は、全体数は多いものの、それぞれにさほど数を割けないのか、中にあまり兵は多くなくあっと言う間に制圧した。
三吉と平馬たちの制圧完了報告を先に本隊へ伝令したところ、入れ違いにこちらへきた伝令が他の部隊の戦況を伝えてくれた。
「藤堂隊が一番槍となり目的の支城をすぐに落としましたため、他の部隊のサポートへと回っていた模様で、今ここを合わせて半分以上が制圧完了となっています」
「すご……煽ってきただけはあるね、あの人」
「元は浅井長政に仕えていたと聞き及ぶ。織田信長からの苛烈なあの攻めを経験していることを考えれば当然の実力かもしれないな」
「まだまだ僕たちでは及ばないね。でも」
「ああ。今回で小さく砦のような所ではあるが、城攻めがうまくいった功績は手に入ったな」
小さな一歩ではあるが、確実に己の成長を感じて二人は笑みを浮かべ、ハイタッチを交わした。
読了ありがとうございます。
ブクマ・ptよろしくお願いします!
竹田城調べていたらとても気になってきました!いつか行ってみたい!




