第三話 久し振りの再会とはじめまして
寧々子は馴染み深い信長様ですが、三吉には初めましてとなりますね!
そして、信長にセットな武将・森蘭丸が登場です!
利家についていく形で岐阜城への入城を無事果たした寧々子たち一行。
夫の友人である利家と寧々子はこれが初対面ではない。
結婚する随分前から、秀吉から彼のことは紹介を受けており、利家の妻・まつとは寧々子がこの時代に転生してから初めて得た女友達だ。
まつとは文通もしており、常に近況報告をしあっている。
「そういえば利家殿は、近いうちに柴田勝家様に従軍して越前の一揆鎮圧へと向かわれるのですよね?」
「まつから聞いたのか。ああ。今日はその挨拶だ。しばらく帰れねぇだろうから、何かあったらまつのことよろしくな」
「勿論です。私にできることがあったら何でも致します」
「さすが秀吉の奥さんだな! 頼りになるぜ」
その後、信長の元へ着くまでに利家と寧々子は楽しそうに談笑していた。
それを後ろからついていって見ている寧々子の連れ一行。
なにやらまた三吉が半兵衛に近寄って小声で話しかける。
「竹中様、あの方は?」
「前田利家殿。秀吉様の長年のご友人で、槍の又左という異名で知られている血気盛んな武将だよ」
「随分おねね様と仲がいいのですね」
「へぇ、妬いてるの?」
「なんでですか! 思ったことを言っただけで深い意味はないです」
「秀吉様と仲がいいんだから、おねね様と仲が良くても不思議はないよ。それに利家殿の奥さんとおねね様は文通を欠かさないくらい仲がいい」
「ああ、なるほど」
姉にも友達がいたことを知ると、心配をしていたわけではないが少しホッとする三吉。
寧々子は学校でもネットでもある程度、共に行動できる人がいたので自分よりは人付き合いがうまいと三吉は考えていた。
しかしこちらに来てからは妹と旦那しか、仲がいい人間を認識していなかったのでもしかして逆パターンになっているのだろうかと少し考えてもいた。
今回で竹中半兵衛となにやらただならぬ関係にあることは知れたし、こうして友達がいることも知れたので姉の周りはまたにぎやかであるのだなと知れただけでもついてきたかいがあったというものだ。
うんうん、と一人勝手に納得していると、半兵衛がじっと見てきていることに気付かなかった。
「なんですか?」
「いや。何をそんなに頷いているのだろうと」
「親のような気持ちでした」
「はぁ……?」
信長がいるのは岐阜城の一番上の部屋だった。
寧々子は半兵衛と三吉以外は客間に置いていき、利家と二人と共に上の部屋へ向かう。
部屋に近づくと、遠目から部屋の前に人が立っているのが見えた。
「おおー! 蘭丸―!!」
「……む」
蘭丸と呼ばれた人は呼びかけに気付いてゆっくりとこちらを振り返る。
「おぉ……」
利家と寧々子たちより一歩下がったところにいる三吉が感嘆の声を漏らす。
寧々子もその気持ちは痛いほどに分かって内心激しく首を縦に動かしていた。
部屋の前にいたその人物の名は、森蘭丸。
織田信長が一番お気に入りだったという小姓だ。
半兵衛は中性的な顔で細身の色白美人ないわゆる儚い系のようなイケメン。
利家は完全脳筋武将で、男前な面構えに筋骨隆々とした感じの男前イケメン。
蘭丸はそんな二人とはまた違うタイプのイケメンで、整った顔つきと細すぎず筋肉付きも多すぎないバランスがいい体つきをしている。
ここで今まであまり触れてこなかった寧々子の旦那・秀吉はどうかというと、このメンツに並べば普通顔である。
いや、中の下ぐらいに相当するだろうか。
また、多指症という指が一つ多い病を患っており、右手親指が一本多い。
功績を多数上げるだけでも周りから疎まれがちだというのにさらにこの病によってより奇異の目を向けられる。
さらに、妻に美人な寧々子を娶っているのだからもはやトドメである。
世の男からは「イケメンでなくてもチャンスが」「そんなにいい容姿でもないのになぜ」などさまざまな意見が飛び交っている。
話は戻って、蘭丸が利家と寧々子たちに近寄ってきた。
「……利家殿。 ……ねね殿も?」
「お久しぶりでございます、蘭丸様。信長様にお会いしたくて参りました」
「……喜びます。どうぞ」
口数が少ないのでぶっきらぼうに思われがちだが、根はいい子で信長様想いの蘭丸である。
扉を静かに開け、中に寧々子たちを招き入れる蘭丸。
部屋には信長が一人で書類と睨み合っていた。
その顔があまりにも険しくて寧々子と利家の後ろにいた三吉は「ひっ」と小さく悲鳴を上げるが、それに対して失礼だぞという意を込めて半兵衛が脇腹を軽くどついた。
しかしその半兵衛も信長に対して険しい顔を向けている。
対して利家と寧々子はケロッとしており、礼をとる。
「ご無沙汰です、殿!」
「お久しぶりです、信長様」
「利家に、ねねか! 久しいな。息災であったか?」
「はい。信長様も息災でようございました」
「利家は準備が整ったというところか」
「はい! これより柴田殿と共に発ちます故、挨拶へ参りました」
寧々子と利家、信長の三人は微笑ましく挨拶を交わす。
それを一歩引いたところで見ている三吉は、ありえないものを見ている気持ちだった。
家臣である前田利家が親し気なのはまだわかる。
しかし実の姉が天下人、しかも魔王と呼ばれた人と親し気に話している光景に弟としては驚かないはずがない。
三吉の目には、入室の際の険しい表情が初見のせいか、信長がとても恐ろしい人に映っている。
今でさえ、二人と微笑ましく話しているようで全然隙が無い。
暗殺をするつもりはないが、暗殺なんて絶対不可能だろう。
明らかに他の人間とは別格。異質とさえ言えるだろう。
ふと気になって三吉は隣にいる半兵衛をちらりと見る。
すると見たこともないような冷たい目、無の表情を浮かべておりすぐに目を逸らす。
信長を見るのも怖いが隣を見るのも恐ろしい。
やはり半兵衛は姉にただならぬ想いを抱えているに違いない。
三吉は誤解を深めていった。
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