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第二十七話 武藤喜兵衛

真田昌幸が真田家当主になる前です。






「あの織田信長が設楽原に!?」




 武田家新当主・武田勝頼の驚きの声が武田陣営に響き渡る。

 長篠城に将が一人周辺の武田軍を撒いて入城したこと、設楽原に徳川家康が出陣したという物見からの連絡を受けて、勝頼様が様子見する者を放っていた。

 そしてつい先ほど、設楽原方面に向かった者たちから連絡がきて、徳川家康だけでなく織田信長も現れたと報告があった。




「バカな! 織田信長に武田を攻める必要性などないだろ!!」

「織田信長と徳川家康は幼馴染ということもあり、とても仲が良いと聞きます。情で動いたのでしょう」




 勝頼様の近くに控えていた新参寄りの家臣・跡部勝資がさっそく口をはさんでくる。




「愚かな。戦国最強と言われる我が武田家を前にしても友情を取り、家の崩壊へとつなげていくか。やはり弱小な家は考えることが甘いことよ!」

「左様でございますな。ここは勝頼様の本気を見せるときですな!」




 もう一人の新参寄りの家臣・長坂光堅も口を挟む。


 やれやれ。

 どちらが家の崩壊へと繋げる愚者か。




「武藤の大将!」

「――佐助か」




 後ろから俺に仕えている忍びに小声で声をかけられたが、俺は振り返らなかった。

 仮にも軍議中なので、主に背を向けるわけにはいかない。


 そういえば紹介が遅れたが、俺は武藤喜兵衛。

 実家は真田家で兄が二人いるので家督を継ぐ予定はなく、今は亡き武田前当主・信玄様の母の家系に連なる武藤家の養子に出されたのち、武藤家を継いでいる。


 俺が答えたのを聞いて、忍び・猿飛佐助は静かに身を低くしながら耳に近付いてくる。




「今勝頼様の元へ入った情報は本物です」

「嘘の情報を掴まされたわけではないということか。数は?」

「地形をうまく利用しているのか全部は見切れなかったですが、二万以上はいるかと。また、名のある猛将も織田・徳川両軍共におります」

「それは全力で衝突してもどちらもただではすまなくなるな」

「向こうには鉄砲もありますしね」




 こちらに旗色が悪くなっているな、撤退一択か。


 佐助の報告を元に俺は勝頼様へ撤退の進言をすることにした。




「勝頼様。敵は二万以上もの大軍に、鉄砲を備えて待ち構えているようです。ここは一度退いて体制を立て直すべきです」

「二万!?」

「確かに鉄砲と騎馬隊は相性が悪い」

「長篠城も兵糧を燃やしてもなお維持されているのはまさにその鉄砲の存在もある」




 俺の言葉に古参の武田家臣たちが次々に同意するような意見を次々に並べる。

 これなら被害が出ることもないかな。




「いやいや。ここは織田・徳川を一網打尽にできるいい機会。さらには勝頼様の実力を見せ、天下に知らしめるという面でもおいしい話です。また織田の佐久間信盛からはこちらへ寝返りたいとの申し出もあります」

「左様。自分も跡部殿に同じ意見です。勝頼様は当主となられてからまだ大きな実績が出せておりませぬ。それゆえに織田や徳川に侮られているのやもしれませぬ。ここで我らの恐ろしさを改めて知らしめるべきです」




 はぁ!?


 思わず声にそのまま出してしまいそうになったところを声に出さなかった俺は褒められて然るべき。

 まぁ顔には出たんだけどな。




「確かに、跡部と長坂のいうとおりだな」

「……勝頼様?」

「うむ。決めたぞ。我ら武田は織田・徳川を迎え撃つ!」

「勝頼様お待ちくだされ! 織田は確かにまだ弱小と思われがちですが、これまで今川義元を討ったこと、尾張を統治したこと、越後の朝倉も攻め滅ぼしております。実際の力は十分我々と同じか、場合によっては我ら以上となっているやもしれませぬ」

「左様。もしかしたら尋常ではない被害が生まれるかもしれませぬ」

「くどい!! わしは決めたのじゃ!! 皆、戦支度をせよ!!」




 怒鳴り声で命令したあと、勝頼様はそのまま陣を後にした。


 最悪の状況だ。

 まだまだ生きていくつもりだったのに、早々にお館様の元へ召されそうだなぁ。


 せめて打てる手を打って、一人でも多くの味方を救わなくてはならんな。




「佐助」

「……敵の策を調べるのですね?」

「さすがは俺の忍び。なんでもいい。欠片でもわかればなにか掴めるかもしれん」

「御意。必ずや、掴んで見せましょう」




 佐助は返事をした直後、気配を消し、姿もなくなった。


 佐助、頼んだぞ。

 武田の勝利はお前にかかっている。


読了ありがとうございます。

ブクマ・ptよろしくお願いします!


次回は明日更新予定!


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